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「リリーとマリの恋物語」  作者: 湖灯


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***ドッグランと公園と私③***

 ◇◆◇◆◇◆



 ファインダーの中に映る麻里ちゃんに夢中になりすぎて、心が止められなくなってしまい気付けばフェンス際に囲い込んでいた。自分の口から言葉が零れ落ちたけど、何を言ったかは僕自身が舞い上がってしまい覚えていない。


 そして、くしゃみをしてカーディガンを取りに行くその後ろ姿を目で追いながら、呆れるほど麻里ちゃんのことを好きになっている自分に気が着いた。


 取材が終わったあと、植物園まで続く公園を散歩しながら帰る。


「ゴメン! もう少し早ければ植物園に入れたんだけど、ここ最終入園時間が夕方の四時なんだよね」


 折角ここまで来て植物園に入れない時間になってしまった事を残念に思って言うと、麻里ちゃんは大きな瞳をキョトンとさせて、そんな事は思ってもいないと言う顔をして僕を見てニコッと微笑んでくれた。


 彼女は、大きな木を見上げたかと思うと地面に生えている雑草の小さな花に見とれたりして、やけに楽しそうに見える。その様子を見ながら何かに似ていると思ったが、何に似ているのか思い出せないでいた。


 小高い芝生の丘を通り過ぎようとしたとき、黄色いテニスボールが僕たちの横を勢いよく跳ねていった。

 隣にいた麻里ちゃんは僕がボールに気が付くよりも早く、ボールを見つけて全力で追いかけて拾うと、丘の上にいる子供たちの所まで上がって渡していた。


 ボールを追いかける麻里ちゃんが一瞬白い綺麗な犬に見え、僕は自分の目が変になったのかと疑ったが、確かにさっきから考えていた “麻里ちゃんに似ているもの” は、それなんだと思う。


 ボールを子供たちに渡し終えた麻里ちゃんに声を掛けると、また大きな瞳をくるりと向けて「こんなに気分の好い公園は久しぶりですわ。わたし好きになりました」と笑顔を向けて応えてくれた。


 年頃の、しかも密かに恋心を寄せる相手から、違う意味でも面と向かって “好き” と言う言葉が出た事に有頂天になり、直ぐそばにある縁結びのお寺として有名な深大寺に誘う。

 しかし、彼女からは「締め切りが近いから駄目」と断られ痛恨のノックオン! すっかりデート気分になっていた僕は、ここでへこんでしまう。


 そんな僕の気持ちを察したのか「南さんって、こういう好い場所詳しいんですね。また連れて行ってください」とまた真っ直ぐに僕を見上げて笑顔を向けて言ってくれる。


 ほんの少しだけ手を伸ばせば艶々と輝く長い髪や小さく形の良い頭や華奢な首筋に手が届くくらい近い距離。


 急に、さっきまで取材していた愛犬の躾教室で飼い主がやっていたように、彼女の頭を撫でてみたい衝動が襲い、不思議に彼女自身もそれを望んでいるのではないかと考えて思わず手が伸びる。


 しかし次の瞬間“まさか……” という考えが頭を過ぎり、伸ばした手を自分の頭に上げ自分の髪を掻いていた。



 彼女は僕のその一連の動作をまるで全て許すような優しい表情で見上げていてくれたけれど、僕が頭を掻いた途端、我に帰ったような表情をして「お手洗いに行ってきます」と駆けて行った。


 神代植物公園のバス停に着くと運よくタクシーがいたので、僕達はそれに乗って駅まで帰り京王調布駅から電車に乗り新宿で別れた。

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