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無能探偵、愛を語る。  作者: 唐柿 茄子
無能探偵、愛を語る(前編)
1/7

プロローグ

久楽 落殿


前略

 この手紙をアンタが読んでいる頃、きっと私は死んでいるんだろうね。


 きっと悶死している。

 そう苦い顔をしないで頂戴。一度こういった文を書いてみたかったんだから。

 というか茶化さずにはいられないっての。

 今更アンタに手紙を書くなんて、こうして文面を考えている今でさえ、ユデダコみたいに頬が紅潮しちゃうわ。

 自分のことを大海だと思っていたけれど、芥ほどの価値しかないアンタを想ってこんなにも沸々としてしまうのだから、きっとわたしには道端の水溜り程の度量もないんだろうね。


 言うまでもない事だと思うけど、わたしはアンタに大きな借りがある。大恩がある。

 壺中の天地で厭世家を気取っていたわたしをアンタは連れ出してくれた。桃源郷の仙人なんかじゃなくて、井戸の底で不貞腐れていたただのカエルだと、アンタは教えてくれた。

 三顧の礼みたいだなんて綺麗な話にはならないし、回数で言ったら雨後の筍が青い葉を付けてしまうくらいで、思い返すとアンタは蓼食う虫なんかじゃなくてただのストーカーなんじゃないかと思うけれど、それでも嬉しかったわ。

 やるじゃない。褒めてあげる。


 今度はわたしがお返しをする番。

 困った時はこの手紙に同封した鍵を使いなさい。どこの鍵かは、必要になった時に分かるわ。

 きっとアンタの助けになる。

 本当は直接アンタの助けになりたいけれど、わたしの体質的に、何もしない方がよっぽど良い結果を出せるってのは、言うまでもないわよね。


 長々とアンタへの気持ちを綴っても仕方がないし、どうせ、読む頃には伝え切っているのだから、蛇足は不要よね。


 わたしは幸せよ。

 かしこ


 木戸 愛

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