クエスト:古文書の解読2
このクエストを開始して数日が経ったわけなんだが。
どれだけオレリアさんが本を持って帰ったかは知らないけど進まないにもほどがあるよ。
一日に一冊終わればいい方。
だけど、オレリアさんが言うにはこれでも解読としては早いんだそうだ。
俺が英語の本を読むようなもんか。辞書片手に。
それを思うと確かに早いのかも。
で、解読結果なんだけど適当に放り込んだせいで、研究に関係あるのかないのか謎の本がある。
小説かなって思う本とか。
今日読んでる本は当たりっぽくって古代獣人が、古代のエルフを研究した本みたい。
この本の時代にはエルフが栄えた時も過ぎ去り森に引きこもっていたようだ。
「で、この本はエルフの文明が何故滅びたのかっていうのを研究した結果をまとめたものみたいだよ」
最初の方を読んだだけだけど、俺はオレリアさんにそう伝えた。
「本当ですか?」
オレリアさんの目がとたんにキラキラと輝きだす。
本当にオレリアさんは昔の文明の事が好きなんだなぁ。
「でも、エルフもだけど、獣人の文明もどうして滅びたんだろ」
今は人間が栄えてる。
この次に滅びるのはこの文明なのかな。
でも、いったいどんな理由で滅びるんだろう。
「私たちはそれを研究してます」
オレリアさんが言う。
つまり、はっきりした理由はわからないってことか。
「今の獣人たちは文字としては残してないですが、口伝として残してあることがあるんです」
「?」
口伝?
って言うことはミケ猫やロレッタ姉さんも聞いてたりすることなんだろうか。
「口伝の内容は?」
言い伝えだと途中で伝え間違って、変わってしまったりするんじゃないかなぁ。
いや、でも気になる。
ここは聞いとくべきかな。
「魔物が増え続ける中、天よりリュウジンが遣わされました。リュウジンが種族の行く末を判定するでしょう」
オレリアさんは目を閉じて、口伝の内容を口にする。
何かそうしてると神々しく見えるな。
待てよ。
リュウジン?
前にその言葉をどっかで聞いたな。
『リュウジン!? あんたリュウジンなの!』
『違う! リュ・ウ・ジ!』
確かそんな会話をミケ猫と初めて会った時にした。
リュウジンって獣人の言い伝えだったのか。
そりゃあ驚くよな。
「リュウジンって前ミケがそんなことを言ってたな。俺の名前が竜司だって言ったら聞き間違えてさ」
「そうなんですか。リュウジンは至高神の御使いと言われてます。姿かたちは伝わってないんですが、リュウさんが至高神に選ばれた勇者だとしたら本当にリュウジンなのかもしれませんね」
もう『勇者サマ』だけでもいっぱいいっぱいなのに、さらに種族の行く末を判定する立場になんてなりたくないもんだね。
これで世界を救ったりしたら確実にリュウジン扱いだな。
「俺には種族の行く末なんて決めれないって」
どうせ元の世界に帰るんだから。
と、思ってたんだがここ数日ある意味天国過ぎて帰るのにためらいを覚える。
帰らないといけないんだけどね!
俺がいたいって思っても、夏休み終わっても大学行かなかったらいろんなとこから電話かかってきそうだし。
この先俺は本当に帰れるのか不安になってくるな。
いや、帰れないならいっそ帰れないで、スッパリ向こうと連絡取れない方がいい。
「リュウジン……ねぇ。魔物が増える中来るっていうならちょうどこの時期なのか」
最近モンスター退治の依頼が多いって誰かが言ってたな。
その辺も合わせると俺がリュウジンにされる可能性が高い。
どうする?
目立って『勇者サマ』だってことが知られたらまずいことになるかも。
でも、目立たないと世界を救って家に帰ることもできないわけだ。
俺はどっちを取ればいいんだろうな。
「とりあえず、リュウさん。その本を読んでみましょう」
ワクワクしたのを隠せないオレリアさんが身を乗り出す。
俺もリュウジンの事は置いといて、クエストの方に集中するかな。
日が傾いて、空が真っ赤になる頃に本を音読し終わった。
喉がカラカラだ。
オレリアさんが出してくれたお茶を一気に喉に流し込んで俺は息をつく。
やれやれ、音読は重労働だな。
今回本を読んで俺にわかったことと言えば、エルフと獣人は仲が悪いってことぐらいだ。
エルフの里を訪ねて、調査をしたみたいなんだけど、いくつかの里には入れてもらえなかったみたい。
入れてもらえた里では警戒されて、ずっと見張られていたとか。
エルフについてはこの本にも、他の種族を嫌ってるとかそんな情報しか乗ってなかった。
今度シルヴィアさんにでも聞いたらいいのかなぁ。
「エルフの文明が何で滅びたのか、この本だけではわかりませんでしたね」
俺が読んだ内容を髪に書きながらオレリアさんが呟く。
それにしても、俺が音読した内容を一度で聞いて覚えて書くなんてすごい人だな。
「ああ。……ところで、エルフってシルヴィアさんしか見たことないけど、どうしてなんだ?」
前にスマホのヘルプを読んだ時に純血主義で森から出てくることはないって読んだ気がするけど。
じゃあ、なんでシルヴィアさんは森から出てきてるんだろう。
「エルフが里から出ないのは、純血主義だからです。シルヴィに前に聞いたんですが、彼らは獣人がエルフの文明を崩壊させたと信じてるみたいなんです」
ほう、獣人がエルフを、ね。
それなら調査に行った人たちが追い払われたりしたのも納得できる。
「……シルヴィアさんは、何で……」
おっと、シルヴィアさんが何で人間の町に出てきてるのか聞いちゃだめだよなぁ。
夜忍んで来る時に聞けばいいんだろうけど、何でか聞けない。
俺ががっついてるからとか、そんな理由ではなく。
「シルヴィがどうして神官なんてやってるのかってこと?」
俺が聞きかけた内容をズバリ当てた。
まさに俺はそれが聞きたかったんだ!
「まあ、シルヴィアさん本人は言いたくないかもしれないし……」
「そうですね。リュウさんには聞いてもらっておいた方がいいかもしれません」
俺には、ってやけに強調してくるけど何でなんだ?
ちょっと緊張した俺にオレリアさんが真剣な表情で話し始めた。
「シルヴィは、混血なんです」




