クエスト:リュウジンの伝説5
「それで、神託は賜ったかい?」
光の消えた魔法陣の上でついボーっとしてしまった俺を現実に引き戻したのはシメオンさんだった。
あれ? シメオンさんは俺とジジイの会話聞いてないのか?
「それっぽいことは。俺の近道はどうも行方不明事件の解決らしい」
とりあえず俺はそう伝えてみる。
「やっぱり僕がさっき見たイメージはそうだったんだ」
「イメージ?」
俺は声で聞いたんだけどな。
もしかして、神託って声が下りてくるわけじゃないのか?
「僕は神託をイメージで見せられた。僕たちが『悪魔』と呼んで恐れていた存在と、深い森の奥と」
悪魔?
悪魔ねえ。確かに羊娘の外観って悪魔娘と言えなくもないか。
「俺は声で聞いた。この世界を救って欲しいって。どうやって達成するかはわからないけど。ところで、その『悪魔』について教えてください」
俺に今必要なのは情報なんじゃないか?
羊娘について俺は何も知らないんだし。
「ちょっと、ここで話すのも至高神さまに失礼だ。部屋に戻ろう」
神託の間の扉の前でニーナさんが待ってたけど、シメオンさんはしばらく二人で話がしたいと言って遠ざけた。
本当にいいのかな。
「さて。『悪魔』についてだけど、僕たちが知ってるのは神殿に伝わる伝承だよ。この世界に住む全ての種族の天敵だと」
シメオンさんの部屋に戻ると、シメオンさんが話しだした。
「天敵……ですか?」
「うん。昔、エルフの文明も獣人の文明も衰退させたのはこの『悪魔』だと言われている」
でも、それって『悪魔』のせいだって言われてるだけだろ。
言い伝えってことはきちんとした文献もないわけだし。
もしかして、ニーナさんがエルフの文明研究してたりするのはそういう理由もあるのかな?
「シメオンさんが見た悪魔ってどんな子ですか?」
「見た目は獣人に似てるけど、角があったね。正直、悪魔だとは考えたくないような見た目をしていたと思うよ」
やっぱり俺とシメオンさんが見たイメージって一緒なんだ。
「そういえば、神殿って歴史が古かったりするんですか?」
エルフや獣人の文明って人間の文明より古いのに、よくそんな伝説が残ってるんだな。
そんな疑問がわいたので、俺はついでとばかりにシメオンさんに聞いてみた。
「エルフも獣人も昔は同じ神を奉っていたんだよ。エルフの方は知らないけれど、獣人は今もそうじゃないかな? 獣人の方は描かれる神々の姿は違うみたいだけどね」
「違う姿なんだ……」
「獣人は人間と似た姿に変身できるけど、元は獣がした種族だしね」
だから獣の姿で描かれいるんだそうだ。
なるほど。
ロレッタ姉さんにも後で聞いてみようかな。
「それで、君の方は声で聞いたと言うけれど、具体的には?」
聞かれて俺は困ってしまう。
これをそのまま伝えていいものかどうか。
羊娘たちとの友好を取り持って欲しいだなんてさ。
「うーん……俺自身ちょっと理解できてない所があるんだけど、シメオンさんの言う『悪魔』がこの世界からズレた所にいてこの世界に入ろうとしている。品定めをしてほしい……っていう感じだったんですけど」
「品定め……か」
「とにかく遭遇してみないことにはどうにもならないですよね。何とかするにしても」
シメオンさんは俺の話の内容に何だか考え込んでしまった。
俺もどうやったら達成できるかわかんねぇもん。
考え込むのも仕方ないよな。
そんな感じで俺はシメオンさんとの話を終えて、ニーナさんの待つ廊下に向かった。
「話はどうだった?」
ニーナさん、一番初めにそれ聞くの?
「俺もよくわかってないんだけど、リュウジンと同じ仕事をさせられそうというか……」
神託内容の詳細までニーナさんに伝える必要はないよね。
ってか話がややこしくなる。
元々俺がリュウジンかどうか聞くために来たんだからこれだけ伝えたらいいじゃん。
「リュウジンと同じ仕事か。つまりそれを達成したらお前はリュウジンということになるんだな」
そういう風に納得する?
まあ、いいけど。
「とりあえずこんな感じだけど、俺はニーナさんの研究の手伝いってことでいいんだよな」
「そうだな。状況が変われば別だがな」
そういうわけで俺はニーナさんと一緒に宿へと戻った。
そこで俺を待っていたのは、ミケ猫とロレッタ姉さんが不明になったという事実だった。




