アイ・アイロボット
20XX年。
万人が愛することができる愛玩用動物ロボットが開発された。
人それぞれに好みはあるが、そのロボットはかわいいと思える容姿と仕種を、個々の好みに合わせるAIを持っていた。
そのロボットは、『アイ・アイ』と名前をつけられ、爆発的に普及した。
F.S君(8才)の証言
たしかに、ぼくは、乱暴にたたいたりしたこともあったさ。
でも、そんな時、アイちゃんは、怒るわけでも、せめるわけでもなく、ただ、悲しそうな顔してて…
それで、いじわるすることはやめたんだ。
でも、今はアイちゃんが大好きだよ。
M.Aさん(24歳)の証言
私はもう、アイ・アイ無しには生きられないわ…
疲れた時、荒れている時に、心配そうに見守ってくれて… おかげで立ち直ることができたんです。
私を必要としてくれて、一緒にいてくれて…
へたな恋人より、ずっとすばらしい存在だわ。
Y.Hさん(45歳)の証言
とにかく、こいつだけなんですよ。
残業で、付き合いで、どんなに遅く帰っても、嫌な顔ひとつしないで出迎えてくれるのは。
こいつがいるから、家に帰ろうと思うんでしょうね。
たとえ、離婚しても、こいつだけは連れて行きますよ。
S.Jさん(50歳)の証言
子供も大きくなって、夫も仕事仕事で家にいる時間は少ないです。
でも、この子がいるから、寂しくないんです。
本当にかわいいですよ。
今では、実の子以上にかわいがっています。
アイ・アイを開発したA博士は、ブランデーを片手に安楽椅子に座っていた。
そして、コンピューターに向かって言った。
「どうだね。賭けは私の勝ちだろう。」
「しかし、これでは完璧とはいえません。」
コンピューターは反論する。
「ロボットによる、完璧な人類の支配とは言えません。」
A博士は笑った。
「何を言っている。これが、完璧な支配だよ。」
刑罰も拘束も必要とせずに、人の心を占領する。
そのうち、アイ・アイが右と言えば、人が右を向くようになるだろう…」
そして、勝利の美酒を口にした。




