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第76話 土器(素焼き)作り

土器造りに欠かせないのは何と言っても粘土だ。

まずは粘土層を見つけないといけないわけだが、結構あっさりと見つかった。

それはヴェルフールの湯を作った時に出た土砂の中だ。


どうにもこの世界も俺のいた日本同様、深さは違えどどこにでも粘土層があるらしい。

そしてお風呂が出来てずいぶん経ってそのことに気づく俺……無知は罪である。


「普通の土とは違うのか?」


「賢者の杖でそうだと出てるから……っていうと味気ないね。

 ヴェルさん、ちょっと手を湿らせてからこの土を潰してみて」


「……なんだかちょっと粘つくのだ」


「それが粘土だよ。

 今度森の川べりを散歩してみようか、あんな風に地層になっている粘土層が見れるはずだよ」


俺は見える範囲にあった切り立った崖を指差した。


「あれも粘土か?」


「ん~……たぶん違う……かな?

 地層ってだけ」


「ふむ、また夜になったら地層について教えてくれ」


「おっけー」


文字の一件もそうだが、ここに暮らしてから好奇心が刺激されたらしいヴェルさんは夜、寝る前になると俺にこうして教えを乞う事が増えてきた。

ヴェルさんは野生で生きてきた時間が長くとも地頭が良く、何でも知識を吸収していくので教える方としても結構楽しい。


1つ残念なのは俺の頭が悪いせいで中学生程度の勉強しか教えられない事かな。

俺の頭が良かったらもっと教えられるのにと軽く凹んでしまうのは内緒だ。


話を戻して、まずはこの粘土に水を加えて練って一塊にする。

次は作業台である石板に灰を敷いて粘土とくっつかないようにしたら早速成形だ。

ろくろなんてないからもちろんピンチポット。

練っている間に固いものや乾燥しているものは省いたのでストレスなく作業できる。


形を作っているとヴェルさんやコダマも同じように粘土で何かを作り始めていた。

俺の方を見ながら作業しているようでみんなぐい呑みの形になっているのがちょっと面白い。


亀裂を滑らかにして成形がある程度終わったらたき火のそばで乾燥させる。

ある程度乾いたら今度はたき火の灰の上にぐい呑みを逆さまに置いて器を覆いながら枝をくべる。

どうやら木で完全に覆う事で焼き物を熱の衝撃から守るらしい。


これは全く知らない知識なのできっとこの世界の人の知識だろう。

ヴェルさんにお願いして火に風を送ってもらいながらじっくり焼成されるのを待つ。


「何故火に風を送るのだ?」


「正確には酸素を送っているんだよ。

 酸素っていうのは火が燃えると消費される元素ね」


「元素……鉄と同じか?」


「元素の仲間ではあるかなぁ……う~ん……説明が難しい」


俺は元素記号を思い出しながらヴェルさんにとりあえずの説明をした。


「元素とはこれしかないのか?」


「俺の世界で見つかっているのはこれだけかな?

 最後に新しい元素が見つかったのが確か10年くらい前、テネシンって合成元素だったかな」


「……合成元素?

 頭が痛くなってきたのだ」


「ここら辺は一応学校でも習うんだけど、あくまで触りだけで深く研究するのは専門の人だから仕方ないよ。

 重点的に覚えるなら酸素をおすすめするよ。

 生きていく上では極めて重要な元素だし」


「そうなのか?」


「そう。

 あっ、焼き物が真っ赤になってる」


「なぬっ!?」


そんな雑談をしつつ焼きあがった器は多少ボコボコではあるものの割れることなく見事に焼き上がった。

俺は調子に乗って調理用ポットや皿作りまで手を出してみたが、ポットはともかく皿は薄く作りすぎたせいか、割れてしまった。


そうそう上手くいくもんじゃないか、とため息をついているとふとコダマたちが目に入る。

あ、君たちが作ってたのってぐい呑みじゃなくて帽子だったのか。


ふらふらしてるけど大丈夫?

あと1つだけ角付きがあるけど……なるほどおしゃれか。

どうにも隊長機のあれにしか見えないけどまぁ良いか。


ヴェルさんも自分が作ったぐい呑みを眺めている。


「形はうまくいったが、どうにも色がな……」


……なんだか陶芸家のような事を言っているけど、もしかして窯とか用意したほうが良い感じですかね?

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