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『このはしわたるべからず』
『このはしわたるべからず』
とんち小坊主はしばし首をひねったが、何事の不安も感じずに、その橋のど真ん中に足を踏み入れ、歩みを進めるのだった。
されど、道のど真ん中ほど風当たりの激しいものはなかった。が、それでも小坊主は時に駆け抜け、時には悠々と大手を振ってその志しを貫いた。
しかし、彼がどんなにそこを堂々と歩み進もうとも、誰もが何かを恐れるように歩み寄ろうとはしなかった。
なぜならば、右手側の欄干を歩く人から見れば、小坊主は左側を歩むように見え、
また、左手側の欄干に沿って歩く人から見れば、小坊主が右側を歩むように見えていたからだ。
人は二つの目を持っている。がしかし、一つの物事を見るので精一杯なのだ、と彼は理解した。
小坊主はほとほと困り果て、途中で着ているものを放り投げると、橋を渡らずに川へと飛び込んだ。
川の流れに逆らいながら、ゆっくりと、ゆっくりと水の冷たさを実感し、向こう岸に辿り着こうと決心したのだ。
《了》