第6部~ポストに届いた一通の手紙
家に帰るとすぐに、黒く固まった血が付いた汚れた手を洗いました。
しかし、なかなか汚れが落ちない…。
半泣き状態で、何とかして黒っぽい汚れを落とすと、先程の手紙の事が気になりました。
そして、玄関の鍵置き場近くに置いた、手紙を見返しました。
何か表面が黄ばんでいて、古臭い感じでした。
「この手紙は、一体いつ出されたのだろうか?」
…と思い、消印を見ると、
何と!消印が5年前の1985年になっているではありませんか!!!
「えっ?何で今頃うちに来たんだろう?」
放心状態で玄関にいると、
「ビリッ!ビリビリ…」
紙が破れる音がしました。
んっ!どこでこの音がしているんだ…?
「ジッ、ジジジジッ…」
どうやら、上の方から音がしました…。
扉の内側の左上には、神主さんから頂いた御札が貼ってあったのですが、それを見た時には既に半分位切れていたのです。
その後、御札の右側から左斜め下に向かって、全く風も吹いていないのに、
「チッ、チッ、チ-ィィ…」
カッターで切ったような切り口で、一気に斜めに切れたのです!
御札の下側のセロハンテープが、乾いてかなり浮いていたので、
ヒラヒラと、下側半分だけの御札が自分の足元に落ちてきたのです。
自分は、かなりの恐怖を覚え、そこにヘナヘナ~と、座り込んでしまいました…。
うちの中に貼ってあった、最後の1枚の御札が破られてしまった!
これで、結界というか厄除け効果が完全に破られてしまったのか?
と、不安になりました…。
それから、約1時間後に母親が帰ってきました。
自分は興奮した調子で言いました。
「今までうちが電話で苦しめられていた、コウヘイ君宛の手紙が来ているんだよ!いたずらにしても酷すぎるでしょう!早く中を開けて見てみようよ!!」
すると、母親がイラつきながら言いました。
「何言ってんのよ!人様の手紙なんか開けられる訳ないでしょう!!」
「でも、消印が5年前だよ!この手紙絶対おかしいよ!とにかく父親に見せてみようよ」
と、自分が語気を強めて言うと、
「手紙が来なくて、コウヘイ君が困っているかもしれないじゃないの!!!」
と、母親は怒鳴り返しました。
しばらくこんな感じで言い合いになりましたが、母親はこの手紙を、何故か必死になって擁護する発言ばかりするのです。
そして遂に、
「それ貸して!郵便局に行って、もう1回配達してもらうから!」
母親は、自分の右手から手紙をひったくって、郵便局に走って行ったのです。
その夜、自分は父親に御札の事と手紙の事を話しました。
すると、父親は渋い顔をして、
「もっと効力の強い御札を探してくるから、それまではよく注意しておいてくれ」
…と、言っていましたが、インターネットも普及していない時代に、果たして効力の強い御札がすぐに見つかるのかどうか?
それと、コウヘイ君宛の電話に対して、軽いノイローゼ気味になった事もある母親が、コウヘイ君からの手紙に関しては、やたらと擁護する様になったのに違和感を感じました。
そして、あの手紙がどう再配達されるのだろうか?
いっそ、迷子郵便にでもなって、2度と戻って来ないで欲しいな…
と、切実に思いました。