第一話 交換において、とても不利な条件を持つ体
冷蔵庫を開けると、そこには普段あまり見かけない珍しいパッケージの缶ジュースが置いてある。これは、たまたま近所のスーパーで見つけた「リトアニア産のジュース」だ。リトアニアという国が何処にあって、どんな文化を営んでいるのか?そんなことは何も知らない。「リトアニア」という国が存在することすら知らなかったと言ってもいい。
このジュースを買ったのは、ほんのちょっとした好奇心、体験したことのない味を試してみたいと思ったから。ほんのちょっとだけ。
しかし、ジュースを買って家に帰る頃には、そんな好奇心は少し落ち着いてしまう。
もしまずかったらどうしよう?
さっきまで掘り出し物を見つけて少し高揚していた気分も一転、マイナスな思考まで出てきてしまった。
こうして、このジュースは飲まれないまま冷蔵庫に保存されることとなった。
・・・その数日後、僕はこんな体になってしまった。
今の僕には、ジュースを飲むことはできないし、冷蔵庫すらも必要ない。
ただし、あの時生まれたちょっとだけの未知への好奇心、それは今でも失われてはいない。
「リトアニア」ってどこにあるんだろう?
ジュースを見ながらふと、そんなことを考えると・・・
『リトアニアは、ヨーロッパ北部に位置します。バルト海に面する隣国のエストニア、ラトビアと合わせてバルト三国と呼ば・・・』
僕の体はネットに接続されており、疑問を持つと自動的に検索が開始され、知りたくないことをたくさん教えてくれる。僕は通信をオフラインに設定する。
僕にとって、「リトアニア」とは絶対に行くことができない遠い遠い国。ファンタジーの異世界であってほしいんだ。どんな国なのか、暑いのか寒いのか?どんな言語をしゃべるのか?
飲めなくなってしまったジュースを眺めながら、想像に耽る。
おっと、もうこんな時間か。今日はとても大切な日だ。マッチングアプリから通知が来た
のだ。こんな体の僕と会ってくれる奇特な方がついに見つかったらしい。




