クエスト:遺跡調査再び4
やっと事態に気付いたオレリアさんが来て、ロレッタ姉さんの服を出してくれた。
シルヴィアさんが呼びに行くまでずっと本棚の本を異空間に詰めていたみたい。
よく気付かなかったな、この事態に。
ミケ猫は転んだ時の怪我ぐらいで、シルヴィアさんに治療してもらってた。
で、問題は俺たちの目の前に転がって前足を必死に動かしてるケルベロスだ。
まだ消えてないってことは、まだ攻撃しないといけないのかな。
それにしてもこいつ、どっからやって来たんだ?
「このモンスター、どっからやって来たんだ?」
わかるか? って多分最初に襲われただろうミケ猫に聞いてみた。
「私もわかんないよ。リュウにちょっかいかけようと図書館まで来てみたら襲われたってぐらいで……」
ミケ猫がちょっかいかけに来るのが早かったらやばかったな。
俺たちとニーナさんの話をややこしくしてくれそうだし。
「やれやれ、こんなんじゃおちおち探索も調査もしてられないねぇ」
全くだよ姉さん。
でもすぐ帰るってわけにはいかないよな。
俺たちで警戒しながら遺跡調査するしかないのか?
「ねえ、リュウ。あの化け物どうする?」
どうするって。トドメ刺す以外に何ができるって言うんだ?
とはいえ、俺やロレッタ姉さんの力でもトドメって刺せるものなのかな。
俺が結構魔法撃ったのに、姉さんが切るまではよろけもしなかったのに。
このモンスターをどうするか、俺たちが話し合おうとした時だった。
「おやおや。こんなところに逃げ込んでいたのですか?」
変にこもったような男の声が辺りに響いた。
何か被り物をしてる時がちょうどこんな声じゃないか?
って冷静に考えてる場合じゃない。
「誰だ!?」
俺たちが声の方向に注意を向けると、なんていうんだろう。
全身を黒い甲冑で覆った奴が立っていたわけだ。
声からするに男だが、倒れてもがいてるモンスターに平気で近寄ってるところを見ると、絶対に敵って奴だ。
こんな怪しい味方がいてたまるか。
「ちょっと『おいた』が過ぎた子に酷い事をしますね。さあ、帰りますよ。姫様が待ってます」
だいたいモンスターに親しげに声を掛ける味方なんて心当たりないし、こいつの言う姫様ってなんだよ。
「手当ですか。あちらに戻ったらしますよ。痛かったですね」
子どもをあやすような声で男はケルベロスに言って手を振り上げた。
ふわっとケルベロスが浮いた。
これがあいつの魔法なら、俺たち勝ち目ないんじゃないの?
「私どものペットがご迷惑をおかけしました。私はこれで失礼します」
そんなことを言って黒甲冑とケルベロスは唐突に消えた。
ほんとに突然だ。こんな魔法あるの? テレポートとか。
「何だったんだ……今の。モンスター……?」
ケルベロスは間違いなくモンスターだろうけど黒甲冑の方は謎だ。
しかもあれをペット呼ばわり。モンスター側の奴ってことは間違いない。
「どういう原理かはわからないが、あの男が魔法で出入りしたという事は、王都で問題になっている行方不明事件に関わりがありそうだな」
え? 王都って今そんな事件が起こってるの?
そういやちょっと前に行方不明になった人を探すクエストがあるって聞いたような。
確かにあの甲冑もケルベロスも急に現れて、消えたわけだし。
気になるのが姫様って言葉だよな。
あいつら誰かに従ってる立場なわけ?
仕組んだ奴がいるんだよな。
「どうするんだ? このまま調査を続けるのか?」
ニーナさんが厳しい顔でオレリアさんに訪ねるのも当然だろうな。
「……今回はこれで戻りましょう」
次に来る時は大規模なパーティで、とオレリアさんが言う。
その場でニーナさんが俺を引き抜きたいという話を改めてする。
うん、この場にはパーティメンバー全員そろってるもんな。
ロレッタ姉さんの目がキラキラしてるのがわかったけど。
流石にニーナさんの婿になるつもりはないからな!
「――どうしても、というならパーティごと私が王都へと招こう。リュウにはそれだけの価値がある」
うわぁ。言い切られちゃったよ。
俺どうすんの、こんなに期待されて。
「エルフの生活についての聞き取りも必要だ。そこのエルフも来るな?」
「すみません、ニーナ様。私も彼らのパーティに属してることになってます」
「エルフもお前も神殿所属だったな。私から話を通しておこう。パーティリーダーに異存はないか?」
異存が合ってくれ方が俺は嬉しいんだがね。
多分姉さんは頷くだろう。
「ああ、アタシは問題ないよ」
ミケ猫は目を白黒させて、ニーナさんの方を見てる。
そんなに驚かなくてもいいだろう。
その場であっという間に話が決まって、俺たちは数日後には拠点にしてた町を離れることになった。
しかし、王都か。色々ニーナさんに王都の事を聞かないといけないなぁ。
俺があっちに帰れる日も案外近いんじゃないの?
その辺は期待しちゃダメかな。
でももう向こうではお盆中か、お盆も終わってしまう頃だろ。
里帰りしなかったことで電話かかってくるか?
でもミケ猫を彼女として認識しちゃってるから大丈夫かな。
そんなことが頭によぎったが、オレリアさんの指示に従って、俺たちは遺跡調査を切り上げて帰ることになった。




