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僕の強いディペンデンス

僕はこの左手が誰のものかなど疑いもしなかった。


熱量を伝えてくる僕のものではない左手。

僕は必死で握り返した。


でも・・・。



「痛いってば!」


もう一度かけられた声は僕の知っている彼女の声ではなかった。



「何するんだよ。人の優しさにつけこんで!」


振り返って見たその人は綾香とは似ても似つかない顔をしていた。


栗色のショートにした髪は金色ではなく。

小麦色に近い肌は艶やかな白さではなく。

低めの身長は大人びてなく。


ただ、その目に湛えた力強さだけは綾香と似ていた。

その部分に僕の心は少しだけ落ち着いていた。


「ごめん。人違いしてしまって…。」

僕はとりあえず握り返しすぎたことを謝る。


「いいけどさぁ。離してくれないの?」

強く握り返すことをやめた僕の手は、優しく握ることをやめようとはしない。


ただ俯くしかない僕。


「まぁ、いいけどさぁ。」

そう言ってくれる彼女の笑顔は小悪魔的で魅了されそうだった。


魅了されることは容易い。

それだけの可愛い人だったけれど後のことを考えると悪魔にころされかねないので自制。


「イケメンだし。」

一気に体温が低下する。

僕は割とかっこいい部類に入るらしい。

でもその後に絶対落胆が待っている。


なぜなら、がっかりイケメンだから。


上げられた期待に答えられない僕はどうせなら期待なんてされたくない。


「ん?どうしちゃったの?」

僕の下がる体温に気づいたのか。

それとも単純に顔に出たのだろうか。

彼女は僕よりもだいぶ小さい身長を活かして俯く僕の顔を心配そうに見つめてくれた。


「なんでもないよ。」

「そっかぁ。それでさ、人探し中なの?」


この子もまた僕の弱い部分を見逃してくれる人だった。


「うん。彼女をさがしてるんだ。一緒にこのゲームを始めたんだけど。」


っと話すと見事な舌うちが帰ってきた。

「ちっ。彼女付きかぁ。」


「じゃあさっさとさがしに行けばいいんじゃないかな?このゲーム無意味にリアルだから特定のアイテムないと通信とかできないよ。」」


確かにゲームの知識面でお世話になっているサイトのmikiにもそう書いてあった。

だから僕は必死で走るしかなかったのだけど。


「ありがとう。探してくるよ。」

「はいはい。」


走り出す僕。

なのに何故か彼女は付いてくる。


「どうしたの?」

一度止まって振り返り声をかけた。


「どうしたの?じゃないよ!君が手を離さないからでしょ!」


僕の内面を表すかのように依存的な右手は彼女の左手をいまだに離さなかった。


「悪いとは思うんだけど一緒に探してくれないですか?えっと…。」

今更だけど名前すら聞いていなかった。


「レヴィン・ブルーナナリス!」

「うん…。レヴィでいいのかな。お願いしたいんだけど。」


「名乗ったら名前!」

腕組して怒った雰囲気をだしたいのだろけど彼女の左手は僕の右手に摑まれて腕組すらできない。

とりあえず怒った顔をしてみているようだ。


可愛いと思うだけなら浮気じゃないよ。


「僕はシュラウド。」


「仕方ないな。手伝ってあげるよシュラ。それともウド?」


そういうやり取りもあって僕は彼女の左手を握りながら綾香を探した。

一人で探してたころよりも心に余裕があって周りがよく見えた。


でも、それはただの徒労というものだった。

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