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クエスト:遺跡のモンスター退治2

 俺が遺跡に入って真っ先にしたことは明かりの魔法を使うことだった。

 そりゃそうだな。無人の遺跡に明かりなんてあるわけないだろうし。

 そう思うとゲームのダンジョンって親切だよな。明かりついてるから。


「で、マッピングだけどどっちか……」


 ロレッタ姉さんが歩きながらマップを作って欲しいと俺たちに言う。

 でもミケ猫は両手がロレッタ姉さんの荷物で塞がってるし、俺はこっちの字が書けない。

 と、迷った時にスマホが通知音を立てた。

 困った時に通知来るの、これで何度目だろうな……。

 スマホを見ると、マップを開くかとアプリが聞いてきてる。

 迷わず『はい』を選ぶと、地図のような物が表示された。

 現在地は三角で表示されて、その周りだけくっきり白く入口付近の通路が表示されている。

 ゲームで言う自動マッピングって奴か?


「ロレッタ姉さん、マッピングなら多分大丈夫だ」


「ん? まぁ、リュウがそう言うなら任せたよ」


 と、言うわけで遺跡を探索しながらモンスター退治をすることになった俺たちなんだが。

 入ってすぐ、目の前に伸びる廊下にはモンスターは見当たらない。


「廊下にもうようよいると思ったんだけど、おかしいねぇ」


 ロレッタ姉さんは拍子抜けしたみたいだ。

 俺も正直、もっと入口からいるものだと思っていたから、ちょっと気が抜けた。


「脇の部屋から見てみないか? 真っ直ぐ奥へ行って、別の部屋から俺たちの後ろに回られたらマズいと思うんだ」


 俺が思い切って提案すると、ロレッタ姉さんが頷いた。


「いいね、そういう慎重なところ。アタシは乗った!」


「私にはどうせ選択権はないんでしょ? いいわ。リュウが言うなら」


 とりあえず、すぐ手近な扉から行こう。

 俺たちは扉に近づいた。


「いいかい、すぐに魔法を撃てるようにしてるんだよ」


 ロレッタ姉さんの忠告通りに俺はスマホをいつでも操作できるように利き手に持つ。

 そして自動でマッピングされてるか、マップを確認すると、扉まで記録されていた。

 それだけならいいんだけど、扉を隔てた向こう側は黒い表示で赤い点が動いてる。

 これってもしかして……全部モンスター?

 ゲームだと結構こういう風に表示されてないか?


「ロレッタ姉さん。扉開けるときに、ゆっくり細く開けてくれないか? 何か嫌な予感がする」


「はいよ」


 ロレッタ姉さんが扉に手を掛けたから、俺はミケ猫に下がるように言った。

 扉がゆっくり、細く開いていく。

 俺は魔法で浮かべた明かりをその扉の隙間に潜り込ませた。


「げっ……」

「ぅわぁ……」


 先に声を出したのは俺だったのか、ロレッタ姉さんだったかわからない。

 俺とロレッタ姉さんは扉の向こうに数えきれないほどのモンスターを見た。

 グネグネ動くゼリーみたいな生き物。多分スライムかな?

 ゲームでは一番のザコとして出てくるけど、群れで出会うとザコとは思えないな。


「子猫ちゃん、扉を抑えていておくれ!」


 ロレッタ姉さんは身体を器用に捻って、背中の大剣を取った。


「リュウはアタシに近づいてくる奴から順に倒すんだよ!」


 ミケ猫が扉をこれ以上開かないように移動したのを見て、俺は大剣を床に突き立てるロレッタ姉さんの後ろに立つ。

 そして、ちまちまと魔法をタップしてスライドさせる作業を繰り返した。

 俺の魔法一発で、ロレッタ姉さんに襲いかかろうとしているスライムが消えていく。

 どれだけいるかわからないけど、スマホの電池――魔力が切れるのが心配だ。

 でも何か電池表示、減ってないな。

 さっき、明かりの魔法や結界の魔法も使ったのに、表示が満タンに戻っていた。

 モンスターが消えるときのマナをスマホが吸ってるのか。

 俺のスマホがどんどん俺の知らないスマホになっていくぞ。


「リュウ、敵はあとどれぐらいいるんだい?」


「姉さんの方がよく見えるんじゃないかな?」


 俺は剣を床に突き刺す姉さんの脇から、敵を視認して魔法を撃ってる状態だし、視点の高いロレッタ姉さんの方が奥までよく見えてると思う。

 でもこのままじゃあキリがないし、姉さんがいくら経験豊富なファイターでもすぐに限界が来ちゃうんじゃないかな?

 他に対処法なんてないし、やっぱりちまちま撃つしかないのか。こんな時通知来たら縋っちゃうね。

 なんて思ってると、やっぱりスマホに通知が来た。


【範囲魔法を撃ってみよう】


 使い方も表示されたけど、これでいいのか?

 目で見た床に魔法の起点を作って一定空間で魔法が炸裂する……みたいだ。

 危なそうだし起動する前には、扉を閉めてみるか。


「ロレッタ姉さん。ちょっと大きな魔法を試しに撃つから、合図したら扉を離れて。ミケは扉を閉めて」


「アタシは構わないよ。失敗してもやることは今と一緒だしね」


「私もいいわ」


 仲間の了承を得て、俺はロレッタ姉さんの脇から魔法の起点に、スライムの間から見えた床をアプリ上でタップして設定する。

 後は魔法を選ぶだけで、俺の足元と起点の床とに魔法陣が現れた。


「姉さん!」


「あいよ!」


 俺が叫ぶと、ロレッタ姉さんは一足で後ろに跳んで、ミケ猫は渾身の力で扉を閉めた。

 ロレッタ姉さんを追ってきたスライムが潰されたような気がしたけど気のせいかな?

 で、肝心の魔法だが発動したらしく、扉の向こうで派手な爆発音が聞こえてくる。

 俺が選んだのはサンダーストームという範囲魔法だったんだが、音が雷が落ちた時みたいな爆音だ。


「サンダーストーム、アンタすごい魔法も覚えてるんだねぇ」


 ロレッタ姉さんの賞賛が満ちた目に俺は答えることが出来ない。

 俺の判断じゃなくて通知のおかげだしなぁ。


「リュウはいつでもスゴイんだからね!」


 ミケ猫よ。お前が言うのは過大評価って奴だ。

 だって俺まだ初心者だぞ。

 爆音が止んだ後、扉をさっきと同じように細く開けてみると、多少あちこち黒くなってるのを除くとモンスターはきれいさっぱりいなくなっていた。


「流石流石! マジシャンでも最高レベルじゃないかい?」


 ロレッタ姉さんまで、俺を褒める。

 照れるじゃないか。俺自身はそんなすごいことをしたってつもりはないのに。


「アンタの魔法がこんなに強いってわかったなら、とっとと行くよ。その前に、ここに他のモンスターが入らないように扉に鍵をかけようか」


「はいはい。私の出番ってわけね」


「さっさとしないと置いて行くからね」


 この二人のやりとりを見て、俺が抱いた感想を率直に言おう。

 見た目はともかく、やり取りがまるで親子だ。


「さて、アタシ達はその間に今後の作戦でも立てようかね」


 ロレッタ姉さんの言葉に俺は頷くしかなかった。

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