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奪い合いのバトルフィールド

ドスッ


僕の背中には二つのナイフが生えた。


痛みというゲームでの感覚は正常に異常なまでに僕にリアルな痛みを伝える。


包丁で指先をちょっと切った様な感覚とは違う。

包丁で指を斬ったような痛み。


故意にその目的のために与えた衝撃は失敗して与えた衝撃とはまったくもって違う。

緩みがない。

遠慮がない。


何も引くものの無い、行為=衝撃。


僕に刺さったナイフは人を殺すためにその十分な力を主人から与えられ僕に突き刺さっている。



「ぐっ……。」

両膝をくずれるように地につけ倒れないようにだけ耐える。


一撃でHPを吹き飛ばされなくて良かった。


「ゆきとっ!!」「しゅらっ!」

両側から違う名前で同じ僕を呼ぶ声が響く。


「……大丈夫だよ。」

痛みをさとられないように力強い声をだそうとしたけど、僕の口から漏れる声は小さくてはかない。


ちょっとだけ遠くなった耳が綾香の駆け出してくる足音を拾う。

その音を聞きながら僕は前に崩れ落ちるように倒れていた。

そして、僕よりも小さな女の子の身体に支えられる。

本当に男らしくない僕。


「しゅらっ!なんでかばったの!あれぐらい避けれたよ!」

きっとそうだろうという思いはあった。

レヴィならこれぐらいの攻撃は避けきれる。

でも、これは僕が当たる必要があった。


「ゆきとっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!死なないで!」

後ろから抱きついてくる綾香。

さっきまで怒りきっていたのが嘘のように今は泣いている。


前もこういうことがあった。

高校の時、同級生のヤンキーみたいな奴に僕が殴られたとき。

綾香はそいつを蹴り倒し、馬乗りになってそいつを殴り続けた。

止めにはいった先生や僕を無視して殴り続け、そいつが死ぬんじゃないかと思った。

でも、殴ろうとして引いた肘が僕の顔を直撃した時、綾香はやっと僕をみてくれた。


いつもそうなのだ。

綾香は僕のために見境を失う

そういう時、見境を取り戻すには僕が綾香の攻撃を受けるしかない。


「綾香……。そんなに抱きつくとナイフが深く刺さって追加ダメージで僕の残りわずかなHPが消し飛ぶよ。」

「でも!」

「大丈夫。この世界はHPがある限り絶対死なないんだから。」


そう言ったところでやっと綾香は離れてくれた。

僕もダメージが与えるリアルな感触が切れ、めまいや吐き気もおさまる。


「綾香。話聞いてくれる?」

「うん。」

さっきまで悪魔にしか見えなかった僕の彼女は今は子犬だった。


「ずっと待ってたんだけどさ。違う道から出ちゃったみたいで。」

「ごめんなさい。」

綾香は溢れる涙を止められないでいる。


「フィールドエリアを通るの手伝ってもらったんだよ。」

「うん。」

「だから、ありがとうって言ってあげて。」

「……うん。」


二人の間にいた僕は一歩退く。


「あの……。」

綾香は言葉を捜しているようだった。


「なに?」

レヴィは遠慮がない。

チャンスとばかりに上から目線だ。


「私のゆきとがお世話に……なりました。」


明らかに「私の」を強調している……。

結果、わかりやすいほどレヴィの顔がひきつっている。


「彼がどうしても私について来て欲しいって言うもんだからさ~。ここまで連れてきて上げたのよ。」

また再燃しかねない言葉の殴りあい。


「知ってる?彼、私の左手を離してくれなくてさ!」


空気が乾く。

弾けそうな空気。


「ゆきとっ!」

綾香の両手が僕の右手を包み、綾香の胸に抱え込む。

「知ってる?彼、大きい胸が好きなのよ!」


再びひきつるレヴィ。

「あっれ~?あなた小さくない?まないたって言うにはあるけど~。羽子板程度ね~。」


レヴィの拳が再び硬く握られた。

もう痛い思いはしたくないので僕は早急な対応をとる。


「綾香!言っていいことと悪いことがあるよ!」

まだ完全に回復してない綾香をしかる。

「ごめんなさい……。」

再び子犬化。


「ちっ!」

レヴィは拳を緩めてくれた。


「とりあえず、しゅらもダメージ受けてるし、今日は湖の小屋で休もうぜ。」

こうして第三次世界大戦は回避された。

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