第7部~何度も何度も再配達される手紙
この当時の普通郵便は、だいたい3日位で配達されていたと思います。
「3日後に、あの手紙がうちのポストに来なければいいのだが…」
そして、3日後、
何度かうちのポストを見ましたが、あの手紙が配達されていなかったので、帰ってから、
「あの手紙は、今度はうちに来なかったようだね」
と、言うと、母親が、
「あの手紙、またうちのポストに入っていたから、私が郵便局の窓口に直接持って行ったわよ」
と、満足そうに言ってきました。
それを聞いて、ガクッとしました。
「電話の次は手紙攻撃かよ~勘弁してくれよ~」
その更に3日後に、またあの手紙が来ていたのです。
あの手紙を、うちのポストから受け取るのは、時間帯的に母親がほとんどで、その度に御丁寧に郵便局の窓口に持って行っていたのです。
それでも、何度も何度もうちのポストに再配達されるだけでした。
「おかしいわね~。この手紙は何でいつもうちに来るのかしら?」
母親は、再配達を依頼している郵便局を他の郵便局に変えたり、ポストに投函したり、隣町のポストに投函したりしました。
しかし、何度手を変えようがあの手紙はうちに来るのです。
ある日の事です。
うちに自分だけ居た時に、電話が掛かってきたのです。
受話器を取ると、小さな声で、
「フゥー、フゥー、フゥー、フゥー、フゥー…………」
不気味な笑い声?みたいなのがしました。
「あ、あの~何の用件ですか?ふざけているなら切りますよ!」
…と、言うと、
「そちらに、私のコウヘイは来ていないでしょうか…?」
「はぁ~、何言ってんですか?」
しかし、その時自分は、もの凄く嫌な予感がしました…。
「ま、まてよ!まさかあれが有るのでは…」
恐る恐る、居間の方を見渡すと、テレビの前のガラスのテーブルに、あの手紙があるではありませんか!!
「う、うわぁぁぁ~~~!」
と、叫んで電話を切ってしまいました。
「この手紙を早くこの家から出さないといけない!」
それに、さっきの電話の内容だと、この手紙はコウヘイ君そのものなのか…?
自分は、血の気が引くのを我慢して、手紙を持って急いで部屋を出ました。
「とにかく、この手紙を早々に処分しないといけない!」
マンションのエレベーターを降りると、すぐに目についた物がありました。
それは、一階の集合ポストの下にあった、ゴミ箱でした。
そこには、ポスティングされた要らないチラシが、大量に捨ててありました。
自分は、ゴミ箱のなるべく奥深くに隠すように、あの手紙を捨てたのです。
ホッとしたのも束の間、その数時間後に、あの手紙を持って母親が帰って来たのです。
「この手紙を捨てたのは、お前か--!」
「管理人さんがゴミ箱のゴミを片付けている時に、この手紙が出てきたんだそうよ、誰がこんな事を!」
自分はしらを切り続けましたが、かなり怪しまれました。
「クソッ!管理人の奴!余計な事しやがって~!」
「チラシのゴミなんかいちいちチェックしてんのかよ!」
この時、自分は固く決心しました。
あの手紙は、必ず自分が消去しよう!
…と。