クエスト:初めての遺跡調査4
ロレッタ姉さんの目的をオレリアさんから聞いた俺は、混乱したまま休むことになった。
交代の時間が来たからな。
うーん……しかし重婚か。ハーレムって奴だな。
俺が結婚ねぇ。
そんなことを言われたら、俺だって人並みにモテたいっていう気持ちはある。
つい期待しちゃうじゃないか。
想像する。
ロレッタ姉さんがムチムチな身体を晒して俺にのしかかってくる姿を。
うん、とてもいい。
これから眠らないといけないのに、俺のある部分が元気になってしまう。
離れて自分で抜くって手も使えないし、悶々としたまま俺は目を閉じた。
さて、夜が明けて俺たちは再び出発したわけだが、気まずい。
とても気まずい。
俺がちょっと変な顔をしてるのに気付いたのか、ロレッタ姉さんが後ろでこっそりオレリアさんに何か言ってるのが聞こえた。
多分昨夜の事を聞いてるんだろうな。
俺はこの先本当にこのパーティでやっていけるのか、と悩んだんだんだが他にパーティ組んでくれる相手もいなさそうだし。
オレリアさんの言った事が本当なら、こんなモテ期は生まれて初めてだし、このままでもいいんじゃないかと俺は結論は出したんだ。
でもやっぱ昨夜ちょっと恥ずかしい妄想しちゃったし……ってのが俺の中では大きいわけ。
うん、一番恥ずかしいのはやっぱり昨日の妄想だな。
俺はそんな風に自分を納得させて先へ進んだ。
目的の遺跡に着いたのは日がもう傾いてきた頃だ。
「もう遺跡? 盗賊も別に出て来なかったじゃない」
ミケ猫は何か不満そうに言ってるが、戦闘になってもお前は戦わずに見てるだけじゃないか。
「甘いねぇ。根城って言うんだから盗賊はどこか街道にでも出張してるだろうさ。アタシらの通って来たのはほとんど使ってないような道だからね」
振り返ってみると確かに誰かとすれ違ったりすることもなかったな。
「つまり、盗賊はこれから戻ってくる?」
「そうなるね」
ミケ猫の疑問に俺が頷いた。
「遺跡の調査には昼が一番いいんですが、盗賊が残ってるかもしれません」
オレリアさんの心配はロレッタ姉さんが豪快に吹き飛ばす。
「じゃあ盗賊が根城に戻って休んでるところで強襲しようか」
鬼か!
俺は内心突っ込んだが、これはフェアなゲームじゃないんだからアリだよな。
どうせ俺が攻撃に使うのも状態異常系の魔法なんだし。
「夜まで交代で休みましょう」
また交代だよ!
今度は誰が俺とペアになるんだろう。
と、思ったけど今日は揉めることもなくミケ猫と見張りをすることになった。
昨日のうちに取り決めてたのか?
多分そうだろう。
ロレッタ姉さんとオレリアさんが休む中、俺とミケ猫は二人きりで遺跡を見張ることに。
場所は遺跡から少し離れた森だ。
「リュウ、今日ちょっと様子おかしかったけどどうしたの?」
ミケ猫けっこう鋭いな。
とは言っても俺は理由を素直に言えるわけない。
「初めての野宿だし、疲れたのかもな」
なんて俺はごまかしてスマホを弄る。
「だって、これをオレリアさんに見られたら困るだろ。光る板とか言われてさ」
「それもそうよね」
なんとか話を逸らせたかな?
俺は今回使える魔法について調べとかないとな。
最悪自動戦闘の出番だ。
できればこれは使いたくない。
「でも盗賊退治かぁ。人間相手に戦うこともあるんだな」
「メインは遺跡調査でしょ」
「ああ、わかってるけど」
死人が出なきゃいいなぁって思う俺はこの世界では甘いのかな。
だけど、俺はこの世界に来て日が浅いから感覚が違っても仕方ないじゃないか。
モンスター相手だったら遠慮なく攻撃できるんだけど。
違いは何だろうな。やっぱ生きてるから?
「スリープミストか……。こいつ一発で盗賊が寝てくれればいいんだけど」
「でもリュウがいるならなんとかなるよ!」
「俺にばっかり頼ると後で困るのはお前だぞ。シーフには聞き耳の技能もあるんだろ? 今回大活躍しそうじゃないか」
「う……でも実践は初めてだよ」
「俺だって状態変化系の魔法使うのは初めてなんだ」
もしかしてミケ猫は俺が『勇者サマ』だから何でもできると思ってないか?
それは全く違うと言わないといけないぞ。
俺はあっちの世界じゃ、割とどこにでもいる平凡な男なんだからな。
途中で見張りを交代して休んだ俺たちが起きる頃には、もう日も完全に暮れてしまっていた。
携帯食料を食べて腹ごしらえをした俺たちは、遺跡に突入することになった。
どうやら俺とミケ猫が休んでる間に盗賊たちが戻って来たらしい。
「さあ、気合入れて行くよ!」
「気合入れすぎて倒れないでくださいね」
「頑張ってね、おばさん」
「ミケは口が悪すぎるぞ」
四人でそれぞれ違うことを言って、俺たちの遺跡調査が始まった。
「明かりはどうする?」
「リュウさん、なるべく抑えて明かりの魔法を」
オレリアさんの指示に従って俺は明かりを作った。
「子猫ちゃんは聞き耳立てて。アタシら以外の足音が聞こえたら合図しな」
ロレッタ姉さんは、シーフとしての経験の浅いミケ猫にすごい無茶ぶりだ。
「マッピングは俺がやるから」
こんな暗い中では、スマホの自動マッピング以外頼れないだろう。
だから俺がやると自分から言い出したわけなんだけど。
「そういや、アンタどうやってマッピングしてるんだい?」
うん。前探索した時も何かに書きつけてたわけじゃないから不思議に思うよな。
でもそれは言えない。
「それはあれだ、秘密って奴」
「そうそう、おばさんは余計な事気にしないの」
ミケ猫は余計なことを言う。
ロレッタ姉さんの事がそんなに気に入らないのか?
それはそれとして、聞き耳はどうした。
「奥の方で話し声はするけど、この辺で他の足音はしないよ。できるだけゆっくり進もう」
「アンタが仕切るんじゃないよ」
うん、その点は同意するよ姉さん。
「足音をなるべく立てないように進むんだよ。いいね、子猫ちゃん」
「むぅ……」
何で自分だけって声だな。
俺もなるべく気を付けて歩かないとな。
出来るだけ固まってるところに、魔法一発で眠らせたい。
俺たちはできるだけ音を立てないように奥へ進む。
そうすると俺たちにもだんだんと奥の音が聞こえてきた。
飲んで食べて騒いでるのかな? そんな物音だ。
ロレッタ姉さんの指示通り俺はすぐ向こうからいろいろな声が聞こえる扉の脇に立った。
ゆっくりと細くロレッタ姉さんが扉を開けてくれる。
俺はその隙間から部屋のど真ん中にスリープミストの魔法を撃ち込んだ。




