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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第四章 世界との関わり

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212/222

212話 国際単位SI

続いて、日本代表団は一枚の金属製の箱を開けた。

その箱はただの容器ではなく、内部は精密に仕切られ、振動や湿気を遮断するための工夫が施されていた。

蓋がゆっくりと持ち上げられると、室内の光が反射し、内側に収められた物体が静かに輝きを放つ。


中には、鏡のように磨き上げられた白金製の金属棒と、精緻に加工された分銅が整然と並べられている。

それぞれはわずかな傷も許されぬよう丁寧に保護され、布と固定具によって動かぬよう収められていた。


「こちらが我が国で定めた長さと重さの基準、メートル原器と分銅原器です。」


その言葉とともに、会場の視線が一斉に箱の中へと注がれる。

外交官たちは椅子からわずかに身を乗り出し、その輝きに見入っていた。


外務卿が続ける。

その声は落ち着いているが、言葉の一つ一つには確かな意志が込められていた。


「この単位系を、世界共通の国際単位として採用していただきたい。人が測る数値が一致すれば、言葉の壁を越え、協力はより確かなものとなるはずです。」


その説明は簡潔でありながら、意味は極めて大きかった。

測る基準が統一されるということは、技術、交易、学問のすべてにおいて誤差が消えることを意味する。


各国に複製が複数配布されると、外交官たちは慎重にそれを取り、その重さと質感を確かめた。

白金の冷たい感触が指先に伝わり、それが単なる金属ではなく「基準」であることを実感させる。


「これが、同じ長さ、同じ重さの基準か」

「もしこれが各国で同一ならば、測量も造船も変わる」


小さな声があちこちで交わされる。

感嘆と理解が、静かに広がっていく。


この瞬間、世界における共通尺度が生まれたのである。

言葉ではなく、物として共有される基準。

それは見えない秩序の土台となるものだった。


その後の議題は、領土の確認と国境線の調整へと移る。

外交官は複数の地図を机の上に広げる。

羊皮紙や新しい測量図が重ねられ、それぞれの境界線が色分けされていた。


彼は淡々と、しかし一切の曖昧さを残さぬ口調で宣言した。


「現在、日本が実行支配する地域は以下の通りです。新大陸一部地域、南大陸、南嶺地域、太平洋の諸島群。これを正式に日本領として登録いたします。」


その言葉が落ちた瞬間、空気がわずかに固まる。


誰もが理解していた。

これは提案ではなく、我々に認めさせる再確認であるということを。


一瞬、場が凍る。

だが、反論の声は上がらなかった。

それは単に遠慮ではない。


実際、日本人が大量に入植しており、都市、港、工場がすでに形成されている。

他の国々が入り込む余地は全く存在していなかった。


そして何より、前日の艦の砲声が、いまだ耳の奥に残っていた。


あの轟音、あの精度、あの破壊力。

それらすべてが、言葉以上の説得力を持っていた。


彼らは理解していた、これが現実の力の証明なのだと。


続いて、各国代表は互いの支配地域を再確認し、国境の再確認を行った。

地図の上で線が引かれ、修正され、また確認される。


議論は静かに進む。

声を荒げる者はいない。

だが一つ一つの確認が、国と国の関係を確定させていく。


会議の末、日本の提案により、「一年に一度、各国が順に持ち回りで国際会議を行う」ことが決定された。


その決定は、単なる約束ではなく、継続的な対話の枠組みを意味していた。


平和と調和を掲げる、新たな外交秩序の始まりである。

力だけではなく、対話によって均衡を保つという意思の表れだった。


その後、日本代表はさらに踏み込んだ議題を提示する。


「新大陸における英国領について」


外務官僚はゆっくりと地図を指差す。

指先は迷いなく、その地域を示していた。


「現在、英本国では内戦が発生しており、新大陸植民地の統治は極めて不安定な状態です。我が国は、安定した統治のため、譲渡、もしくは友好的な売却の形での移管を検討しております。」


その言葉に、数名の外交官がざわつく。

椅子がわずかに動き、視線が交差する。


だが声は大きくならない。

それぞれが状況を理解していたからだ。


外交官はその波を鎮めるように、ゆっくりと、しかし確実に言葉を重ねる。


「我々は、いかなる領土も力によって奪いません。秩序と合意のもとに引き継ぐのです。」


その言葉は、先ほどの宣言と同様、穏やかでありながら揺るがない。


さらに日本は、「東洋の一部島嶼を、日本の技術支援を対価として譲渡して欲しい」という提案を各国に持ちかけた。


高度な造船技術、精密な測量技術、そして未知の工業力。


それらは、どの国にとっても無視できない価値を持っていた。


外交官たちは静かに考え込む。

利益と危険、その両方を秤にかけながら。


やがて議題はすべて終わり、外交官は深く一礼して締めくくった。


「本日は御集まり頂き、誠に感謝申し上げます。これより代表ごとの質疑応答に移らせていただきます。」


その言葉とともに、会場の張り詰めていた空気がわずかに緩む。


椅子の軋む音、紙のめくれる音、小さな息遣いが戻ってくる。


外交官たちは次々に手を上げた。

慎重に、しかし確かな意志をもって。


その表情には、恐怖と興味、そして、確かな敬意が入り混じっていた。

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