開幕
君は、殺人者とは、どのようにして生まれるか知っているか。
いや、ただの質問だ。
昔はね、こういった理論があった。
殺人者とは、醜く、悲惨な幼少期を経て、そして歪む人間性が、人を殺めるまでに至る。
間違いとは言えないさ。
君は賢い。
過去の事例が、いくつも思い浮かぶだろう。
しかし、現代では、それだけでは説明のつかない者たちがいる。
恵まれた家庭環境。美しい容姿。そして、誰にも認められた地位や名声。
なのに、殺す。そういった人間もいる。
うん、君なら理解できると思っていたよ。
彼らは、昔はいなかったわけじゃない。
昔からいて、上手くやってのけただけだ。
さて、そんな賢い君に、一つ選択を頼もうか。
君は今から一つの家に向かう。
そうだな、君は配達員だ。
偶然訪ねた家の、扉の向こうで争う声と悲鳴。
思わず君は、扉を開いた。
あぁ、君は優しいからね。
そこには、二人の女性がいる。
一人は、美しく可憐な女性。
もう一人は、醜くくただれた顔を持つ女性。
互いに刃物を向けあい、二人は膠着をしている。
二人の間に割って入ろう。
君は勇敢だからな。
賞賛に値する。
どちらかの女性を抑えるような形で、君は間に入った。
しかし、君を見つめる瞳は、そのうちに光を失う。
あぁなんという悲劇だろう。
君の背中側から、相手が刃物を突き立てたのさ。
よく見ておくといい。
なかなか、そんな光景は見れないよ。
あぁ、美しいじゃないか。
瞳から、もう戻ることのない、光が失われていく。
いいねぇ。いいねぇ。
さて、君の物語を始めよう。
さあ、選んでくれないか。