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第92話 同好の士との会話

俺も心を落ち着かせるハーブティーを飲みながらダンディ高橋氏と無効の世界の記憶をすり合わせてみることにした。

すると出るわ出るわ、良くわからない細々とした相違点の数々。


アニメを例に出すならば、

国民的ネコ型ロボットが国民的犬型ロボットだったり、

嵐を呼ぶ5歳児の名前の名前がちょっと変わってたりなど、細々としたところがちょっとずつ違う。

それでいて大枠は一緒だったりするので軽く混乱しそうだ。


世界史的に言えばさほど変わりはない、少し月日が変わる程度で大局に影響はない感じか。

どうやら俺とダンディ高橋氏のいた世界は世界線が多少ずれた平行世界のように感じられる。


「いやいや、佐藤君。

 頭の中から忘却しているのかもしれないが、俺は数百年は前にこっちの世界に来ているんだよ?

 そこを忘れてもらっちゃ困るよ」


「それについてはさっき話したでしょう?

 高橋さんとの会話では高橋さんが時空を超えてここに召喚されたのではないかという懸念点が払しょくされません」


「そうすると何かい? 僕はジャンパーだというのかい?

 それこそ荒唐無稽じゃないか。

 むしろ時間の流れを一定として僕たちの世界には数百年の差があると考えたほうが妥当だよ」


確かにそうかもしれな……ん?


「どうしたのヴェルさん?」


「どうかしたのかい、マイハニー?」


高橋氏も俺と同様に服を引っ張られたのか俺と同じく奥方に尋ねていた。


「難しい話をしているようなんだが、我輩にはちんぷんかんぷんで……その、置いてけぼり感を感じているというか……」


「私もよ、マイダーリン。

 いつもはのほほんとしているあなたが色んな良くわからない単語を使って会話しているなんて、何か悪い物でも乗り移っちゃったんじゃないの?」


俺たちは顔を合わせて笑う。


「ごめんごめん、ヴェルさん。

 いやぁ、こういうオカルトな会話が楽しくて」


「こっちもごめんよ、マイハニー。

 SF……この場合の定義は少し不思議、かな?

 この手の話題は話しているとすっごい楽しいんだ。

 なんというか絶対に正解は出てこないんだろうけど、摩訶不思議アドベンチャーな感じでね。

 俺達ったら当事者だし」


俺も高橋氏の言葉にうなずく。

当事者な上、あっちの世界でもヴォイニッチ手稿やその手のヘンテコオカルトの記事を見るのが好きだった。

そんな当事者同士が会えば不思議と同好の問題で華が咲いてしまうものだ。


「それにしても多元宇宙論とは驚くよね。

 明らかに俺たちの邂逅はそれを物語っているよ。

 2人とも同じ国名を持つ日本から来たというのも一考に値しそうだ」


「確かにそうですね。

 地政学的に同一の価値観を持つ国が平行世界にもできてしまうのか、それとも国家というのは既定路線上にある通過点でこの程度の差では覆せないのか」


「知っているかい?

 俺たち異世界人は圧倒的に日本人の割合が多いんだよ。

 先ほどの話だと世界の人口の割合から言えば決して多くないはずなのに」


「人口の割合で言うならば中国人かインド人が多そうですよね、でもなぜか日本人が多いなんて……やはりワームホールかそれに近い、神秘的には霊道のようなものが日本にあるのか……。

 ネットで見つけた記事にいは北海道が神様の最終防衛線であるというものもありましたね」


「おっとしぞーかっ子としてはその言葉はいただけないね。

 そこはやはり霊峰富士こそが砦であると考えるべきじゃないかな」


「ぬぬぬ、数百年経っても郷土愛は枯れていないということですか」


「ふっふっふ、異世界にこようと日本人が変わらず米と醤油と味噌を求めるように郷土愛というものが枯れるなんてことはそうそうないものさ」


2人で加速する高尚ぶった会話に充てられたヴェルさんたちは頭を揉みながらため息をつきつつ、ハーブティーを飲み干していた。


「男っていつまでたっても子供ねぇ」


高橋氏の奥方、童心を忘れてしまっては何事も楽しめなくなる大人になってしまいますよ?

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