クエスト:消えた仲間を探せ2
足が、目の前にあるはずの木箱をすり抜ける。
何か変だな。
階段を降り切ったのに、まだ一段あると思って踏み出したような気持ち悪さだ。
「なんだこれ」
もう一歩踏み出した時に、落下する。
「え?」
どうなってるの?
しかも落ちるって言うか、エレベータで延々降りているような。
例えば高層ビルの一番上から降りてる時ってこんなもんじゃないか?
なんて冷静に考えてるようで、俺は全然冷静じゃない。
だって目の前真っ暗になっちまったもん。
オレリアさんたち大丈夫かな?
声が聞こえないから余計心配なんだけど。
「きゃっ!」
ん?
この悲鳴は?
「うわっ!」
いきなり着地した。
しかも俺縦に落ちたはずなのに着地した時は横。
しかもまた誰かの上かよ。どうなってんだ?
ニーナさんでなければどうにでもなる……かもしれない。
「あの……リュウさん……降りて……いただけますか」
恥ずかしそうな声に俺はガバッと起き上がる。
シルヴィアさんの上だった。
細いシルヴィアさんだと俺が乗ってると重いよな。
「ごめん、シルヴィアさん。ところでここは……」
路地裏に入って、落ちたはずの俺たちは森の中にいた。
ワープって奴なのか?
そういう魔法があるのかどうか、俺は知らないけど。
「ニーナさん、オレリアさん!」
近くに二人とも倒れていた。
良かった。はぐれなかった。
そうは思ったけど、ミケ猫たちはどこなんだろう。
あいつらもこうやって、ここに来たんだろうけど。
でも、その前にシルヴィアさんたちが話しかけた時に反応しなかったってのが気になるなぁ。
ワープ以外にも何かあったんだろうか。
「ここはどこなんですかね?」
「うーむ。食料を持ってこなかったのが悔やまれるな」
俺の呼びかけに応えて起き上がった二人は、それぞれにそんなことを言った。
ニーナさん、食料持ってればいいってものじゃないでしょうに。
「シルヴィ、どうしました?」
起き上がって、周りを見渡したシルヴィアさんの顔色が悪い。
何か悪夢を見たような顔をしてるけど、何があったんだ?
「シルヴィアさん?」
「な……何でもないです……」
何でもないわけないじゃん。
今にも倒れそうだよ。
何か気つけになる物があればいいんだけど、俺はそんなもの持ってない。
せめて冷たい水か温かいお茶でもあれば……。
「ニーナ様、私たちはこの辺りで水か何か探しませんか?」
「……そうだな。食料もいる。リュウはこの場を頼む」
待って。俺とシルヴィアさん二人きりにさせるの? ここで?
「どうしてそうなるんだよ!」
「この場では食料確保が最優先だ」
「シルヴィはリュウさんに心を許してますし」
ニーナさんはわかるけど、待ってオレリアさん!
「俺がいても……」
「まあ、襲われてもリュウさんがシルヴィの傍にいれば安心できると言いますか。私はニーナ様と行きますし」
ニーナさん、近接戦闘の技能持ちだっけ。
なら、安心かな……うん。
「わかった。じゃあここで待ってるよ」
何か抗議しても無駄っぽいので諦めた。
出発するニーナさんとオレリアさんを見送ったら俺たち本当に二人きりだよ。
どうしろって言うんだよ。
オレリアさん、行く時に何故か俺を意味ありげに見て、ウィンクまでしていくんだから。
「シルヴィアさん、大丈夫ですか?」
他にやることもなくて、俺はシルヴィアさんに声を掛ける。
シルヴィアさん震えちゃってるけどどうしたんだ?
「あの……手を……握ってもらえませんか?」
「手を?」
震えて差しのべられた手を俺は取る。
って言うか取る以外にどうしろって言うんだ。
「……ごめんなさい。この森に……覚えがあったので……」
覚えがある?
でも何か聞いちゃいけないような気がするな。
「……あの……リュウさん……私……」
シルヴィアさんがいつもより白く、いや白を通り越して青白くなった顔で俺を見ている。
「……私が……エルフと『悪魔』のハーフだと言ったら……どうします……?」
何度も躊躇いながら、シルヴィアさんが告げる。
え? 『悪魔』とのハーフ?
混血だから村を出たって言うのは聞いてたけど、それが『悪魔』となの?
「俺は『悪魔』をよく知らないからどうでもいいかなぁ。シルヴィアさん超可愛いし」
それは間違いなく俺の本音だった。
だってさぁ、俺の知ってる『悪魔』って羊娘だもんで。
「……リュウさんは本当に……この世界の常識に……囚われない方ですね」
「何せ異世界から来てるんでね」
シルヴィアさんが小さく吹き出した。
何だ、顔色戻ってきたじゃん。よかった。
あれ? 何でそこで俺に抱きつくんだシルヴィアさん。
「……よかった……嫌われるかと……」
「嫌わないって。それぐらいじゃ」
「……あの、この森……私の……父がいたところと……似てます……」
俺に抱きついたまま押し殺すような声で、シルヴィアさんは言う。
なるほど。それでシルヴィアさんあんなに顔色失ってたんだ。
動かないシルヴィアさんを抱きしめて、俺はその背を撫でた。
その時だった。
「あー! 何抜け駆けしてるのー!」
悲鳴が聞こえる。ミケ猫の声だった。




