クエスト:古文書の解読5
視察は唐突にやって来た。
俺がイメージしてたのは強面の男たちに守られたお坊ちゃんだったんだが、視察に来たのはお姉さんだった。
俺にはよくわからないが、高そうな男の格好をしている。男装の麗人って奴か?
腰には細い剣をぶら下げている。
形だけかなと俺は思ったが、飾りがついてないんで実用なのか?
「ここで、古文書の解読をしていると聞いたが」
ノックもせずに入って来たお姉さんは、驚いて本から顔を上げた俺を見て言う。
俺は俺でスマホを使わずに読んでたからびっくりだ。
言葉づかいも男みたいな喋り方するんだな。
「ええ、私がその担当神官で、こちらが解読のクエストをしてくれている冒険者の方です」
ミケ猫もいるのに、何故かオレリアさんは俺だけを紹介する。
そりゃそうだ。
この状況でどうミケ猫を紹介するってんだ。
俺の膝に頭乗せて寝てるんだぞ。
「それで、そこの獣人は?」
「同じパーティメンバーで、今の獣人の生活について情報をくれる獣人です」
お、うまくごまかした。
「ふむ。解読はどこまで進んでいる?」
「何冊かは彼に読み上げてもらい記憶しましたが」
あれ? もしかしてオレリアさんあの一度で丸暗記したの?
多分神官だし、そういう魔法教えてもらってるのかもしれないけど。
「遺跡の調査の方は進んでいるのか?」
「遺跡自体が広いこともあり、調査隊も古代文字が読めるわけではないので、次の調査の時には彼らのパーティにもう一度同行してもらおうと思ってます」
もしかして俺たち、またあの遺跡に行くの?
クエストがある分にはいいけど、元の世界に帰るのはまだまだ遠いのか。
「そうか。その時は私も同行させてもらおうか」
え? お姉さん来るの?
一気に俺がスマホ使いにくくなる展開じゃないか。
オレリアさんはどう出るかな?
俺としてはすっぱり断ってほしい所だけど、貴族相手だったら難しかったりするんだろうか。
「それは……」
困ったようにオレリアさんは俺を見てくる。
って俺を見るな!
流石に俺が堂々と断るってわけにはいかないんだからな!
貴族のお姉さんが首を傾げてるじゃないか。
「護衛が心配か? 大丈夫だ。私はこれでもナイト資格を持っている」
いや、剣が実用的なのはわかってたし。
俺たちが気がかりなのは別の事なんだ。
ってこの場で言えないことが悔しい。
「それは、こちらのパーティの方々にも相談してみないと」
「他にメンバーがいるのか?」
「はい、ファイターが一人と、ヒーラーが一人います。ファイターの方がリーダーですので……」
うん、うまいこと同行を断ってくれてる。
ロレッタ姉さんがきっぱり断ってくれたら後は安心だね。
「ならば、今度会わせてもらおう」
「……この町にはいつまでいらっしゃるんですか?」
「そうだな。しばらくは神殿も色々と視察をする。それが終わるまでだな」
おっと。
オレリアさんと貴族のお姉さんの攻防戦。
俺はオレリアさんを応援してるからな!
「わかりました。パーティメンバーの方には私から伝えておきます」
オレリアさんがこう言ってくれたことで、無事に視察は何事もなく終わったわけだ。
俺が帰ってロレッタ姉さんがどう判断するかが問題だよな。
気がかりなのは、ロレッタ姉さんが重婚狙いだってこと。
その日はもう早々に切り上げて帰ると、ロレッタ姉さんはパンケーキのようなものを皿に山ほど乗せて食べようとしているところだった。
「おや、早かったね」
「ちょっと色々あってさ」
とりあえず貴族のお姉さんの話をしてみた。
何か目がキラキラし始めた気がするけど、気のせいだよね?
「それで、そのお姉さんが次にあの遺跡に行く時についてきたいって。オレリアさんはロレッタ姉さんと会ってみてからって言ってたけど」
「行こう」
あれ?
「相手は貴族だろ? 行こう! そしてリュウを売り込むんだ!」
やめて!
スマホがばれたら面倒そうだよ!
貴族って至高神の信者だったりするんでしょ!
と、俺の頭の中を高速で言葉が回っていくけど、声は出なかった。
「リュウだって、アタシらの中から誰か一人選んで結婚するなんてできないだろう?」
俺としては元々結婚できるできないの前に、元の世界に帰るから。
とは言っても姉さんの事だ。結婚したら元の世界に帰らないだろうと思ってるんじゃないか?
スマホで繋がってる限り俺は帰りたいんだよ!
でも、逆らう事もできないしこのままお姉さん同行決定かな。




