***南さんとロマンスカーと私②***
①新しい家族になる家の取材(秦野市横野)
②譲渡会取材(平塚市神奈川県動物愛護センター)
③動物愛護センターの現状(平塚市神奈川県動物愛護センター)
ワンニャンランド編集部に置かれたホワイトボードの文字を見ながら、麻里の先輩でありベテランの倉橋里美が、大井編集長に話しかける。
「大丈夫ですかねぇ麻里ちゃん」
倉橋里美の心配顔そうな声に、それまで原稿の執筆に忙しなくキーボードを叩いていた大井町子編集長の手が止まる。
モニターに映し出されている原稿を睨むようにして机にしがみ付いている編集長は、その目を離さないまま「彼女なら、大丈夫よ」と短く返事をした。
「でも……」
編集長の返事になお心配を払拭しきれない里美は呟いて、ボードを見ていた目をデスクに移す。編集長は観念したように顔をあげ「ペット雑誌を扱う上で重要なことよ!」と少し苛立った表情を見せる。
「それは分かりますけど他所ではナカナカ扱われていないし、麻里ちゃんは人一倍感受性が強い子だから、いくら神奈川の施設だとはいえショックを受けるんじゃ……」
里美はそう言うと再びボードに目をやった。
大井町子は観念したようにスクっと席を立ち、そしてこれは我が社の責任として最も重要な、しなくてはならない事だと言い話を続けた。
「引越しとか家庭の事情で犬や猫達は簡単に捨てられてしまう。この日本では法律上もペットはまだ物扱い。ただ可愛さをアピールし、出版社としてブームを煽るだけでは飼われる命の不幸を増やすだけ。大衆向けの雑誌がどこまでそれを読者に伝えられるかが、これからのペット雑誌には欠かせない課題になるはず。要は、その課題をどの様に分かりやすく読者に伝えられるかが問題なの」
編集長は、苛立ったように言った。
「それは分かりますが」
里美は目を窓の外へ移す。
編集長もデスクを離れ隣に肩を並べるように倉橋里美の横に並び同じ窓の外を見つめながら、麻里は一番ペットの気持ちが分かる子だから傷つくかもしれないけど、それだけに屹度どこの雑誌社が扱うより良いものを書いてくれるはずよと、言った。
「そうですね」
里美は振り返って編集長の顔を見る。
編集長は窓の外を睨んだまま「麻里は大丈夫。強い子だから」
その言葉は編集長が自分自身に言い聞かせている、ある種の決心の様に聞えた。




