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爆縮と体温の機知(8)

完熟

それは卑猥な柑橘系

手に入れたなら

それすら小さなことになる

なめらかに滑る指先は

たまに爪を立てたい願望に駆られ

何も無い場所を

破壊という衝動で

形創りたいとさえ思う

必要な物が無い完成形は

不意に弾けるから

三次関数の図を型取り

肉体が表現に入るのである

曲線に美があるなら

それは数式と変わらない


人の香りの抜ける鼻は

生物学と化学が混じり合って

脳内の鍵を開け

閉じ込めている先を

見せようとしてくる

知ってはならない感覚を

知りたいから人間になった

感情の届かない場所が

感情で作られているようだ

空間の時間が遅くなれば

集中し始める

我に返ってはならない

自我が要らなくなるほど

生物に近づき

混ざり合うほど

化学に近づくのだから

人肌の温もりは

実験室と変わらない


繰り返しの隙間に

本当の顔を互いに見る

普段の棘も無く

何かを着飾ることも無い

小さな個体の人間であり

何も考えずに向き合える

あの他愛の無い話が

世界で一番

人間らしい対話である

慣れが無い

明日の関係は分からない

初まりと終わりがあっても

認識などせず

スイッチの場所だけが見える

目的も目標も

そこには無くて

纏っている裏側も関係なく

意思という意識よりも

次をねだる自分を走らせては

競争しているかのようでいて

純粋な譲り合いが

ルールであるかのように置いてあり

何本もの針に

一度も失敗せずに糸を通すのに近い


互いの匂いが混ざり合い

よく分からない香りになって

出来上がった物は何も無い

時間だけを消費したように思うが

脳内には

ちゃんとご褒美がある

世界で一番

人間として優しい時間である

あれは柑橘系の果物に近い

完熟して香り立ち

皮の中に内包されていても

表に出して食すことは無い物だ

そこにあるだけで

何かを許してしまえるような

何かを始めてしまえるような

安心と信用を混ぜた

得体の知れない飾り物でもある

あれがずっとあるなら

継続されていくだろう

あれが腐ってしまうなら

離別していくだろう

状態は常に完熟である


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