クエスト:初めての遺跡調査・後日談
どうしてこうなったんだろう。
俺はクエストを終えて宿屋でぐっすり眠るつもりだった。
っていうかさっきまで寝てた。
それ今では目を開けている。
原因は薄明かりを持って部屋に入ってきたシルヴィアさんだった。
「……あの……リュウさん……」
注意して聞かないとそのまま消えそうな声が俺に言う。
いったい何だって言うんだ?
待てよ。
金髪の可愛いエルフ娘が部屋に忍んでくる……これはイベントか!
いやいやいや。
ゲームじゃないんだからそれはない。
じゃあ何だろう?
「シルヴィアさん……? こんな夜中にどうして……」
出会って数日しか経ってないし、俺に何か聞きたい事でもあるのか?
でもそれなら他の時に聞いてくるよな。
本当に何なんだろう。
「……リュウさん……お願いが……あります……」
はいはい、何ですか?
ってお願い聞いちゃいそうな顔してるよな。
もじもじしてるのは可愛いってもんじゃないぞ。
俺の心臓直撃っていうか、うん。
「あの……」
シルヴィアさんは白い部屋着っぽいものを着ている。
肌も白いからあんまり見分けがつかないんじゃないのか?
ベッドの近くの小さな机にシルヴィアさんが明かりを置く。
膝丈ぐらいある部屋着の裾にシルヴィアさんは手を掛けて……ってちょっと待って!?
「し……シルヴィアさん!?」
冷静に観察してる場合じゃない。
シルヴィアさん、何で脱ごうとしてるわけ!?
「……私には……他にしてあげられること……ないから……」
どうしよう。
本気でどうしよう。
シルヴィアさんを止めるべきなんだろうけど、こっちの世界に来てから一発も抜いてないしまずいんだ。
ナニがって、アレが。
ここは素直に受け取るべきなの!?
俺が混乱してる間にシルヴィアさんは服を脱いじゃったわけだ。
薄明かりに照らされたシルヴィアさんの全身は一瞬目に入っただけ。
うん、俺は何も見てない。
だから興奮すべきじゃないっていうのに、俺はギンギンだ。
落ち着け、落ち着け。
「……リュウさん……私では……嫌ですか……?」
その聞き方は卑怯だろ。
エルフ娘が服脱いで迫ってくるなんて展開、嫌な訳はない。
嫌とか嫌じゃないとかそういう問題じゃないだろ。
せめて心の準備をさせてくれよ!
「……リュウさん……?」
視線はなるべくシルヴィアさんから外してる。
だから何も見てない。
ベッドの上に柔らかくて暖かい物が乗ってくる。
ギシッ……。
それが何かは考えたくない。
でもここで逃げるわけにはいかないだろ。
上にシルヴィアさんが乗ってちゃ逃げることもできないんだけどさ。
ふわっと甘い匂いがする。
うん、俺はもうソレに降参するしかなかった。
朝、目が覚めた時にはもうシルヴィアさんはいなかった。
いや、ははは……都合のいい展開の夢を見たもんだよな。
なんて俺は思えなかった。
冒険の疲れとは違うだるさがあるし、何より背中の一部がヒリヒリ痛い。
しかも俺は丸裸だ。
もしこれが夢なら、俺は寝ながら服を脱いで背中をどっかでぶつけたことになるよな。
まさか異世界で童貞を捨てるなんて考えもしなかった。
当たり前か。
それにしてもこれから一緒のパーティで冒険するのに、どんな顔して接したらいいのか。
何もなかったみたいに?
お礼だって言ってたし一回だけだろう。
うん、そうだ。多分。
気にしないのがよさそう。
俺はそう結論を出して、服に腕を通した。
朝食の為に下に降りたら、もうミケ猫とロレッタ姉さんは起きて朝食を食べていた。
俺が寝坊したのか? ってぐらい二人は不機嫌。
どうしたんだ?
「昨日はお楽しみだったみたいじゃないかい、リュウ?」
もしかして、聞かれてた?
うわっ……恥ずかしいなんてどころの話じゃないぞ。
「アタシと子猫ちゃんを差し置いて、リュウを盗むなんて生意気な小娘だね」
「待って、ロレッタ姉さん!」
それだとどう考えても俺が二人の物っていう前提なんだけど。
俺は全くそれについては知らないよ!
そもそも俺が誘惑に負けたのが一番悪いんじゃないのか?
「でも、それは俺が……」
「リュウの言いたい事はわかるけど、アタシらを差し置いてアンタを誘惑しにいった事が許せないんだよ」
その辺はよくわからない。
っていうか、俺との間に子を産むことってのが本当に二人の目的だったわけ?
この怒りっぷりを見るとそうとしか思えない。
いや、でも待て。
俺がそんなモテ期なわけないだろ。
「落ち着いてくれよ、ロレッタ姉さん。これからシルヴィアさんも同じパーティとしてやっていくんだから」
「ずいぶんあの子の肩を持つじゃないか?」
ロレッタ姉さん、そんな責めるような顔しないでくれよ。
どう考えても流された俺が悪いんだからさ。
「抜け駆けはよくないよねー」
ふくれっ面をしてるのはミケ猫だ。
そんなに機嫌が悪くようなことを俺はしたんだろうか。
抜け駆けってミケ猫も目的はロレッタ姉さんと同じなのか!
「よーし、そんなリュウにアタシから罰だよ」
え? 何だ唐突に。
いや、でもシルヴィアさんに怒りが向かないならいいかも。
罰って何するつもりだろ。
「今晩はアタシの相手するんだよ」
はい?
どうしてそうなった!
それ、罰なの?
「あ、ずるい! じゃあ明日は私ね!」
ミケ猫までなんて事言うんだ。
ロレッタ姉さんのムチムチな身体は興味あるけど!
姉さんに比べるとミケ猫はまだ子どもっぽいしなぁ。
いや、でも服の上から見た限りだとシルヴィアさんのほうが控えめかも……。
ってそんなこと考えてる場合じゃなかった!
「言っとくけど、リュウに拒否権はないからね」
あ、はい。
わかりました。
思わず頷いてしまうような迫力がロレッタ姉さんにはあった。
まあ、今日からしばらくはオレリアさんの神殿で古文書解読のクエストだし、大丈夫じゃないかな。
俺がこっちのクエストやってる間、二人は何するんだろ。
ロレッタ姉さんは多分モンスター退治をソロでやってもいいだろうし。
でも今聞くとまずそうだから後にするかな?




