赤ずきん05
「はっ……はっ……」
くそっ。僕としたことが妄想に気をとられて獲物を見失うだなんて。
僕は思いきり脚をふった。
千切れるのではないかと言うほど脚をふり、走った。
一度目的地であるおばあさんの家までの道のりを往復してみたが見当たらず、自分の家に引き返したのではとそちらも当たってみたのだがいない――どこにもいない。
僕はもう肉どころではなくなっていた。
彼女に何かあったのではないかと気が気ではなかった。
どこだ。
どこだ。
考えろ。
あの短時間で消えたんだ。それほど遠くには行けないはず。道中には居なかったし、付近のがけも確認した。獣に襲われたなんてこともない。それなのだとしたら僕ならもう見つけている。僕は狼。においでわかるからだ。広範囲の臭いを瞬時にかぎ分けることができる。けれどなぜだ。白ずきんちゃんのにおいがまったくしない。行方不明になったときからずっと――
におい。
そんなことに意識を向けたからだろうか――鼻先を花の香りが横切った。
まさか。
獣道にはいりしばらく進む。その先にはまるで花たちのために木がここで育つのを遠慮したかのように春の光が差し込む場所。その森の中の花畑に白ずきんちゃんはいた。
花をつむ白ずきんちゃん。
そんな穏やかな陽気に誘われてか小鳥や鹿の親子が白ずきんちゃんの周りでまるで自由に各々がその風流を楽しんでいた。
……天使。
僕は崩れるように地面に横になった。
よかった。
万が一のことがなくて本当によかった。
本来僕が道草を誘発する予定だったけれど――どうせつれてきたい場所はここだったし。
それにしても白ずきんちゃんは本当に自然が似合うな。なんかもう、例え僕があそこに混じっても遜色なくなってしまいそうなほど、幻想的な空間が作られてるよな。花たちも喜んでるもん。きっと風に揺れているだけなのだけれど笑っているように見えるもん。絵本に出てきそうだ。ここで僕が混じっても、その絵本の中ではすごく清潔な感じで描かれるんだろうな。もうなんかドーベルマンみたいにさ。そして意味もなくにっこりと笑い、白ずきんちゃんを見つめる。別に狼よりもドーベルマンのがかっこよさで上とは言わないけれど、うーん。やっぱドーベルマンみたいな紳士になりたいよな。名前もかっこいいし。ガードマンみたいで。
まぁフレイヤの描写はこの辺りまでにしておこうかな。僕がここの描写を始めたら、メモリが何ギガあっても足りないし。先の二の舞になっても困るしな。
そして最終段階だ。
あとはおばあさんを――おとすだけだ。