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⑥キャスパーの悩み

 キャスパーは庭の窯を使って肉を燻している。


 まだ日中は肌を焼くような暑さが続いているが、夜となれば涼やかな風が撫ぜるようになってきた。

 一際強い風が木々をざわめかせ、木箱に座っているキャスパーの前髪を散らした。


 「……」


 視界を邪魔する髪を気にも留めず、キャスパーは黙々と窯と対峙している。

 パチパチと炭が爆ぜる音に耳を傾けながら、キャスパーは回らない頭で精一杯何かを考えているようだ。

 無論それはさっきの募集の件だ。


 (ままま、また、ゼーマに、ご、ごめん、って言わせた。おお、俺は)


 違った、ゼルマギッツの件だ。

 キャスパーは余り難しい事を考えられない頭をしている。例えるなら明かりを点けて本を読むのが 常人なら、キャスパーは線香の火で本を読もうとしているようなものだ。まるで全体が読み取れず、繋がらず、その行為に意味があるとも思えない。


 (うう、どど、どうしよう?おおお俺が、ばっ馬鹿だから……)


 キャスパーにとって思索は苦痛でしかないのだ。考えれば考えるほどに自分が馬鹿という結論に逃げ出そうとするし、逆に自分のような馬鹿が物を考えようとする事自体が罪である気さえしてくる。


 「ちっ、ち、違う!お、俺は馬鹿だけど、だだだだ駄目だ!」


 ゴリゴリゴリと頭皮が吹き飛ぶのではないかという速度で頭を掻き毟り否定する。

 ゼルマギッツはキャスパーが自分を責める事を何よりも嫌がるのだ。

 次第に何が何だか分からなくなってきたキャスパーは頭を抱えてビチビチと悶絶し始める。


 「ぐぐうぐぅぅ!?」


 その動きはコマ送りの狂ったような異様な速度で繰り返され、殺気に近いキャスパーの苦悩を周囲に振り撒く。


 キーキー!チチチ!ガサガサガサガサガサガ!


 辺りの草葉や茂みから猛烈な速度で小動物や蟲が逃げていく音がした。

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