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第四話 交換において、双方が持ち寄るものが等価値であることは望ましい

 初めまして、ただいま紹介にあずかりました熊ヶ谷岬の母、熊ヶ谷真理子くまがや まりこと申します。

 説明の通り、私の息子は脳死しております。しかし、体はこの通り元気です。私達夫婦の中では、息子はまだ生きているのです。

 そして、誤解のないように最初に申し上げておきますが、私は息子の体を他の何かと交換したいと思っておりません。交換を希望していないのにもかかわらず、体の交換サービスへたどり着いた経緯について、説明させていただきます。


 脳を失った息子に対し、私達が最初に行った行動は、AIの導入です。失われた機能をAIによって補おうと思ったのです。

 しかし、旧式の安いAIでは、息子を再現することはできませんでした。

 AIは学習能力が高く、教えた事をすぐに覚えます。

 教えた事をどんどん吸収していき、だんだん息子に近づいていきます。

 初めのうちは、それを見守るのがとても楽しかったのです。

 学習の甲斐あって、性格はかなり近いところまで寄せることができました。

 しかし、このあたりから、状況は少し変わってきました。

 なんというか・・・日々の生活において息子の世話を焼くというのが親子のスキンシップだと思うのですが、それが、いい具合に欠落しているというか、簡略化されてしまっているような気がするのです。

 AIは人間と違い、細かい所にミスを残さず、同じ失敗を繰り返しません。日常においてそれはとても些細なことですが、要所において絶妙に手がかからないのです。


 気付いたときには、息子はAIによって、優秀で手のかからない完全無欠な存在になってしまいました。

 とても贅沢な悩みの様に聞こえるかもしれませんが・・・とても・・・物足りないのです。いざという時、息子から『頼りにされたい。』『必要とされたい。』『頼れる親として誇りに思われたい。』そういった感情を、どうしても満たすことができませんでした。

 一年程度を共に過ごしましたが、今ではもうとてもこれを息子だとは思えません。息子どころか、人間にすら思えません。AIは高性能な人形です。

 とてももどかしいです。見た目が全く同じであるのに、息子の体は五体満足なのに、私達夫婦は息子を感じられないのです。


 そして、私達夫婦が考えた次の手段が、こちらのサービスです。息子の体に入っていただける人間の脳を探しております。もちろん脳が違えば見た目が同じでもそれは別人です。

 別人ですが、それでもAIよりは、人間としてふるまえる分だけましなのではないでしょうか?

 生前の息子にできるだけ近しい方、つまり十代で男子の脳を探しております。

 息子は顔立ちもよく、やせ形で身長も高めです。恋愛がしたいのであれば、決して悪い話ではないと思います。

 脳以外の全身を失ってしまったあなた、脳を失ってしまった息子。

 これはもはや運命、ここまで条件が整った相手は他には見つけられないでしょう。

 私達夫婦の息子になっていただくことはできませんか?

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