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クエスト:初めての遺跡調査3

 遺跡へ出発する集合に遅れたのはロレッタ姉さんだけだった。


「いやあ、ゴメンゴメン。うっかり寝坊しちゃって」


 ロレッタ姉さんも可愛い所があるもんだ。

 明日はミケ猫かオレリアさんが起こしてくれるだろう。


「ロレッタさん、明日は容赦なく叩き起こしますからね」


 委員長みたいな眼鏡美人に叩き起こしてもらえるなら、俺も寝坊したい。

 なんて言ってちゃ怒られるかな。


「私でも早起きできたのに情けないじゃない」


 ミケ猫だってギリギリに来たじゃないか。

 それにしてもオレリアさんはリュックみたいな荷袋を背負った俺たちと違って荷物ないな。

 まさか手ぶらで行くつもりなのか?

 疑問を口に出そうとした時、オレリアさんが俺たちを振り返った。


「さて、出発する前に荷物を預かります」


「え?」


「はい?」


 俺とミケ猫はそろって間抜けな声を上げて、お互いの顔を見た。

 ミケ猫も目を丸くしてるってことは、俺の聞き間違いじゃない。


「説明してやらないと、二人が可哀想だぞ」


「あ、そうですね。失礼しました」


 ロレッタ姉さんはオレリアさんに荷物を差し出してる。

 オレリアさんはその荷物を受け取ると虚空へと放った。

 え? 投げた?


「開きなさい!」


 ギチッと何かが軋む音がした。

 何もないはずの空中に真っ黒な口が開いた。

 オレリアさんが投げた荷物はその口の中に吸い込まれ、消える。


「これが私の神殿で授かった奇跡、トランスポーターです。異空間に荷物を収納して、必要な時に取り出せます」


「オレリアってば現場経験ないから開くときに荷物投げないと入らないんだ」


「もう、余計なことは言わなくていいんです!」


 顔を真っ赤にして怒るオレリアさん。

 うーん、いい光景だ。

 とりあえず荷物は渡しておこう。

 スマホさえあれば俺は大丈夫なんだから。

 ミケ猫と俺の荷物をちょっぴり乱暴に収納して、さあ出発だ。




 一日目は何の問題もなく終わった。

 っていうか一日ただ歩いただけだ。

 盗賊も何も出なかったのだけはよかったかな。

 空が赤くなるころに、俺たちはある泉のほとりでたき火をして、野宿をすることにした。


「外で皆でする食事もいいってもんだねぇ」


 ロレッタ姉さんが豪快に笑いながら夕飯を食べてる。

 オレリアさんの異空間に鍋や食器まで入ってたのには驚いた。

 てっきり町に帰るまでは、干し肉をあぶったりした簡素な食事だと思っていたんだが。

 食材まで入っていたとは。

 ごった煮だけど、俺たちが用意した携帯食料よりはずっといい。


「それで、夜の見張りだけど、二人ずつで交代して休もう」


「俺は構わないけど組み合わせはどうするんだ?」


 うっかり俺がそう言ったもんだから、大変なことになってしまった。

 何故か三人が全員俺と見張りをしたいんだそうだ。

 ミケ猫が一番いいよな。

 ロレッタ姉さんだと俺がムラムラする。

 もし、オレリアさんだったら質問攻めにされる気がする。

 どうやってペアを決めるんだろうな。

 三人が固まって何かやってるけれど何だ?じゃんけんか?

 って言ってもじゃんけんなんか異世界にあるわけないか。

 話し合いをしてるにしては静かだし何やってんだろ。


「ああああ! 負けたー!」


 最初にがっくり項垂れたのはミケ猫だった。

 ってことは俺、あのどっちかと二人きり?

 うわぁ……勘弁してよ。


「くっ……アタシが負けるなんて……」


 次に脱落したのはロレッタ姉さんだった。

 まさかのオレリアさんと二人きり。

 とりあえず何か聞かれても答えれないことは全力でノーコメントとする。

 じゃないと質問に溺れてしまうかも。


「では、よろしくお願いします」


「あ、ああ。こちらこそ」


 とは言ってみたものの俺は明後日の方向を向いとくしかない。

 その前にテントの設置か。

 この世界でもテントと言うのかは知らないけど。

 オレリアさんが取り出したテントを言われるままに組み立てて、ロレッタ姉さんとミケ猫はテントに消えて行った。

 これで俺とオレリアさんの気まずい二人きりだ。

 本当に気まずい。

 星を数えるぐらいしかやることないんじゃないか?

 とはいえ、本当に星を数えてたら眠くなってしまう。

 スマホのネット使えるからそれで遊んでもいいんだけど、オレリアさんに見られたらヤバイよな。


「ところでリュウさん」


「っ!?」


 急に声を掛けられて、俺は急に咳き込みそうになった。

 心臓に悪い。


「あ、すみません」


 申し訳なさそうな声に振り返ると、オレリアさんは眼鏡を外して俺を見ている。


「こっちこそ、悪い」


 また沈黙が俺たちの間に流れるが、今度の沈黙は長く続かなかった。


「あの、リュウさんはどうしてロレッタさんとパーティを組んでるんですか?」


「ロレッタ姉さんが初心者シーフと一緒でもパーティ組んでいいって言ったから」


「そうですか。じゃあロレッタさんがどうしてリュウさんとパーティを組んだのかは知らないんですね」


 つまりオレリアさんはロレッタ姉さんが俺とパーティ組んだ理由を知ってるわけ?

 ソロで狩りをするのに飽きたからじゃないのか。


「リュウさんは獣人と会うのは冒険者になってからですよね」


 厳密に言うなら、ミケ猫と会ってからだけど大体合ってる。

 町中でもミケ猫とロレッタ姉さん以外は獣人いなかったな。

 ってことは俺は獣人について詳しく知らなくてもいいんだな。


「ああ」


「普通獣人は人間の町からは離れたところでコミュニティを作ってます。ほとんど人間には関わらないのですが、獣人の女性の一部はある事を目的に冒険者になることがあるんです」


 冒険者になるのって女性だけなのか?

 獣人の生活とか、全然知らないから俺にはロレッタ姉さんたちが冒険者をやってる理由とか目的とか全然わからない。


「ある事?」


「ええ、そうです。リュウさん、ロレッタさんたちは貴方と結婚したいんです」


「はい?」


 一体何を言い出すんだ。

 俺と結婚?

 ないない。あるわけない。

 こちとら彼女いない歴が年齢と同じなんだぞ。

 何か意味深に絡んでくると思ったら全部本気だったのか!

 俺は混乱して何も言えない。


「獣人の女性は強い男性を好む傾向にあります」


 俺の場合強いって言うよりあのジジイの祝福のせいなんだが。


「混血とかいいわけ!?」


「母の種族として生まれるので問題はないようです。基本的に私たちも含めて母系社会ですからね」


 衝撃の展開だぞ。

 ここに来て彼女ができるどころか嫁ができる可能性。

 母系社会? つまり女が当主ってか?

 待て待て。これは罠かもしれん。


「でも、それはオレリアさんの推測じゃないのか?」


「それは違います。ロレッタさんは貴方を冒険者として有名にさせると言ってました」


「ああ、言ってたな」


 でもそれは俺の目的でもあるわけだ。


「どうしてだかわかりますか?」


「……」


 考えてみるとロレッタ姉さんが俺を有名にする意味ってあるのか?

 ミケ猫は一攫千金とか言ってたしわかるんだけど。


「冒険者として名を上げて、貴族の当主とでも結婚したら重婚が可能になりますからね。ロレッタさんはそれを狙ってるわけですよ」


 そういえばアプリのヘルプにそんなことが書いてあったような気がする。

 モテない俺には関係ないって読み込まなかったのを後悔した。


「貴方が有名になろうとするのは、それが目当てだと思ってたんですが違うんですか?」


 それを先に知ってたら俺別の意味で頑張ってたかもな。


「いや、俺は元々別の目的で名を上げようとしていたんだ。しまったな、重婚の方までは考えてなかった」


 これでごまかせたか?

 目的について聞かれたら適当に壮大過ぎる嘘でも言って笑い話にしてみるかな。


「どうやら、本当に目的が違ったんですね」


 うん、想像してたのと違ってごめんな。

 いやはや、まさかロレッタ姉さんの目的が重婚とは。

 ってことは姉さんと張り合ってたミケ猫も?

 それはさすがに話が出来過ぎだと思うんだけどどうなんだ。

 俺、この先冷静にあの二人と一緒にパーティやっていけるのか?

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