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第三話 彼の体のプレゼンテーション

 初めまして、熊ヶ谷岬くまがや みさきと申します。

 見た目は人間ですが、私は人間ではありません。戸籍上は去年亡くなっております。当然身分証明書もありません。

 まずは私が死に至るまでの経緯から説明させていただきます。


 私も去年までは普通の男子高校生だったそうです。

 その日、生前の私はいつもと同じように自宅で就寝していました。その部屋には、どこからか一匹のアリが入り込んでいました。そして、そのアリの牙には鳩の糞が付着していました。寝ている私の体の上をアリは這いずり回り、私の寝返りに刺激され、私に嚙みつきました。この時の傷はとても小さいもので、本来なら命に別状ないどころか、取るに足らないもののはずでした。運が悪かったのは、アリの牙に付着していた鳩の糞が傷口から体内に入り込んでしまったことです。偶然入り込んだ鳩の糞は、偶然にも私の血管を詰まらせてしまいました。脳へ血液を送るとても大事な血管でした。


 翌朝、いつまで経っても起きてこない私を起こしに来た母によって、私の遺体は発見されました。大急ぎで病院に搬送されましたが、私の脳は既に死んでおりました。

 こうして私はある日突然の脳死を迎えました。

 発見が早かったおかげで、脳以外の部位はほぼ無事でした。生命維持装置につながれたまま眠り続けるだけの私に、両親はAIを搭載することを決断しました。といっても人間の脳の代わりを担うにはいささかパワー不足の旧型のAIです。我が家も経済的にゆとりのある方ではありません。最新型の超AIを購入することはできませんでした。


 つまり、両親の購入したAI、それが私です。

 脳を摘出し、AIを移植した際に、人間としての死亡ということになりました。私は人間ではないので、人権を持ち合わせておりません。両親の所持品というのが私の正しい位置づけです。なので、このマッチングサービスに自発的に登録することはありません。

 そもそも私は体を交換したいという願望を持ち合わせておりません。


 このサービスへの登録は、私の母によって行われました。

 つまり、私の母には、息子の体を交換したいという願望があるようです。

 サービス対象が未成年である場合、お見合いの場に保護者が引率することは認められています。私は戸籍上人間ではありませんが、生前の体は十六歳でした。未成年に分類されるものと考えます。

 ですので、次は、私の母親の話を聞いてください。

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