クエスト:王都探索1
王都に着いたとき真っ先に思ったのは、今まで活動してた町はやっぱり田舎だったんだなってことだった。
道は端から端まで綺麗に石でできていて、土の部分が全くない。
馬車から見える建物もしっかりとした石造りで飾りが多いような気がするなぁ。
それにしても、一週間で王都まで来たにしては途中色んなことがあったもんだ。
ロレッタ姉さんが酒場で絡まれて、酔っ払いのおっさんをぶちのめしたり。
ちょっと買い物で離れたミケ猫が迷子になって俺が探しに行ったり。
そう思うと、長い旅だったな。
ってその前に俺が家に帰るまでの長い旅の途中なんだけどね。
正直、後期が始まるまであと何日なのか調べたくない。
「やっと着いたね。で、どこで降りてどう行動するんだっけ?」
「ニーナ様が手配した宿で降りて、私とシルヴィは神殿へ挨拶に。貴方たちはギルドの方で手続きでしょう? 昨日確認したのに」
のんきなミケ猫に、オレリアさんが大げさなため息をつく。
確かに昨日、今日到着してからの手順を確認したな。
俺もすっかり忘れてたけど。
冒険者ギルドへは活動地域の再登録だっけ?
地方の町から王都へ、冒険者としての活動が移るから申請しないといけないらしい。
「シルヴィアさんも申請するよね。俺、シルヴィアさんを待ってようか?」
「え? ……いえ、いいです……」
シルヴィアさんは相変わらず遠慮がちだなぁ。
でも、シルヴィアさんが一人で冒険者ギルド行くこと考えたら頼りないけど俺がいた方がいいんじゃないかな。
「えー? 私もリュウと一緒がいい」
ミケ猫、お前は一人で大丈夫だろう。
「子猫ちゃん、嫉妬は見苦しいよ」
ロレッタ姉さんはさすが、大人だなぁ。
「いい加減に私を子猫ちゃん呼ばわりするのやめてよね」
この辺で止めとかないと喧嘩になるな。
馬車の中で喧嘩はやめてくれ。
外でも迷惑になるけどさ。
「つまり、宿でシルヴィアが申請を終えて帰ってくるのを待ってればいいのさ」
ちょっと待て。何故宿限定?
ナニして待つつもりですかロレッタ姉さん。
「それ名案!」
待て待て待て。
勝手に話を決めるんじゃないよ。
せめて観光とか色々あるだろ。
「あの……私は一人でも……大丈夫ですから……」
「一人はよくありません。エルフはすごく珍しいんですから自覚を持って。私からもリュウさんとシルヴィが一緒だと安心なのですが」
エルフの美少女が一人で冒険者ギルド行くとか、何か事件が起きそうだもんな。
割とエルフがちらほらいるゲームや小説でもトラブルに巻き込まれてたし。
しかも、この世界だとエルフ自体珍しいんだから、俺が護衛するのが当然だろうな、うん。
「ミケとロレッタ姉さんは二人で冒険者ギルド行ってよ。俺はシルヴィアさんと行くから」
オレリアさんの意見も入ると、主張しやすいな。
ロレッタ姉さんもオレリアさんの意見なら聞いてくれるし何よりだ。
「でもぉ……」
「観光ぐらいなら俺も付き合うからさ、いいだろ?」
これぐらいの埋め合わせだったら多分いいんじゃないかな。
うん、ミケ猫もロレッタ姉さんもそれでいいよね?
俺もシルヴィアさんが用事済ませるまでは待たないといけないんだしさ。
「じゃあ、宿の後にアタシらでシルヴィアを和の女神の神殿に送って、観光してシルヴィアの用事がすんだら全員で冒険者ギルド行けばいいんじゃない?」
ロレッタ姉さんの提案を断る理由は何一つなかった。
ってことで話は決まった。
宿の前で馬車に降ろしてもらったんだけど、手配されてた宿も立派だった。
何なんだ? もしかして王都の宿ってこんな立派なわけ?
三階以上ある建物なんてこの世界に来て初めて見たぞ。
「とりあえず、オレリアの分も泊まる手続きしておくよー」
オレリアさんは、先に神殿に向けて出発しちゃった。
まあ、シルヴィアさんは俺たちが送っていくし、いいかなって思う。
智の女神の神殿の方がこの宿からだと遠いのが原因だけどさ。
「部屋割りどうなってんの? 個室?」
「個室だねぇ。アタシら、一人一部屋だよ。太っ腹なもんだねぇ」
一番揉めたのは俺の部屋の隣に誰が泊まるかだった。
揉めるようなことじゃないだろ。
あ、いや、よく考えたら隣って音聞こえるんだよな。
そう考えると誰が来ても俺が一番恥ずかしいんじゃねぇか!
防音が優れてる部屋だったらいいな。
「リュウの部屋はここでしょ。隣が私~」
「逆隣はアタシだよ。リュウ、嬉しいだろう?」
オレリアさんが抜けてシルヴィアさん含めてのメンバーだとこうなるよね。
うん、知ってた。
シルヴィアさんはミケ猫の隣、オレリアさんがロレッタ姉さんの隣だ。
「荷物を置いたら、宿の前で集合だよ。シルヴィアは勝手に一人で行かないように」
ロレッタ姉さんが的確に指示を出してくれる。
まるで引率の先生みたい。違うのはわかってるけど。
それで、荷物を置いた俺たちは宿の前に集まったわけだ。
「じゃあ、行こうか。まずは神殿だったよね?」
「はい……地図を渡されてます。ここからちょっと歩いたところです……」
「挨拶にはどれぐらいかかる?」
聞いておかないとすれ違いになっちゃうもんな。
シルヴィアさんは先に約束しとかないとどっかに行ってしまいそうだ。
「すぐには終わらないと思います……」
「じゃあ、俺たちはそのあたりでぶらぶらしとくよ。露店が多い通りだよな?」
「……はい」
よし、ちょっと強引だけど話はまとまった。
と、言うわけで俺たちは宿を出発した。
王都っていうだけあって人も多いんだな。
広い通りは馬車が時々通るし、馬車が通っても人が通れる隙間がある。
商店街みたいに店が並ぶところは他より人が多い。
後でミケ猫たちと見て回ってもよさそう。
値札読めないけど。
「ねー、リュウ。後であの店見に行きたい!」
さっそくミケ猫が。言うと思ってたよ。
「はいはい。シルヴィアさん待つ間に見て回ろうか」
何かいい匂いもするな。
屋台があるなら、ロレッタ姉さん何か食べるよね。
「あの……本当に待つつもりですか……?」
「何言ってんの、アタシら同じパーティじゃん。一緒に行った方がいいと思わない?」
「ロレッタ姉さんの言うとおりだよ。仲間なんだから」
シルヴィアさんもそろそろ俺たちを信頼してくれてもいいと思うんだけど。
やっぱり前の仲間に捨てられたってのが大きいんだろうなぁ。
すぐに信頼してもらうのは無理でも、ちょっとずつ仲良くなれないもんかな。
ある意味では仲良くしてもらってるわけだけど。
「はい……では、お願いします……」
シルヴィアさんを無事に神殿に送り届けた後、俺とミケ猫とロレッタ姉さんは商店街の人ごみへと足を向けた。
人ごみって久々だなぁ。
間違ってもはぐれてしまわないようにしないと。
そう思っていると、左側からロレッタ姉さん、右側からミケ猫と腕を取られた。
これって両手に花って奴じゃないの?
「リュウ、あっちのお店見に行きたい」
「何言ってるんだい、あっちの屋台に行くんだよ!」
「待って二人とも! 俺は一人しかいないんだから両方から引っ張らないでよ!」
俺が商店街で最初にやることはお互いに俺を逆方向へと引っ張る二人を止める事だった。




