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ミケ猫と村を目指そう

 モンスターを倒して、真っ先に直面したのは猫耳娘からの質問責めだった。

 スマホからのチュートリアルのようなメッセージもあり、どうやって説明するか面倒になってありのままに話してみた。

 つまり、神様を名乗る奴によってここに送り込まれたのだと。世界を救えっていう話は省略した。

 言うと余計に面倒な事に巻き込まれそうな気がしたからだ。


「つまり、あんたは神託を受けてここに送り込まれた勇者サマじゃん! すごいわ!」


 神様がどうだこうだのくだりで、信じられないと言われると思ったんだがどうやらそうじゃないらしい。

 次は俺が猫耳娘に聞く番だ。猫耳娘にクエストの事を聞くと、すぐに答えが返った。


「クエストはね、町の色んな人が冒険者ギルドに持ち込むの。それで私たち冒険者が解決して報酬を貰うわけよ。お金がないと基本的に技能認定もしてもらえないしね」


「冒険者ギルドは仲介手数料を取ってる…っていうことか?」


「そう。それとクエストを受ける時に情報料として冒険者はお金を払うのよ。で、期間内に戻って来たらそのお金は返って来るけど、戻って来なかったら冒険者ギルドの物になるの」


 何となく、わかってきたような気がした。

 クエストが難航するか、さっきみたいにモンスターに襲われて戻れなくなった場合、冒険者ギルドは改めてもう一度クエストを冒険者たちに依頼するのだろうな。


「それで…ええっと…」


 どう呼んだらいいか俺は迷った。

 まさか猫耳娘と言うわけにはいかないよな。


「ミケイラよ。ミケって呼んでちょうだい」


 ミケ、か。本当に猫みたいな名前だなと俺が頭に思い浮かべたのは三毛猫だった。

 とりあえずミケ猫と覚えとく。


「ミケは何のクエストでここに来たんだ?」


「前の探索の時に落し物をしたから誰か探して来てくれっていうクエストよ」


「落し物?」


「そう、赤い宝石のついた指輪って言ってたわ」


 俺はさっきモンスターがいた所を見た。

 赤くキラっと光る何かが落ちている。

 何か宝石がついているんじゃないかと思って、俺はミケ猫に聞いてみた。


「あれは?」


「あー! あれだー!」


 ミケ猫は指輪に飛びついて、手を伸ばして喜んだ。


「そっかー! ヘルハウンドが持ってたんだー。無事に回収できてよかったー!」


 これで報酬が貰えると喜ぶミケ猫を見て、俺はこっちのお金について知らないということに気づいた。


「なぁ、金ってどうやって稼ぐんだ?」


「神託受けてやって来たのに、知らないの?」


「細かい話はナシできたんだ」


「勇者サマ、それでいいわけ?」


 いいわけない。絶対いいわけない。

 だけど、その前に俺は勇者じゃないと声を大にして言いたい。

 それに、あの一方的な通話で俺に何が出来たって言うんだ。


「それで、勇者サマ。お名前は?」


「神野竜司。リュウでいい」


「リュウジン!? あんたリュウジンなの!」


 俺が名乗るとミケ猫はビックリしたようにのけぞった。


「違う! リュ・ウ・ジ!」


 俺が慌てて訂正すると、ミケ猫はホッとしたようだった。意味が全くわからない。

 何だろう? この世界に俺の名と似た種族でもあるんだろうか。

 納得したのかしてないのか、ミケ猫はそれ以上聞いてこなかった。

 ミケ猫のクエストとやらはこれで終わりらしいので、一緒に外に出てみることにする。

 どこか落ち着ける場所に行ったら、このスマホの妙なアプリについてじっくり考えよう。



 と、いうわけで外に出たわけなんだが、俺が今まで見たことないほど見事に見渡す限り家もビルも何もない。

 俺が今まで見た光景の中で一番見通しがよすぎた。

 振り返ると崖に岩で補強されたようなお粗末な入り口だ。

 スマホがまた通知音を出すので、確認してみた。


【近くの村に行ってみよう】


 指示が完全に何かのゲームのチュートリアルだ。

 逆にこれがゲームの世界の中でしたー。って言われた方がマシな気がする。

 ゲームの中だったら地名もシステムもわかってるのにな。

 まあ、でも他に行くところもないし、何をしたらいいかわかんねぇし、ミケ猫について村でも行くか。

 俺にとって一番よかったのは、日本の夏と違いカラッと爽やかな風が吹いていることだ。

 これで日本みたいにジメジメしてたら、俺歩きたくないぞ。

 ミケ猫と一緒に歩きながら、この世界の事を聞いてみる。

 俺が理解できたのは、ミケ猫のように獣の耳が生えている人型の種族は獣人というらしい。

 俺と同じ人間種族もいるらしく俺はほっとした。

 これでミケ猫のような種族ばかりだったら、俺は殺されていたかも。

 獣人と人間の他にエルフもいるらしい。ただ、エルフは純血主義で出会うことは少ないようだ。

 エルフ娘がいるならちょっと会いたかった。白い肌に尖った耳に金髪の儚い美人なんだろうなぁ。


「で、冒険者は人間が多いわけよ。私ら獣人族は普段人間の町や村から離れて集落作ってるの! 私みたいに冒険者やる子は少ないわ」


「で、ミケは何で冒険者やってるんだ?」


「それはそれ。女の子にはいろいろあるのよ……事情が」


 ミケ猫は何故か視線を別の方に向けて人差し指を突き合わせて変な感じだ。

 ちょっと頬も赤くなってるし、何か病気じゃないのか?

 ミケ猫の事情はともかく、俺がここでとりあえずやっていくのに冒険者が一番よさそうだ。

 冒険者になる手続きについて、ミケ猫から聞いてみたが、登録にまずこっちの金がいるらしい。

 いきなりの予定がとん挫、かと思いきやミケ猫が冒険者の登録に必要なお金を出してくれると言い出した。


「だって、リュウがいなきゃヘルハウンドにやられて私終わってたもん。それに私、これまでずっとソロだったし、パーティ組んだ方が大きな町の稼げるクエスト受けれそうだよね」


 ついでに、これから向かう村の事も聞いてみる。

 今のところミケ猫が拠点としている村で、依頼も報酬はそう高くないものばかりらしい。

 冒険者のための店も細々としたもので、ミケ猫は依頼で食いつなぐのが精いっぱいだったと俺に言う。


「でも、これからはリュウがいれば楽になるね! 今回のクエストはちょっと報酬いいし、これを元手にちょっと大きい町に行って、リュウを冒険者にしたら一攫千金だって夢じゃないわ!」


 夢があることはいいことだなぁ。なんて感心してる場合じゃなかった。

 異世界からの勇者、とくれば何かわからんが目的達成したら無事に帰れたりするのか?



 それより俺、ここで本当にやっていけるのか?

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