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クエスト:消えた仲間を探せ5

「今の……」


「リュウ、知ってる子かい」


 俺が思わずつぶやいた言葉に、ロレッタ姉さんが反応する。

 知ってるっていうか見たことあるというか。


「神託で見た。伝承にある『悪魔』ってああいうのなのか?」


 俺たちと同じ姿してるし、同じ言葉をしゃべる。

 ああいうのが『悪魔』だっていうのか。

 まあ、もしかしたら価値観は違うのかもしれないけど。

 ケルベロスっぽい奴も、あの女の子を追いかけて行ってしまった。

 一気に俺たちの緊張が解ける。


「……今日はこれ以上探索するのはやめよう。少し戻って休もうか」


 ニーナさんが提案するのを、俺たちは誰一人拒否する理由を持たない。

 少し戻ったところで火をおこして、それを囲む。

 オレリアさんの出した食料と、その辺で採って来た木の実を食べた。


「何なんだろうねぇ。あの子、『悪魔』っていうけどアタシら獣人は口伝でしか伝えてないから、さっぱりだ。子猫ちゃんはどうだい」


「私もさっぱりわからないわよ。あと、いい加減に子猫ちゃんはやめなさいよ、おばさん」


 意見を求めたと思ったらまたこの応酬だよ。

 獣人には『悪魔』についての伝承は乏しい。

 口伝じゃなかった頃はどうなんだろう。


「オレリアさんは何か知ってる?」


「私が知っているのは神殿に伝わる伝承だけです。地上の生きとし生けるものの天敵だと」


 シメオンさんも似たことを言っていたな。

 でも、俺はそれ以外の事も知っている。

 この世界に入れない種族。入ろうとするたびに喧嘩になって文明リセット。

 大体が前までのリュウジンたちは『悪魔』を拒絶した結果らしいってこと。


「情報が足りなさすぎる。リュウ、本当に神託を授かった時にさっきの娘を見たのか」


「ああ。今まで言ってなかったけど、見たのは銀色の髪に黒い角を持った子で、他には森の奥の屋敷。これが行方不明事件のヒント……だと思う」


「この状況と符合している……。今夜は交代で見張りながら休息だな」


 と、いうわけで俺たちは交代で休んだ。

 夜の間にモンスターに襲われることなく、無事に夜が明けたけど緊張してたからか寝れた気がしない。


「早く帰れるといいな」


 当面の食料はあるけど、帰るのは急いだ方がいい。

 出来れば水辺を先に見つけたい。

 水を飲むのにもいちいちオレリアさんに頼んで出してもらうのも気が引けるんだ。


「とはいえ、どうする? 昨日行きかけた所に向かってみるか?」


 ニーナさんの質問に俺たちは全員一致で昨日ケルベロスと出会った方角へ向かうことにした。

 その先には、俺のマップに出てるポータルっぽい印もあることだし。


「じゃあ、出発する前に防御魔法掛けるぞ」


 それぞれ装備のチェックもして、俺が魔法を掛けて出発。

 この先戦闘にならなきゃいいけど、流石に難しいかな。

 でもここで待っていたって何も解決しないのは間違いないよな。

 この先に『何か』あることは間違いないんだし。


「で、リュウ。昨日見たあの子が『悪魔』だとして、どうするんだい?」


 どうするったって、俺たちの仕事は行方不明者の捜索であって討伐任務じゃない。

 あの子たちが犯人だったりしたら話し合いで解決する。

 決裂したら戦う。

 そうじゃないかと俺は自分の考えをロレッタ姉さんに話した。


「まあ、アタシはリュウのそういう常識に囚われないところも好きだけどさぁ」


 前触れもなく突然の告白である。

 どうしたロレッタ姉さん。


「急に何言ってるのよおばさん」


「おや、子猫ちゃんはそう思わないのかい? そもそもアタシらみたいな獣人と平気で付き合える人間だよ」


 完全に平気ってわけでもないんですがね。

 どっちかと言うと好奇心が勝ったせい。


「む。確かにそうだけど……」


「加えて、リュウジン候補ってことは、これが知られればリュウの結婚相手は引手あまたってわけ。こんな貴重な男には大好きアピールしとかないと捨てられるよ」


 あの、俺の前で言っちゃってどうするんですかロレッタ姉さん。

 ミケ猫も頷かないの。

 いいからもう行くったら行くんだよ!

 ってことでようやくの出発である。

 ニーナさんもオレリアさんも呆れてるぞ。

 それで、俺たちは昨夜ケルベロス的なモンスターと、羊娘を見かけたところまでは無事に到達した。

 ケルベロスもいなかったが、代わりにそこには男がいた。

 多分、男なんだろう、と思う。

 何しろそいつは甲冑で全身を覆っているからな。

 前にケルベロスが遺跡に出現した時に現れて、回収した奴じゃないのか?


「誰だ!」


 つい、俺が声を張り上げてしまった。

 そんなつもりはなかったんだが、つい。

 全身甲冑にも突っ込みたかったんだが流石にそんな雰囲気じゃないのでやめた。


「おやおや、突然やってきて名乗りもせずに、名前を問うなど……。まあ、いいでしょう。些細な事です。赦しましょう」


 明らかに気分を害した声が辺りに響く。


「ああ、そういえば前に少しだけお会いしましたね。私はアンリと申します。さて、この森に何の用で立ち入られたのでしょう?」


 あれ?

 あいつらが操作して俺たちがここに飛ばされたってわけじゃないのか?

 もしかして、行方不明者もここにいなかったりするわけなのか?


「俺たちはここに好んで来たわけじゃない。街で行方不明者の調査をしてたら、ここに飛ばされたんだ」


 俺たちが言うと、アンリと名乗った全身甲冑野郎は戸惑ったようだった。


「行方不明者……調査……ですか……」


 どこか困ったように甲冑は呟く。


「やれやれ、困りましたね。心当たりがあります。ついてきてもらっていいでしょうか? 迷い人よ」


 心底困った様子の甲冑に、俺たちは顔を見合わせる。

 だが他にどうすることもできないので、俺たちはその男について行くことにした。

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