クエスト:初めての遺跡調査6
色々と皆から質問された夜が終わって、ようやく本格的な遺跡調査が始まった。
ちなみに一番俺に質問したのは、予想通りオレリアさんだ。
ロレッタ姉さんは俺が異世界の人間でも、その辺はあんまり気にしないみたい。
で、俺のこれからだが、オレリアさんとロレッタ姉さんの意見の両方を取ることになった。
オレリアさんの依頼でしばらく古文書を解読し、様々な資料が集まる王都に全員で行く、と。
盗賊の仲間になっていたエルフ娘も一緒にだ。
彼女は昨夜の内に盗賊たちに拾われるまでの事を話してくれた。
エルフ娘はシルヴィアっていう名前で、オレリアさんの神官仲間だったんだそうだ。
和を為す女神、平和を象徴するような女神さまの神官。
冒険者とししてはヒーラーで登録していたけど、あるクエストに出かけた時にパーティメンバーから見捨てられたらしい。
「それで、あの……こちらにお世話になってました……」
町に戻るのだってすぐには無理だから、逃げだせないでいたのか。
シルヴィアさんの件はオレリアさんが頭を下げるもんだから、俺たちのパーティに入るという事になった。
こんな可愛い子がむさくるしいおっさんと一緒に牢屋行きってのも後味悪いし。
と、いうことで新生パーティで遺跡探索だ。
案内はここで暮らしていたシルヴィアさんが。
「……ここで見つかった物は……あっちの部屋……」
「ぞんざいに扱われてないといいねぇ」
ぼそぼそと小さな声で喋るのは何でなんだろうか。
オレリアさんが気にしてないってことは元からこうなのかな。
案内されて俺たちは奥の小部屋へと進んだ。
「うわぁ……これ、ヒドいんじゃない?」
その部屋の中を見て真っ先に声を上げたのはミケ猫だった。
俺も同感。これは酷いってもんじゃない。
「ああ、何という……」
ガラクタみたいにいろんな物が積んである。
壺とか椅子とかよくわからない置物のような物とか。
これ、下の方に紙とかあったら破れてるんじゃないか?
金目の物以外を放り込んだんだろうな。
オレリアさんが可哀想だ。
「とりあえず、上から物どけてみる?」
とんだ発掘作業だ。
俺たちは積まれた物を手でどかせるという作業をすることになった。
椅子・机・雑貨みたいな物。
遺跡っていうか長年放置されてた家みたいだなぁ。
ほとんど生活雑貨じゃねぇか。
「うう……資料……」
オレリアさんが泣きそうだ。
まだ盗賊も遺跡の一部だけしか漁ってないらしいし、希望持とうぜ。
さて、バケツリレー方式で積まれた物を片付けてるわけだが、先頭は俺じゃない。
ロレッタ姉さんから俺が受け取り、後ろへ渡すみたいになってる。
そこは俺だろ。何で姉さんそんなに力持ちなんだ。
結局時間を掛けてやった片付けでいい成果は何もなかった。
古代文明って言っても生活用品とか、あんまり今のこの世界と変わらないんだな。
「まあ、落ち込むなって。まだ遺跡は広いんだから」
ロレッタ姉さんがオレリアさんを慰める。
小部屋を出て奥へ進むと狭い通路が一気に広い所へと繋がった。
天井も嘘のように高い。
「うわぁ……」
岩か土かでできている街。
俺たちの前に広がったのはそんな光景だった。
ミケ猫やロレッタ姉さんでさえこの光景に驚いてると言うのに、オレリアさんはさっきのショックから立ち直ってないみたい。
「せめて……せめて何か資料が……」
可哀想……オレリアさん。
出発前はあんなに張り切っていたのに。
「ここにはないかもだけど、この遺跡って街みたいだし図書館みたいなの探せばいいんじゃないか?」
盗賊も全部は探してないだろうし。
ここが本当に街だとしたら十人で全部漁る手間を考えたら外で稼ぐだろう。
俺が慰めに言ってやると、オレリアさんが俺を見る。
そんな捨てられた犬のような目で俺を見るなよ。
「リュウさんが探してくれるんですか?」
一気に俺の仕事が増えた。
でも、オレリアさんが落ち込んでるよりはずっとマシかな?
案内板があればいいんだけど、街だとしたらあるのかも。
「じゃあ奥行こうかねぇ」
ロレッタ姉さんの一言で全員移動。
俺は案内板ねぇかなぁときょろきょろしながらだけど。
「お、あったあった」
案内版はやたら立派な建物の前にあった。
この建物は役場かな。
何で描いたかは知らないけれど、石でできた案内板には鮮やかな街の案内がそこにある。
「何だこれ?」
「多分案内板。この建物が役所。ってことはこの近くに図書館があってもいいはず」
俺は元の世界での記憶を頼りにそんなことを言ってみる。
図書館じゃなくても、学校みたいなものがあればもっといいんだけどこの世界だとあるのかどうか。
でもとりあえずは図書館だ、と案内板を見てみるんだが大雑把すぎてわからない。
「リュウさん、どうですか?」
「この案内図、大雑把すぎて現在地と東西南北の地区しか……」
「でも、それはそれで貴重な資料になりそうです」
あ、オレリアさんが元気になった。
よかった、よかった。
オレリアさんが落ち込んだままだと、そろそろ町に帰ろうなんて言えないもんな。
俺自身が帰りたいわけじゃないんだけど、昨日戦って異空間に放り込んだ盗賊たちが心配の種。
生きてるかもそうなんだけど、食料と同じところに放り込んでるし、かじられた食料出てきたら嫌だ。
「この周辺で図書館っぽい建物……」
集合場所を目立つこの案内板の前と決め、俺たちはいったん解散した。
皆で手分けしてこの周辺を探検だ。
って言っても何故かオレリアさんは俺についてくる。
「素敵な遺跡だと思いませんか?」
オレリアさんは楽しそうに上を見ながら言う。
俺も釣られて視線を上げたが空は見えない。
どこまでも土のドームが覆ってる。
そもそもどうやってこんな街を作ったんだろうな。
「どうやって作ったか気になるぐらい、かな」
「気になりますよね! 外から見た限りでは建物でしたけど、まさかこんな風になってるなんて思いませんでした!」
オレリアさんすっかり元気になったな。
これで何か成果が出れば帰れるんじゃないかな。
どう考えても調査するのにたくさん学者……っていうかオレリアさんの同僚とかが必要だよ。
「あ、リュウさん。あの建物は何でしょうね!」
オレリアさんが輝いてるよ。
俺の腕を取ってぐいぐい引っ張っていく。
そんなに引っ張らなくてもわかった、わかったから。
と、いうわけで、俺が連れて来られた建物の前。
俺にはでかいとしか思えなかったそれが、俺たちの探していた図書館だった。
本当は一度集合して、図書館の中を探索するところをオレリアさんは一人で行こうとする。
「待って、待って。オレリアさん! 皆で行こうよ!」
「でも、そこに資料が……」
「資料は逃げないって!」
ようやくオレリアさんをなだめて集合場所へ。
皆が揃ってから、俺たちは図書館に向かった。
これで資料が手に入ったら町に帰れるな。
オレリアさんが盗賊を突き出すの、忘れないといいんだけど。




