第2部~鳴り止まない電話
今の固定電話は電子音が主流ですが、黒電話はベル音なので、不審な電話が連続で掛かってくると、それはもう精神的にかなりのダメージを受けます。
そもそもこの当時は、携帯電話も普及しておらず、年代でいうと阪神タイガースが球団史上初の日本一になった年と言えば、昔ながらの野球ファンの方は分かると思います。
電話を取ればあの中年女性の方が、
「小学校5年生のコウヘイ君いますか?」
という、奇妙な問い合わせを繰り返すばかりで、電話に出るのが恐ろしくなりました。
電話を取らなければ、どうなるかというと、
「ジリリリリリリン、ジリリリリリリン、×10回、チーン」
やっと切れたかな?と思っていると、30秒も経たないうちに、またあの響き渡る呼び出し音が鳴り続くのです。
「ジリリリリリリン、ジリリリリリリン、…×10回」
…と、何度も何度も連続で掛かってくるので、頭がおかしくなりそうでした。
そうなったら、電話機に布団をかけるか、自分が布団をかぶるかでした。
いっそ、電話線を抜いてしまおうか!とも思いましたが、それはNTTの方から止められていたので、やむ無くこんな現状になったのです。
父親は、苛立ちを隠せずに、
「NTTに行って、この家の住所を聞き出して来る!!!」
…と、言って出掛けて行きました。
しかし、NTTの対応は、個人情報になるので教えられないの一点張りでした。
それでも、父親は何度も通って聞きにいきました。
すると、直接的には言えないが、ヒントとしてごく狭い地域を教えてもらえました。
「ようし、やっと探す手掛かりが出来た!」
「こんないたずら早く止めるように、ガツンと言ってやるんだ!」
…と、行って再び出掛けて行きました。
その2時間位後に、父親が深刻そうな顔をして帰ってきました。
「あの家の場所は何とか特定出来たけど、どうやら簡単に解決出来そうじゃないな…」
「あと、俺以外この件に首を突っ込むのは止めてくれ!」
とも、言ってきました。
その時、自分は直感的に、
「この問題は、霊感のある父親か自分が解決するしかないな」
…と、思いました。
父親が日中の電話に出るな!とは言っていたものの、母親は出ていたようで、そのせいで軽いノイローゼ気味になっていました。
次の日、家の電話の下を見ると、父親がNTTに行った時に書いたメモ書きが落ちていました。
自分は、それを見た時に、何としてでもその家を突き止めたいと思いました。
ヒントとなる地域で、同じ名字の家を探しに行きました。
だいたい、2時間位さまよったところでやっとその家を探し出しました。
探してみると、引っ越したマンションの案外近くだったのです。
2階建ての古臭い黒塀の家でした。
意を決して、その家のインターフォンのボタンを押してみました。
しかし、誰も応答に出ないのです。
「クソッ!やっと探し当てられたのに…」
このままでは癪なので、その家が見下ろせる所で待つことにしたのです。
それからどれくらい待っただろうか…?
再び、インターフォンのボタンを押そうと、その家の前に行った時、ふと、誰かに声を掛けられました。
「この家には誰も住んでいないよ」
「それどころか、2階の窓から幽霊が出るって噂だよ…」
どうやら、その家の隣の住人と思われる方でした。
「えっ…そんなバカな!」
ヒントの地域を隈なく探しても、同じ名字はこの家しか無いというのに…。
どうやら、この家をしばらく調べるしか無いな…と思いました。