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クエスト:古文書の解読3

「混血?」


 シルヴィアさんは混血。

 そんでもって、エルフは純血主義だ。

 なんとなくわかったぞ。

 混血のシルヴィアさんは里にいたくなくて飛び出してきたんだ。


「そう、混血なんです。シルヴィはそれで里から見捨てられて育ったんです」


 見捨てられて育ったってどういうことなんだ?

 何だか思ってたより重い話になりそうだ。

 っていうか何でそんなプライベートな話をオレリアさんは俺に話してるんだ?


「それで、ですね。シルヴィは……」


「待て、ちょっと待て! それは俺が聞いていいことなのか!」


 俺は思わず待ったを掛ける。

 何を言おうとしてるのかわからないけど、聞いちゃいけないような気がするぞ。


「いいえ、リュウさんには知っておいてもらいたいんです」


「何でだ?」


「シルヴィと関係を持ったでしょう?」


 何でわかるんだ!?

 オレリアさんはエスパーか何かなのか!


「シルヴィの様子見ればわかります。縋る物を見つけたって顔してますもの」


 そういうもの?

 そういうものなのか?

 オレリアさんはシルヴィアさんとつきあい長そうだし、きっとそうなんだろう。


「だから、リュウさんにはシルヴィの事を伝えておこうと思いました。シルヴィは誰かから見放される事を怖がることを」


 まあ、つまり見捨てるなって事か?

 俺はやること終わったら向こうの世界に帰るんだぞ。

 それをわかって言ってるんだろうか。


「俺もいつまでもシルヴィアさんのそばにいられるわけじゃないんだけどなぁ」


 シルヴィアさんの事情を聞くと、寝ちゃった事をちょっぴり後悔する。

 あの時流されたのはやっぱりまずかったかな。


「わかってます。シルヴィとも話しましたけど、シルヴィもわかってます」


「じゃあ、何で」


「シルヴィが盗賊の仲間になったのは、パーティのメンバーに見捨てられたからです。同じ事にはなってほしくありません」


 クエスト中に何があっても見捨てるなって事なのかな。

 それならわかる。

 パーティメンバー俺以外女性だし、男として見捨てるわけにはいかないだろう。


「俺はそんなことしない」


「ええ、信じてます。リュウさん」


 信じられた!

 ってかこれでいいのか?


「さて、本も一冊読み終わりましたし、今日のクエストはこれで終わりです。お疲れさまでした」


 オレリアさんに笑顔で『お疲れさま』と言われて俺は宿に戻ることにした。

 神殿から宿は十数分でつくはずだったんだけど、何故か歩いても歩いても宿に戻れない。


「あれ?」


 気がつけば俺は見知らぬ道に迷い込んでいた。

 レンガ造りの建物は町ではよく見るものだから、見分けがつかない。

 やっべ、迷子だ。


「おかしいなぁ。曲がる道を間違えたか?」


 俺は最近神殿への道を覚えたので、気まぐれに道を曲がって行き来していた。

 やっぱり探検みたいに一本先の角で曲がったりして遊ぶの、まずかったかなぁ。

 それにしても何か人も少ないみたいだし、静かなもんだな。

 スマホの地図で現在地とか、わかるかな。

 俺はスマホを取り出して見たわけだが、まさかの圏外表示。

 え? 圏外ってどういうこと?

 異世界でも今までアンテナ立ってたのに?

 混乱した俺は、きょろきょろと周りを見回した。

 あれ? さっきまであんなところに女の子なんていたっけ?

 俺は建物の陰からそっと顔を覗かせてる女の子を見つけた。

 銀色の髪に、黒い羊みたいな角。

 羊の獣人か何かかな?

 女の子って言うけど俺よりちょっと年下ぐらいに見える子だ。

 羊娘とでも仮に呼んでおこう。


「誰……?」


 震えた声で羊娘が言う。


「ああ、ごめん。俺はリュウ。ちょっと道に迷っちゃってさぁ」


 この辺根城にしてる冒険者かなと俺は思って声を掛けた。

 ビクッと羊娘の肩が震える。

 何か俺、怯えられてる?

 俺が何した? 話しかけただけじゃん。


「あの、どうしてここに……?」


「一本角曲がるの間違えたか何かして迷い込んだんだ」


 正直に俺は言ったんだが、反応は返ってこない。

 頼みのスマホは何故か圏外だし、俺無事に宿まで帰れんの?

 って、ここで気づいたけど羊娘、俺をチラチラと見てるけど視線がうろうろとしてるな。

 ひょっとして人見知りかな。

 気まずい沈黙が続く。

 どれぐらい俺と羊娘が向かい合ってたかはわからない。

 静かな空気は、どこからか聞こえる荒々しい足音によって破られた。

 誰か走って来たんだろうか。


「ルシール様! またこんなところで……!」


 ルシールってのがあの子の名前かな。

 うーん。『様』付きで呼ばれてるってことは、偉い人の娘か何かかな。

 獣人でそんな偉い人が冒険者になったりするんだろうか。

 町にいるってことは冒険者なんだろうし。


「あ、ケイ……!」


 羊娘は振り返ると建物の陰に引っ込んでしまった。

 結局あの子に道を聞くことも出来なかったなぁ。

 とりあえず真っ直ぐ行ったらどこか大きな通りに出るだろう。

 それから誰かに道を聞けばいい。

 オッケー。それで行こう。

 自分で方針さえ決めてしまえば後はサクサク。

 真っ直ぐ進むとすぐに大通りに出た。

 何だ、焦らなくてよかった。

 なんて思って俺は大通りに出たわけだけど。

 そこで気がついた。

 この距離でさっきまで何の音もしなかったっておかしくないか?

 怪談でたまにそういう、誰もいない空間に迷い込むって話見るけど、まさか俺が遭遇するなんて。

 しかも異世界だぞ。どういう事なんだ?

 慌てて俺がもう一度スマホを確認すると、アンテナが四本ちゃんと立ってる。

 ちゃんと元の世界に戻って来たからアンテナが立ったんだとしたら、あの羊娘は何だったんだろ。

 不思議だけど、考えてる時間はなかった。

 腹がぎゅるぎゅると鳴る。

 さっさと宿に帰って、パーティの誰かにこの不思議な現象を聞いてやれ。

 それで何が起きたか手がかりぐらいつかめるだろ。

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