第4部 断ち切りたい不審電話
引っ越してから2年目になり、あの不審電話が減るには減りましたが、それでも月に3~4回はあったのです。
一時期の異常なまでの受信は落ち着いたものの、解決まであと一押しではないだろうか?
と、一家で思い始めました。
その時、父親が言いました。
「来週、神主さんに来てもらって、お祓いをしてもらう事にした」
「これで、大丈夫じゃないかな?」
「だから、来週までに部屋を片付けとけよ!」
タイミング的には、
「ちょっと遅いんじゃないの~」
とは思いましたが、解決への期待は膨らみました。
あの不審な電話が掛かるようになってから、電話に出ない事が多くなってしまったのですが、中には親戚や友達からの電話もあった訳で、
「お前のところに電話しても、いつもいないじゃないか!」
…とも言われていたので、それこそ神頼みしかなかったのです。
翌週に、神主さんがうちに来ました。
各部屋を入念にお祓いした後に、御札を3枚頂きました。
「部屋の中の指定した方角に、御札を3ヶ所貼っておく様に…」
…と、言って帰られました。
3枚の御札の内の1枚を、玄関の扉の内側に貼りました。
あとの2枚は、居間に1枚、寝室に1枚貼りました。
「これで、不審な電話が解決してくれればいいな…」
一家全員がそう思いました。
それから、3ヶ月間は全く不審な電話が掛かって来なくなりました。
「やはり神主さんの力は、甚大だな~」
…と、思っていたら4ヶ月後の夕方に再びあの悪夢が再来したのです。
「小学校5年生のコウヘイ君はいますか?」
その時は、自分が電話に出ました。
父親は、すぐに察知してこう言いました。
「効果は3ヶ月って事か…」
「それにしても短いな…」
その後、一家は言葉もありませんでした。
引っ越して1年が過ぎたということは、小学校6年生だった弟は、中学1年生になった訳です。
普通に考えると、小学校5年生のコウヘイ君とやらは、小学校6年生になっていないとおかしいですよね。
だから、この電話が掛かって来たときに、ものすごい違和感を覚えました。
「幽霊は年を取らないということか…」
「まあ、それならば分かるけど…」
それにしても、どうしたら解決出来るのだろうか?
その後は、不審な電話は月に2回程度になったし、慣れもあって、気にしなければ生活には影響ない位になりましたが、何か引っ掛かる感じが拭えないな…と、思いました。
それから数日後に、再び自分は黒塀で2階建ての家に行きました。
ここの住人だった方は、自殺をしたのだろうか?
疑問を払拭する為に、その家の入り口の引き戸を開けてみる事にしました。
「ごめんくださ~い」
返事は無い…。
辺りを見回して、誰もいないのを見計らって開けてみました。
「ガッ、キュルキュルキュルキュル…」
長い間、開閉していなかったのだろうか…少し引っ掛かる感じでした。
1歩入ると、すぐに異変に気付きました。
ゴミの仮置き場だろうか?
入ってすぐ右側に、雨よけの薄い波板の屋根がありましたが、それがバリバリに割れていたのです。
そして、波板の細かい破片が散乱していたのです。
自分は、状況を察知してすぐに引き戸を閉めて立ち去ろうとしました。
その時です。
隣の住人と思われる方が、話しかけてきました。
「ここに以前住んでいた人が蒸発してから、何年か経つけどそれから幽霊が出るって近所で噂になったんだよ」
「その隣で商売やってるウチは、それから本当に売れ行きが悪くなっちゃったよ…」
虚ろな目をして、落ち込んでいる感じでした。
そして、冴えない顔をして、去って行きました。
自分の一家でも、けっこうな精神的な被害がありましたが、他の所でも被害が出ていたんだな…。
…と、思いました。