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最初のバトル

「それでシュラは戦闘の経験は0?」

僕の背中に吊ってある火縄銃をじろじろとみながらレヴィが聞いてくる。


ーーー。


僕らはトスカーレ西の湖、ニアデル湖を目指し街の中を歩いている。


結局の所、僕が待っていた通路以外から綾香はニアデル湖を目指したらしい。

そして、僕らは追わなければならなくなった。

正直に言えばモンスターがでる街の外になんか出たくないのが正直なところだ。


今や、この世界にコンテニューなんてないのだから一度のミスだって冗談ですまない…。

僕一人だったら寿命かゲームクリアまでずっとこの街でくらしたことだろう。


ただ、綾香がいる世界だからついていく以外の選択肢はない。


ーーー。


「まったくないよ。」

このゲームが始まってやったことと言えばクラフトワークぐらいだ。


「まあそうだよね。短い間だったし戦闘してる人の方が圧倒的に少ないよね。」

ぴったりと僕の横を歩くレヴィは僕の右手をずっと離さないでくれる。


「そういうレヴィはあるの?」

「あるよ。ゲーム開始と同時に街の外に走った人だもん。」

レヴィは間髪いれずに嬉しそうに話してくる。


「ここの戦いって凄いの!自分の動きたいように動けるよ!よけるのも自分次第!」

「でねでね!スキルみたいなものがそれをサポートしてくれるの!」

「私あんなに高くまで飛んだのはじめてだったよ!身体がすっごく軽くてさ!」

「敵を砕く感触とかもうね!最高!」

どうやら戦闘狂という部類の人だったらしい。


「それでね!何が言いたいかっていうと現実での経験が活かせるってこと。」

「要するにスポーツ万能の人がこの世界でも万能ってこと?」

残念な気持ちになる。

ここも現実での僕の劣等感を押し付けてくる世界なのか。


「違うかな。能力はステータスで決められちゃってるから足早い人も遅い人も同じ速度でしかはしれないし。」

「ん…なんていえばいいのかな。身体の動きの慣れ?そういうのが活かせるっていうのかな。」

「例えばボクシングの経験があれば有効な殴り方とか反撃しやすい避け方とか知ってるでしょ。」

「そういうのが活かせるっていうのかな。」


「要するに。慣れ親しんでる武器が一番使いやすいってこと。」

レヴィはそう言って僕の火縄銃を見ていた。


「それ…使ったこと…ないよね?」

「あるわけないけど、使い方はこの武器を装備した時にだいたい説明されたよ。」

僕は軽くそう答えた。

ステータスさえ上げれば僕は人並みに戦えるんだ。

さっきの話を聞いた上で武器の扱い方も説明をシステムから受け過信していた。


「まあ、実戦で覚えるしかないか。」

レヴィはそう言うと僕の右手を離した。

そして、腰に釣っていたオープンフィンガーグローブのようなものを両手に装着する。


「ほら!敵だよ!」

気づけば街の外にいて、豚のような猪のような何かが目の前にいた。


「もっと早く言ってよ!」

僕は焦って背中に吊ってる火縄銃に手を伸ばす。


その間にもレヴィは敵へと突進をかける。

ミニのスカートが翻りスパッツがよくみえる…。

豚の突進を軽くステップで避け、右手で2発の打撃を叩きこむ。

大振りは運悪くカウンターなんて食らったら本当に命が吹き飛びかねないこの世界では使いづらいのだろう。


その間に僕は何をしていたかというとただひたすら銃を構えようと引っかかって前にこない火縄銃を引っ張っていた。


「ぶっひぃーーーーー!!」

敵の豚がいななく。


「なんだこいつ?」

その間も遠慮なくレヴィは左と右の1セットを叩きこむ。

そして、HPが残り一撃で吹き飛ぶ量なのを確認し、体重をのせた渾身の右ストレートを放つ。


それを右頬に受けた豚は吹き飛び砂の塊みたいなものになって消えていった。

その頃になってようやく僕は銃を両手にやっと握っていた。


「どーよ!使い慣れた拳の方が強いってば!」

レヴィが本当に女の子なのか疑わしくなってきた。

だけど、その笑顔は凄く魅力的にみえる。


そして、僕のもとに戻ってきたレヴィはそのまま僕の右手を握りなおした。

「さあ進むよ。」


それに返事をしたのは僕じゃなかった。

「ぶぶっひぃ!」


それは5匹の豚の軍団だった。

「あんにゃろー!仲間呼んでたのか!」


再びレヴィは僕の右手から離れ勇猛に突撃をかける。

僕は左手に持ったままの火縄銃を両手に握り構える。


5匹もいる状況でただの役立たずでは僕たちは二人共死んでしまう。

そのプレッシャーが僕の照準を大きく揺らす。


距離は10m。

説明によればこの程度の距離なら照準通りの位置に直撃するらしい。

入念に狙いを定める。


躍り出たレヴィのおかげで僕の方を見ている豚はいない。


バーーーーーン!

僕の耳元で雷鳴を鳴らした銃はそれだけでは飽き足らず僕を後ろに打ち出す。

説明書きにそう書いてあったけどその勢いを計算にいれず単純に直立したまま撃った僕は背中から倒れこむ。


だが一番の問題点はそれじゃない。

僕の放った弾丸は狙った豚の鼻をかすめるだけでダメージを与えていなかった。


結果、僕の持つものの脅威に気づいたその豚は僕に向けて突進をかける。


僕は自分と銃と豚しかみえなくなった。

あの豚の突進に直撃する自分を想像して震えだす手。

弾丸のつめ方はわかってる。

火縄銃ではあるけどもっと簡易なつめ方になってて、銃の先から弾丸を中に入れるだけで大丈夫になってる。


それを実行しようとした。

右手で抱えた銃の先に向けて弾丸をもつ左手を伸ばす。


案の定、震える指先は簡単に穴に弾を送り込ませてくれない。

「死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!」

奮い立たせるような声ではなくただひたすらその現実から逃げようとしている声が自分の口から漏れる。


だが、焦る余りに僕は銃の先で弾丸を跳ね飛ばしてしまった。

考えることもできす倒れたまま僕は弾丸を拾うべく必死になる。


そして、弾丸をつかんだ左手を僕は顔の前に持ってくる。

そこには豚の鼻があった。

直撃一歩手前…。


「おりゃーー!!」

目の前の豚の顔が左に向けてずれる。

というよりも左に吹き飛んでいった。

残ったのはレヴィの拳だった。

豚は砂に変わる。


「助かったよ。」

僕は感謝の言葉を漏らす。


でも、レヴィの背中には豚が4匹迫っていることに気づいてしまった。

飛び込みながら無理な体勢と知りつつもフックを叩きこんだレヴィは回避なんかできない。

フックの勢いのまま回転し正面に捕らえた豚面3つに左の3連射を叩きこむ。


それで3匹は制止した。

残り一匹は勢いを失わず俺の方向に倒れこんできているレヴィに間違いなく命中しようとしていた。


「にゃろー!」

悔しそうなレヴィの声が僕のすぐ隣で発せられる。


それにあわせて僕は右手にもつ銃を伸ばした。

銃の先が捕らえたのは豚面。

鼻に直撃し、僕の右腕まで衝撃を伝達する。


でもこの後の衝撃に比べればたいしたことない。

「この距離なら僕だってな!」


ギリギリでつめておいた弾を右手の人差し指のちょっとした動きで放つ。

その弾は今度こそ豚を吹き飛ばした。


吹き飛ばしたと言えば聞こえはいいが、豚面の半分を吹き飛ばしたのだからなかなかのR15だ。


その姿を見た自慢の鼻を折られている豚3匹は一斉に逃げ出す。


そうして安全を確認した上で背中から倒れた上に自分のダッシュの勢いで回転して今や顔面、地面に大胆なキスをしているレヴィの状態を確認する。


「大丈夫?」

「ええ…。」



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