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第75話 紐づけられた記憶

紐付けられた記憶というのは面白いもので、直接的に関係が無い記憶だったとしても、ふとしたきっかけで色々と思い出してしまう。

例えば学生時代の記憶がそうだ。


ヴェルさんに文字を教え始めてから学生時代にあった様々なことを思い出すようになっていた。

学生時代といっても小学生のときの記憶である。


“そういえば学習帳を使って文字の書き取りをしたな”


とか


“授業がつまんなくてよく落書きをしたな”


とか。

実に他愛ない記憶ではあるが記憶が紐付けられて、


“どんなことを習ったんだっけ?”


と考えるようになり、


“国語算数理科社会”


を思い出して最終的に、


“歴史”


の授業を思い出した俺は、


「ほわああぁぁぁっ!!?」


という奇声を上げた。

思いっきりヴェルさんには心配されたが、別に前世を思い出したとかじゃない。

“縄文土器”について思い出しただけだった。


古代でも作ることの出来た“縄”と“土器”。

それなら俺にも作ることが出来るのではないだろうか?


そもそも焼き物をするには窯やら漆やら色々と用意しなきゃいけないと考えていた自分。

記憶と紐づけて思い出したそれらに対して、奇声を上げてしまうのも仕方がないこと……恥ずかしいのでそう考えておこう。


「それは何に使うものなんだ?」


土器や縄の説明を受けたヴェルさんが多少さっきの俺の様子を心配しながら尋ねてくる。


「え、食器を作ったり、肉を吊るしたり」


「蔦と竹じゃダメなのか?」


……確かに。

たまにヴェルさんが獲ってくる魔物の蔦は凄く使い勝手が良く、鹿や猪を吊るしてもびくともしない。

竹で作った食器類も種類が増え、今やお椀やスプーン、フォークなんかも完備している。

まぁ全て鍛冶の神である変態が旋盤や鑢といった大工道具を届けてくれたおかげなのだが。


ちなみにジルベルトの一件以来、姿は見ていない。

声の感じからの予想ではあるが、大工道具はサバイバルナイフを届けてくれた時と同じ人が届けてくれている。

恐らくあの変態の従者だろう。


更にはジルベルトからの連絡を受け、竹を使って畑の柵の準備や柄杓、手桶も作ってある。

籠や笊も作ろうとしたら俺ではうまくいかず、杖で動画を見せたらヴェルさんがすんなり作れたりもした。

そのおかげで採集も楽になり、ここで生活を始めた時よりもさらに生活が豊かになっている。


確かに生活のために土器……いや素焼きを作る必要はないかもしれない。

だがあった方が良いと考えてしまう。


……なるほど。

俺は更なる豊かさを求めていたわけか。

俺は1つうなずくとヴェルさんに言う。


「しゅみです」


「お、おぅ……」


ヴェルさんにちょっと引かれてしまったような気がするがめげずに頑張ってみよう。

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