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第一日 やっぱり家でひきこもるのは最高

「私の伴侶に決めました、あなたを!!」

「……はいっ?」


 普段通りの毎日を過ごしている筈だった、どこに間違ったのだろうか。天気が良いからって外を散歩しようなんて思いだったからだろうか。調子に乗ってスーパーの大安売りでいい感じに野菜を買えたせいだろうか、そのあと気分が良くなったのでちょっと小走りで家路についたせいだろうか。全く人が気分良くなった途端に災厄が舞い込むとかやっぱり世の中腐ってる。


―――どうして赤信号に気づかず渡ろうとした女の子を助けただけでこんな目に合うんでしょうねぇ………。


「本日は我らのお嬢をお助け頂き誠に恐縮至極でございます!!!」

「「「「「「有難う御座いました!!!!!!」」」」」

「い、いやあの……そ、そう頭を下げられても私困るんですけど……(-_-;)」


 目の前では黒服に身を包んだやの付く恐ろしい仕事をしてそうな方々が挙って頭を地面に擦り付けるような土下座をして感謝の意思を表明している。

 だが想像してほしい、黒服を着た大勢の大人が自分に向けて頭を床につけて土下座をする。これはある種の暴力である。


「いえあの時我々がほんの少し目を離したせいでお嬢は命が無くなる所だったのです!!それを救っていただいたあなたにはどれほどの感謝をしてしたりません!!!」

「「「「「誠にありがとうございました!!!!」」」」」

「もう本当に頭上げてくださいよお願いですから」


 大勢に土下座された側は相手を許さなかった場合悪いが風評が付き不利になる。相手を更に追い詰めたりする事が難しくなり逆に向こう側の要求を飲まなければ此方側が更に不利になる。

 正に暴力だ。ついでにここまでほぼ強引に連れて来た事も謝罪しろと思ったりした。


「帰って良いですか、夕食の準備しないといけないんですけど……」

「も、もう少しお待ちください!あと少しでお嬢が親父さんと共に着ますので!!」

「えっ~………」

「「「「「お願いします!!!」」」」」


 もはやテンプレレベルの土下座のラッシュである。渋々承諾してから30秒後、先程助けてしまった女の子がやって来た。

 改めてみてみると本当に美少女だ、背丈は高め、一目を引く銀色に近い白い髪は雪のようにも見えるシルバーブロンド。瞳は|蒼玉≪サファイア≫を思わせる鮮やかな灰色が掛かった青色。白いドレスは驚くほどマッチし一国の姫様といった風貌だった。


「お待たせしました、申し訳ありませんでした助けていただきまた満足にお礼も出来ていなかったのにここまでお待たせしてしまって……」

「……い、いえお気になさらず」

「わっはっは待たせたな!!」

「っ!?」


 助けた時はまともに顔などを見ていなかった為その美しさに驚いているといきなり入って来たとんでもなくガタイが良い強面な男性が部屋へと入って来た。

 口の周りに薄くひげを生やし片目には大きな傷が走り潰れている。ボサボサと全く手入れをしていなさそうな髪形をした男、やーさんに雇われている用心棒という言葉がぴったりとマッチしてしまっている。


「「「「「お疲れ様です親父!!」」」」」

「おうお前らもお疲れさんや、んでそこの坊主がそうなんかいや」

「へい。俺らが親父に連絡している時に僅かにお嬢に目を外した時にお嬢を助けてくれた方です」

「そっかぁ」


 ドカリと自分と対面するように美少女の隣に腰掛けながら黒服の話を聞く。正直怖くてしょうがない、もしかして自分が助けてしまったのはやーさんの所の組長の娘だったしたのだろうか……。

 嫌な想像ばかりが頭を過り冷や汗と脂汗がだらだらと体の表面を自分の心とは真逆のように流れていく。


「坊主ぅ今回はうちの娘を助けてくれて有難ぉうな、こいつは俺の宝なんや。それを救ってくれた坊主は俺にとっての救世主や!!」

「そ、そんな俺は唯赤信号なのに渡ろうとしてるから止めただけですしそこまで感謝していただくなんて……!!」

「人一人の命を救ったんや、もっと誇りや。そや礼をせなあかんな、おい」

「ヘイ!!」


 腕を上げると一人の黒服が自分の前へと出てアタッシュケースを差し出し開けて見せた。そこには1万円の束がギッチリとつまっていた。平凡な生活を送っていた身としてはこれほどまでの金額を実際に目にしたのは初めての経験だった。


「それで5000万入っとる、まあ少ないかもしれへんが受け取ってくれや」

「ごごごごご5000万!!!?!??」

「なんや少な過ぎたか?なら更に5000万付けたろ、おい」

「嫌々嫌々そう言う事じゃなくてですね!!!??受け取れませんよ!!?」


 今まで週3のバイトで手に入った6万ほどの給料でも酷く燥いでいた身としてはこれだけの大金はもはや喜ぶという事が出来ず重荷としかならない。勢いよくアタッシュケースを閉めて目の前の男へと返す。


「なんでや?なんで受け取れへんのや」

「お、俺はこんな大金貰えません!!そ、それにお金は自分で稼いだものこそ価値があるものだと思いますし受け取れません!!!!」


 勇気を振り絞った、本来ここはさっさと受け取ってしまえば帰れたのかもしれない。だがその後はどうなる?大金を抱えてびくびくと帰りそのまま引きずって生きていくことになるのだろうか、それならばここで金を受け取らないほうがよっぽどいい。

 大きな声でそれを伝えゆっくりと男の顔を見ると呆気にとられたような顔をし次の瞬間に大きな口を開けて笑い声をあげた。


「おもろいなぁおもろいでぇ!!むっちゃ気に入ったで!!!おい坊主、お前名前はなんていうんや」

「純也……姫夜 純也です」

「そうかなら姫ちゃんでええな!」

「へっ?」


 まさかのいきなりの姫ちゃん呼びに思わず呆けてしまう純也、そして男は自分の方に腕を回しがっしりと肩を組んできた。


「俺は木島や、木島 庄右っていうんや。木島建設会社の社長をやっとんもんじゃ」

「き、木島建設って世界的に有名な建設会社ァ!!?」

「せやで、どこぞのヤクザかと思ったりしたかいな?」


 見透かしているような悪戯的な笑みに思わず固まる純也。そんな彼をますます気に入ったのか木島は娘に首を縦に振ると娘は光を散らしたかのような笑みを浮かべた。


「純也様、私は木島 庄右の一人娘。木島 唯と申します」

「は、はあ……?」

「私の伴侶に決めました、あなたを!!」

「……はいっ?」


事実は小説より奇なりって名言だとこれほどはっきり思ったことはなかった。

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