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暖炉の前でする話

作者: 川端柳

 ぎぃ、と音を立てて扉が開かれる。

 扉から入った男と、部屋の中で紅茶を傾けていた男の目が合う。暖炉の前のロッキングチェアで寛いでいた男は突然の来客に、おや、と声を漏らした。

「珍しい。君が連絡の一つも寄こさず訪ねてくるとは」

「お前は相変わらずの様子で何よりだ」

「紅茶とコーヒー、他にもあるが、どれがいい」

「……コーヒー」

「お疲れだな。徹夜明けとはいえカフェインの取りすぎは体に毒だ。デカフェにするか?」

「普通ので」

「了解した。適当に掛けてくれ」

 キッチンにあるコーヒーメーカーを操作しながら促され、訪ねてきた男は言葉に従い一人掛けソファへ座った。

 部屋を見渡せばどこかの撮影セットかと思うほどに日本らしくない内装をしている。

 レンガ造りの本格的な暖炉。吸いもしないパイプや趣味の悪い置物がその上に並ぶ。暖炉の前にはロッキングチェアとサイドテーブル。対面には男の座っている一人掛けのソファ。暖炉の向かい側の壁には無駄に開けられた穴。

 明らかに何を意識しているのか大抵の人間なら気づきそうな部屋だ。

「相変わらずのホームズ好きが高じた部屋だな、赤川」

「これでもシャーロキアンの端くれだからね」

 皮肉めいた言葉に笑いながら赤川はコーヒーを彼の目の前に置く。

「で、用件は?」

「最近起きている連続誘拐殺人事件」

「あぁ、警察である君が探偵である僕に相談に来た事件だね、レストレード警部」

「勝手に改名するな。で、その犯人が死んだのは?」

「朝のニュースで見たよ。君の疲労の理由もそれかな」

「あぁ」

 男は目の前に置かれたコーヒーをカップ半分ほど一気に喉へ流し込む。

「死因は自殺? ならここへは来ないよね」

「あぁ」

「僕の推理力を当てにしてきた訳じゃないんだろう?」

「あぁ」

「田村、物ははっきり言いたまえ」

 赤川の笑顔とは対照的に田村の表情は暗い。

「『緋色の研究』を知ってるか?」

「愚問だね」

「今回の犯人、毒を自ら飲んで死んだ」

「『緋色の研究』のくだりは?」

「お前が飲ませたんだろ? 二者択一で」

 紅茶を飲んでいた赤川の手が止まる。

「動機はある。あいつが犯人だと突き止めたが証拠不十分になったこと、お前は納得してなかった」

「それだけ? タクシー運転手は疑わなかったのか?」

「お前、最近抜け毛増えただろ。歳だな」

「DNAか。決定的だな」

 赤川は持ったままになっている紅茶を傍らに置き、にやりと笑った。

「折角だ、田村。らしい台詞で締めてくれ」

「犯人はお前だ」

お読みいただきありがとうございます。


暖炉と言えば名探偵の部屋。

これはあまりに安直な考えでしょうか。


己の正義の為に自ら手を汚し、悪を罰する。法に触れているのだからその時点で悪に成り下がる。

よくある言い回しかもしれません。

しかし、日曜朝の特撮を見れば、まさに暴力によって己の正義を貫く姿がそこにある気がします。


一人殺せば犯罪者、百人殺せば英雄だ。

なんて言葉もどこかにあった気がします。そんな道理が罷り通ってはたまったものではないですが。

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