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ミケ猫と宿屋に泊ろう

 ミケ猫と歩いて一時間。村に到着した。

 そんなに歩くのか!? と最初に思ったが実際歩いてみるとそんなに疲れなかった。歩けるもんだな。

 歩く道も全部地面だった。道路の上以外をこれだけ歩くなんて、よく考えたら久々だよな。

 で、肝心の村だけど3Dゲームでよく見るような村。

 石畳で舗装されてるわけでもなく、道が土で踏んで固めただけのものだ。

 家も木で作られてるのがわかる。

 人口なんて詳しいことは俺にはわからないけど、人通りが少ないって言うことだけはよくわかった。


「リュウはここで待っててよ。私はちょいっとクエストの報告に行ってくるからさぁ」


 ミケ猫はそう言って、少しだけ立派な建物の前に入っていく。

 そこで俺はあることに気付いた。看板が見たこともない字で、読めない。

 え、これどうすんだ?

 言葉は通じるのに字が読めないとかあるわけ?

 俺が混乱してると、またスマホが通知音を鳴らした。

 正直、またかよ……と思ったが、頼れるのこれしかねぇしなぁ。

 画面を起動すると、また通知のメッセージが出ていた。


【カメラを起動して看板を見てみよう】


 これって俺をここに送り込んだ神様って奴がどっかで見てんじゃないのか。

 でも考えたところで仕方がないので指示されたとおりに、カメラを起動して看板を映してみる。

 そこには文字の上に薄く『冒険者ギルド』と表示されていた。

 なるほど、これで読んだらいいのか。って納得できるかよ!

 俺が心の中で突っ込んだところで、俺は起動したアプリの隅に『?』というアイコンがあることに気づいた。

 普通のアプリだとこれはヘルプの場合が多いんだが。

 実際タップしてみると本当にヘルプだった。

 これでミケ猫に聞かなくてもこの世界の事わかりそうだな。

 あるのかどうか知らんが宿屋で落ち着いたらじっくり読もう。

 そんなことを考えたあたりで俺は、スマホの充電について気が付いた。

 確かミケ猫とダンジョンだか何だかを出た時は減っていた電池なんだが、いつの間にか満タン表示になってるぞ。

 もちろん、俺は充電器具なんて素敵なものは持っていない。

 胡椒の入った買い物袋とスマホしか手元にないからな。

 待てよ、胡椒って売れるんじゃね?

 胡椒がこの世界にあるか、ミケ猫に聞いて売れそうなら売り飛ばそう。

 しばらく帰るあてなんてないのに、胡椒だけ持っててもしょうがないわけだし。

 なんてことを考えてる時に、スマホの着信音が鳴る。

 電話通じるのかよ…。と、俺はスマホに表示された番号を見て思った。

 実家の電話番号だったんだ。


「はい、もしもし?」


『もしもし? リュウ?』


「何だよ急に」


 電話は家のババアからだ。こんな時に掛けて来んな……って文句言っても仕方ない。


『何ってアンタいつ帰ってくるの?』


「あー……ええっと……」


 夏休み中の帰省なあ。そもそも俺が夏休み中に帰れるのかどうかが問題だ。


『急に言い渋っちゃってどうしたの?』


 どう説明したらとやかく言われずに帰省しないことを納得させられるか、考えてるが思いつかない。

 と、何を思ったかババアの調子が少し変わった。


『あ、もしかして。リュウってば彼女でもできた?』


「ばっ……!」


 ないない。それは絶対ないから。

 そう反論しようと俺が口を開いた時だった。


「あ、リュウ~。お・待・た・せ」


 今にでもスキップしそうな足で俺のところへミケ猫がやってくる。

 何でこんなタイミングの悪い時に帰ってくるんだ!

 ミケ猫の声はやっぱりというかスマホを通じてババアに聞かれたようだ。


『なーにー、照れちゃって。可愛い声じゃないの! あらやだ、デート中なら早く言ってよぉ』


 俺はもう何も言えなかった。

 帰省しないのは納得された。何も説明せずに。

 だが彼女がいるという、とんでもない勘違いをされてしまった。

 ババアはこの後何か一方的に言って通話を切った。

 ツーツーという音を聞いてハッとした俺はスマホの画面を服でこする。


「あれ? リュウ、今誰と喋ってたの?」


 ミケ猫が不思議に思うのも仕方がない。

 この世界に多分ケータイとかないだろうし。


「あ? ババアだババア。お前の声聞いて彼女かって勘違いされた」


 ミケ猫に聞かれて俺は吐き捨てるように言って後悔した。

 八つ当たりしてどうする。

 こんなんだから俺は彼女が出来ないんだ。


「私、リュウ相手だったら彼女になってもいいよ。なんてったって勇者サマだし」


 いやいやいや。

 これをフラグだと思ってはいかん。

 女は期待させるだけさせて俺を奈落の底まで突き落とすのが好きな生き物なんだ。

 今までも少し優しくされただけで調子に乗ってどれだけ痛い目を見たことか。


「俺が勇者かどうかは置いといてだな。クエストの達成報告とやらは終わったのか?」


「バッチシ!」


 ミケ猫が拳を握ってにっかりと笑う。

 笑った顔は目が糸のように細くなって猫がくつろいでるような感じだ。

 懐も温かくなったミケ猫と俺はこの日の宿を決めることになった。

 宿屋と言ってもこの村には冒険者のための一軒しかないそうだけど。

 明日はこの村を出てほぼ丸一日かけて歩いて、少し大きな町に行くらしい。


「やー、今日はリュウのおかげでちょっといいご飯食べれたわー」


 夕食も終わって宿屋の部屋でミケ猫が言う。

 困ったことにミケ猫は俺と同じ部屋で泊まることになった。

 個室というものがこの宿にはなかったんだ。


「あはははー。村の宿じゃあやっぱり同じ部屋になっちゃうね。大きい街でお金がそこそこあれば個室になるから今日だけ我慢してね」


 ミケはそう言うとさっさと夢の中へ行ってしまった。

 これでようやく謎のアプリのヘルプをじっくり見れるってもんだ。

 俺は再びスマホの画面を見たわけだが、ここで俺はあることに気付いた。

 スマホの電池が減ってない。

 減ってないどころか満タンだ。逆に増えてる。

 もうそろそろ30%になってるかも、と俺は思ってたのになんてこった。

 どんな原理で充電されたんだよ。

 もう何が起きても不思議じゃないな。

 俺は無理矢理自分を納得させて、アプリを起動させてヘルプを見てみることにした。



 ヘルプを見た結果、俺は後悔した。

 分かったのはこの世界がどういう世界かってだけで、俺が何をすべきなのかが全く分からなかった。

 とりあえず、俺がスマホで会話したジジイは至高神って奴で間違いないらしい。

 ジジイで、手にスマホに似た光る板を持った姿の絵がヘルプに載っていた。

 あと、ジジイには4人の奥さんがいるらしく、めちゃくちゃ羨ましい。

 姿を描いたとされる絵がヘルプに載っていたんだが、どれも綺麗な人ばかりだ。

 くっそ羨ましすぎる。

 それで、この世界だけどエルフ、獣人、人間の順に文明が発展しては滅亡してを繰り返しているようだ。

 人間が一番新しい種族で今文明が発展中……なんだそうだ。

 それまでの文明の名残が遺跡として残っていて、冒険者はたいていその遺跡の調査をするんだそうだ。

 ゲームにありがちな設定だな。

 冒険者についての項目は後でどうせミケ猫に聞くからいいや、と俺はスマホを枕元に置いてベッドに潜り込んだ。

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