第91話 オタクの嗜み
なんとか風邪が直りました。
しかし倦怠感に続き、関節痛と筋肉痛を伴ってくる風邪なんて初めて体験しました。
_:(´ཀ`」 ∠):
さて、笹茶を出してまったりムードになったところで、1人1人お話を聞きに行こう。
あとみんな料理より笹茶で驚くのやめてもらえませんかね?
なけなしのプライドがズタズタになりすぎて、もう死体蹴り状態なんですけど?
「そう言うなよ、俺達日本人にとってお茶と言えば緑茶だろ?
まさか、笹がお茶として出てくるなんて思わなかったからな」
そう言ってハハハと笑うのはジルベルトの義兄の高橋さん。
下の名前は衛というらしい。
高橋さんは日本人らしく黒目黒髪でやり手のイケメンビジネスマンが如く髪もしっかりセットされ、スタイリッシュにスーツを着こなしていた。
「思い出すなぁ……こっちに来てすぐの頃を。
俺は自分のスキルを自覚してすぐに山奥に定住してお茶の木を育てたもんだ」
「食べ物じゃなくてですか?」
「食べ物は奥さんが届けてくれたからなぁ」
「やぁん、もうあなたったから♪」
奥さんのドラゴンがデレデレしている。
ジルベルトに聞いた話だと実力を見せるために手ごわい獲物を見せびらかしに通っていたそうだけど……。
奥さんの瞳の奥が光るのが見えたので、話題を切り替えよう。
「それより悪かったなぁ、突然押しかけて。
ジルからあんたの話を聞いてどうしても会いたくなってな」
「はぁ……」
生返事で返すものの、どうも要領を得ない。
何か知りたいって事なんだろうか?
「俺もこの世界にやってきて数百年……きっと時代が移り変わって色んな革新が起こった事だろう」
数百年前と言えば、江戸時代とか戦国時代とかだろうか?
確かにそこから比べればかなりの技術革新が起こっているな。
「そこで教えて欲しいんだが、スマホの次ってどんな端末が流行ったんだ?」
……ちょっとこのダンディ高橋は何を言っているんだろうか。
「俺が生きていた時代でも携帯電話はめっちゃ進化してたんだ!
きっと空間ディスプレイなんかも標準搭載されたすっごい未来ガジェットに進化してるんだろ?
もしかして、もうアンドロイドとかも実用化されてるのか?
いいなぁリアルSF!
ファンタジーも嫌いじゃなかったんだけどさ、やっぱりSFも一大ジャンルの1つじゃん?
やっぱり日本人達がどんな進化を遂げたのかとかすっごい気になるわけよ!
スーパーロボットの1つぐらい実用化したんでしょ?」
興奮するダンディ高橋の言葉を聞き流しながら俺は混乱する頭を何とかなだめてシンプルな答えを頭の中にはじき出す。
なるほど・ザ・マルチバース。
特撮スキーには馴染み深いこの単語をまさかリアルで使うことになろうとは……。
とりあえずダンディにはハーブティーを飲んで落ち着いてもらおう。




