クエスト:王都探索2
商店街は賑わっていた。
こんなに人が多い中歩くのはこの世界に来て以来だな。
まだシルヴィアさんが神殿から出てくるのは時間が掛かるみたい。
そんなわけで、俺たちは商店街をずーっと歩いてるわけなんだけどミケ猫はアクセサリーショップに入りたがるし、ロレッタ姉さんはロレッタ姉さんで屋台を片っ端から回るしで俺はどっちに行ったらいいのかさっぱりわからない。
「ロレッタ姉さん。もう屋台は全部回ったんじゃないのか?」
「いいや、まだ食べてないのがあるんだよ」
「ねえ、リュウ! これ可愛くない!?」
ロレッタ姉さんがふらっとまた屋台の並びに行こうとするのを、俺が引きとめてるとミケ猫が後ろから呼んでくる。
多分何かアクセサリーをつけてるんだろうけど、俺は一人しかいないんだから一斉に動くのはやめてほしい。
はぐれたらまた会える気しないんだからさ。
「ミケ、お願いだからちょっと待って」
「えー? あいつなんか放っておこうよ」
仮にも仲間なんだから表面上は仲良くしようよ。お願いだから。
放っておいてもロレッタ姉さんは迷子になっても、無事には戻って来るだろうけど、トラブルが発生しそうだからな。
王都に来る途中でも、酒場で食事中にどこぞのおっさんに絡まれて、そのおっさんを豪快に外へ引きずってぶちのめしたりしてたからな。
ミケ猫は迷子になって困るんだろうけど、ロレッタ姉さんは絡まれたりした上に相手をぶちのめすから困る。
「アクセサリーは後で見てやるから、ロレッタ姉さんを追いかけるよ」
「はぁい」
ミケ猫は手に取っていたアクセサリーを渋々戻して俺についてきてくれた。
それにしても、ロレッタ姉さんの胃は底なしだなぁ。
大食いぐらいじゃロレッタ姉さんに幻滅したりはしないけど、どうやって消化してるのかは気になるところ。
俺の頭に浮かんだのは、よく飲んでよく食べる俺の親父だ。
腹がでっぷり出て、俺も将来ああなるのか。と思うとちょっぴり親を恨みたくなったところだ。
親父に似て良さそうなところは親父は髪がふさふさってとこだろう。
「ロレッタ姉さん、今度は何を食べるんだ?」
「砂糖まぶした揚げ菓子だってさぁ。リュウ食べるかい? ほら」
ロレッタ姉さんは買ったばかりの紙包みの中から丸まった揚げ菓子をつまむと、俺の前まで持ってきた。
これって、俺が口を開ければいいんだよな?
「はい、あーん」
ほらやっぱり。
ミケ猫の視線が痛いけどやるしかない。
俺が渋々口を開けると、ロレッタ姉さんは揚げ菓子を放り込んだ。
「熱っ!」
揚げたてを口に入れたもんだから、真っ先に感じたのは熱さだ。
噛むとドーナッツみたいな感触で口の中に砂糖の甘さが広がる。
普段甘い物は食べないけど、こういう食べ方もいいもんだな。
何だかデートで祭りの露店見てるような気分になるよ。
向こうの世界じゃ、こんなことしてくれる彼女もいないわけだけどね。
「熱いけど、うまいだろう?」
「ロレッタ姉さん、甘い物好きだったりするわけ?」
「そりゃあ、好きさ。子猫ちゃんだってそうだろ?」
「おばさんには関係ないわよ」
ぷぅっとふくれっ面をしてミケ猫がそっぽを向く。
「妬かないの。アタシらは同じ目的を目指す同志じゃない」
その目的って俺との結婚なんですけどね。
俺の意見は無視なのか……いや、状況に流されてる俺が悪いんだけどね。
「ほーら、アンタにもあげるから機嫌直しなって、子猫ちゃん」
「おばさんの施しはいらない」
あーあ。完全に機嫌悪くなっちゃった。
こういう時の仕草も何だか猫っぽいぞミケ猫。
とはいえ、ほったらかしにするわけにはいかないよなぁ。
完全にあっち向いちゃったミケ猫をどうしたもんか。
なんて思ってるとロレッタ姉さんが目で何か合図してくる。
ん? と見るとロレッタ姉さんが自分の手元の揚げ菓子を指す。
なるほど、そういうことか。
俺はロレッタ姉さんの持つ包みから揚げ菓子を一つ取ってミケ猫に声を掛けた。
「ミケ、こっち向けよ」
「何よ」
「いいから」
俺は揚げ菓子を、振り返ったミケ猫の前に突き出した。
「何よ、それ」
「いいから。口開けろって」
むっとしたミケ猫の目の前まで揚げ菓子を突きつけて俺は言う。
「ほら、あーんってしてみろよ」
ミケ猫はしばらくじっと動かなかったけど、そのうち根負けして口を開けた。
俺はそこにひょいっと揚げ菓子を放り込んだ。
「もう拗ねんなよ」
ミケ猫は何も言わなかったけど耳まで真っ赤だった。
やった俺もちょっと恥ずかしい。
ロレッタ姉さんがニヤニヤこっち見てるしもう、恥ずかしくてたまらん。
やっぱりロレッタ姉さんは大人の余裕というかなんというか。
俺が弄ばれてるような気分になる。
「さて、お二人さん。もう仲直りはしたかな?」
「どっちかというと発端は姉さんな気がする」
「ちょっとは刺激的なことがあった方がいいと思うよ」
ロレッタ姉さんがサバサバしてるせいか俺は何だか変な気分だよ。
なんて俺たちが屋台を見たりぐだぐだやってる間に約束した時間になってた。
「あ、やべ……そろそろ行くぞ」
多分、だけどシルヴィアさんみたいな美少女のエルフがポツンと待ってたりしたら絶対に絡まれる。
俺はそんな変な危機感を持って、シルヴィアさんが待つはずの和の神の神殿に向かった。




