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ヤンキー執事と変態メイド!  作者: ロイ
第3章 ……最初は、……掃除……
9/13

1

朝、目覚めた俺は、昨日使ったベッドから起き上がった。



「ん〜、さーて、仕事頑張るかな!」



俺はリビングへ鼻唄混じりに向かった。



ガチャッ



「……あ、おはよ……銀……」



キッチンで何かを作っていた歌音が、俺を見て挨拶をする。



「おう、おはよう。


もうメイド姿になってんだな」



歌音はすでにメイド服を着ていた。



頭には昨日のカチューシャ、服はフリルのついたメイド服。



メイド服なんぞ、メイド喫茶の宣伝や、アニメでしか見たことがないので、細かい名前などまったく分からない。



スカートは膝より少し上の位置で、黒のレース柄のニーソックスが、彼女の太ももの形、白さを強調していて、後ろから見ていても何とも可愛らしい。



キッチンに立っているため、裸エプロンに使っていたエプロンを装備している。



「……もう、朝食できたから、席についといて……」



歌音は火を止めると、フライパンを持ち、振り向いた。



「お、おう」



俺は返事をするとリビングに位置するテーブルの前に座った。


カチャ


「……これも……」



俺の前にトーストの乗った皿が置かれる。



「……歌音、さすがはメイドだな……」



テーブルの上に広がるのは、特に豪華とは言えない朝食。



ただ、一つ一つの料理のクオリティが驚くほど高い。



こんがりと焼けたトーストは、きつね色に焼き上がっていて、バターを塗っているだけだが、おもわず涎が出そうになる。



そして、こがね色のオニオンスープ。 湯気が立っていて、芳ばしい玉ねぎの香りがユラユラと漂う。



デザートはシンプルで、ヨーグルトにリンゴジャムがかけてある。



自家製だろうか? そばには手作りと思われるジャムが、瓶に入っていた。



「すげぇうまそうだ……」



俺は歌音の方を向く。



「ありがとな、歌音。


俺、いつも朝食抜きだったから、久しぶりの朝食、スゲー嬉しい」



「……ふふ、コーヒーと紅茶どっちが良い……?



歌音は微笑むと俺に訊ねてきた。



「そうだな〜、紅茶を貰おうかな」



「……了解……」



そう言うと歌音はポットのお湯を沸かし始めた。



───



「ごちそうさま、スゴく美味しかったよ、歌音」



使い終わった皿を重ね、キッチンに持っていく。



「歌音は朝飯食わないのか?」



食器洗い機に皿をいれている歌音に問いかける。



「……私はもう食べたから……」



「えっもう?」



「……銀も明日からは、5時半起き……」



「5時……半か、さすがに使用人は早起きだな……」



こんなスゲー財閥の執事になれたあげく、最高級マンションに住まわせてもらってんだ、それぐらいして当然だろう。



それでも全然足りないくらいだ。



「わかったよ、歌音。



で、今日は何をすればいいんだ?」



使用人生活1日目だ、主人となる人と顔合わせでもするのかな?


「……最初は、掃除……」



歌音はエプロンを外しながら言う。



「そ、掃除?


どこの?」



「……このマンションの……20階まで……箒で掃いたり、掃除機とかで……綺麗にしてきて……」



マンションの20階までだと?



多すぎだろ!



いや、俺達の部屋は80階だから、少ないくらいか。



「でも何で掃除なんだ?」



執事っていえば、主人のそばにいて、主人の要望に応える仕事じゃないのか?



エプロンをハンガーにかけると、こちらを向く歌音。



その目はいつもとは違い、真剣だ。



幻哉と会話してた時の歌音と同じ雰囲気だ。



「私達は、神山家の使用人。



神山家の所有物である、このマンションを綺麗にすることは当然のこと。



私がメイドの見習いの時には、よく掃除してた。



主人との顔合わせは、あなたが見習い執事を卒業してから……」



歌音の雰囲気が少し変わる。



「……でも、まずは執事服……」



歌音は執事をクローゼットから取り出した。



「おう、よし掃除頑張るぜ」



俺は執事服を受けとると、寝室へ向かった。服を着替えるためだ。












「歌音、覗くな」



俺はドアの隙間から見ていた歌音を、リビングへ追いやり、服を着替えるのだった。


執事服に着替えた俺は、掃除をするための道具をどうすればいいか聞くため、再びリビングにやってきた。



「歌音ー? 掃除するための道具ってどうしたら……い……い?」



目の前には顔を真っ赤にし、なぜかバシバシとちり取りで自分の頭を叩きはじめた歌音。



「お、おい、何やってんだよ!」



俺は歌音の腕をつかみ、止めさせる。



「……これは夢じゃないって、確かめてた……」



さらに顔を赤くした歌音は、ちり取りで顔を隠した。



「ったく、ここにある道具を使えばいいんだな?」



俺は机の側に置いてあった、箒や掃除機、雑巾を取る。



「……うん……銀……執事服、似合ってる……」



「なーにちり取りに向かってブツブツ言ってんだ。



ほら、借りるぞ」



俺は、しゃがみこんでちり取りに向かって何やら呟いていた歌音から、ちり取りを取る。



「床は箒、掃除機。 窓は雑巾。



この手順で良いよな?」



「……うん、ワックスや洗剤は月に2、3回で大丈夫……」



俺はバケツに雑巾を突っ込み、箒などを担ぐ。



「ほら、いつまでも座ってんな。



お前だって仕事あるんだろ?」



俺は歌音の腕を引っ張って立たせてやる。



「……う、うん……」



「昼飯はここに戻ってきて勝手に何か食うよ、じゃあ歌音、仕事頑張れよ」



俺はリビングから出ていった。









「……いってらっしゃい、銀……」



歌音の呟いたような言葉に、俺は片手を挙げて答えたのだった。

「さて、1階に着いたのはいいんだが、どこから掃除しようか……」



俺は080号室を出てすぐのところにあったエレベーターで、1階にきていた。



1階はマンションの住民の郵便受けなどが立ち並び、いくつもの監視カメラが設置されている。



おそらく盗難防止、不法侵入対策だろう。



俺はとりあえず、玄関口のところを掃除しはじめた。



外から人が入ってくるところだからな、土や埃が落ちていることが多い。



俺は箒で一ヵ所にゴミを集める作業を、黙々と続けた。





ウィーン



誰かが玄関から入ってきた!



「あらぁ、新しい使用人さん?



箒で掃除するなんて真面目なのねぇ、しかもこんなに綺麗にしてくれてぇ。



ありがとうねぇ」



こ、この人、あの辛口で有名な政治家のおばさんじゃねぇか!



まさか誉めてくれるとは……



「あ、ありがとうございます!



昨日、使用人になったばかりの夜風と申します!



一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!」



俺はビシッと頭を下げた。



「あらあら、元気ねぇ。今時じゃめずらしい良い子だわぁ、じゃ、お掃除、がんばってね」



おばさんは俺に微笑むと、上階へ続くエレベーターに乗り込んだ。



「まさかあの有名な政治家に会うとは…… さすが、Gマンション……」



俺は改めて、このマンションのすごさを確認したのだった。

……それにしても、だ。



このマンション、どんだけ広いんだよ!



かれこれ30分、やっとのことで2階の掃除が終盤に入った。



俺はハイペースを保ちながらも、箒でゴミを集める。



サッサッ



「……こんなもんかな、次は窓だ」



俺はバケツに水を汲んでくると、雑巾を濡らして絞り、窓を吹きはじめた。



隅から隅まで、埃が1もないように。



元来俺はきれい好きで、家の中はいつも俺が掃除していた。



キュキュッ



「ん? あの玄関に止まった車は?」



俺は窓から見える車に意識を向ける。



ただ、窓を拭く手は休めない。



「何で陸【リク】の野郎がここに来てんだ?」



車から出てきたのはメガネをかけた少年、長山 陸【ナガヤマ リク】



俺のダチで、あの変なアラーム音の時計はあいつの手作りだ。



「隣には幻夜と……誰だ?」



幻夜、陸に挟まれて歩く、まさに大和撫子な女の子が玄関に入っていった。



「ま、幻夜が一緒にいるし、心配はないと思うが……」



陸はあの事件の後から様子がおかしいんだ。



俺もあの事件の後は、西部の奴らとケンカしたりと忙しかったため、連絡を取っていなかった。



俺は疑問を浮かべながら窓を次々と拭いていった。


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