表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

第8部~難攻した手紙の入手

 あの手紙を処分しようとした一件があってから、再配達されてくる手紙を、母親が固くガードするようになりました。


 あの手紙についての情報は、全く語らなくなったし、相変わらずあの手紙を返送していました。


 ただ、自分は(あきら)めませんでした。


「もう、こうなったら仕方がない!再配達してくる郵便配達員の行動パターンと、母親の行動パターンを調べあげるしかないな…」


 …と、思いました。


 調べるといっても、地道な作業でした。


 郵便配達員がいつ頃あの手紙を再配達に来るのか?


 母親があの手紙を受け取る前に、手に入れられる時間帯は無いのだろうか?


 マンションの郵便受けが見える所で、来る日も来る日もあの手紙を待ち伏せしました。


 すると、やっと分かったのです。


 郵便配達員が比較的まとめて郵便物を持って来るのが、だいたい午後2時頃で、母親が買い物に出掛けるのが午後1時半頃で、帰って来るのが2時半頃でした。


 ただ、その時間に都合よくあの手紙が来るとは限らないのですが、そこに()ける事にしたのです。


 仮に、その時間にあの手紙が来たなら、受け取るチャンスは、午後2時~2時30分迄の、30分しかないのです。


 厳密(げんみつ)に言うと、その30分以内にあの手紙を完全に消去しなければ、計画は失敗に終わるのです。


 自分は、またいつものように郵便受けの見える所で張り込んでいると、何と!目の前であの手紙が配達されたではありませんか!


「よしっ!このチャンス逃してなるものか!!」


 その時の時間が、だいたい午後1時50分だったのです。


 あの手紙を上着の中に(かく)して、うちのインターフォンを何回か押しました。


 返事が無い…。


 母親は、買い物に出掛けているのだろうか?


 鍵を開けて部屋の中に入ると誰もいませんでした。


「もう後には引けない!あの手紙を消去するなら今しかない!!!」


 自分は、居間のガラスのテーブルに置いてあった、ガラスの灰皿にあの手紙を乗せました。


 そして、兄のライターで手紙の角を燃やそうとしました。


「ジッ、ジジジッ、カチッ、カチッ、ボォォォォ」


 何とか火が点きました。


 そして、あの手紙の角を燃やしたのです。


「よっしゃぁ!このまま一気に燃えろ~!」


 手紙は思った以上に激しく燃えました。


 そして、一瞬でしたが火柱が上がったのです。


 その直後…、


「ア、アチッ、アチッ…」


「ヒッ、ヒッ!、ヒャャャァァァ---…」


 …といった、断末魔(だんまつま)の叫びと共に、真っ白い煙のような物が飛び出して来ました。


 それが、亡霊の様に見えましたが、ほんの一瞬の出来事でした。


 これで安心してはいけない!この灰も完全に片付けなければ。


 あと、手紙が燃えたこの臭いも()き消さないと…。


 自分は、燃えカスの入ったガラスの灰皿を慎重(しんちょう)に運びました。


 そしてそれを、洋式便器に残らず流したのです。


「…やったか、これで完全に消去したか?」


 その後は、部屋の窓を全開にして、大慌てで団扇(うちわ)で臭いを拡散させたのです。


 この時点で、母親はまだ帰宅していなかったので、自分の手によってあの手紙を消去する作戦は成功したのです。


 その10分後に、母親が帰って来ました。


 帰ってくるなり言った言葉が、


「あらっ、部屋の空気が()んでいるわね」


「そ、そうかな~、あっ、窓を全開にしたからかな~」


 …と、一応はとぼけてみましたが、母親の表情は平常に戻ったような気がしました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ