第74話 小竜便
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小竜便。
それはリトルドラゴンという小型のワイバーンを利用した竜王国ではメジャーな郵便配達サービスである。
伝書鳩とは違って革製の頑丈なバッグを吊るし、専用の帽子を被るその姿は元の世界の郵便屋を想起させる。
「ということはそれは手紙か?」
「そうだね」
ヴェルさんが興味深げに先ほど俺が受け取った手紙を覗き込む。
リトルドラゴンを見たときは少し驚いたが、手紙を渡した後にコダマ達と遊んでいるところを見ると気性も穏やかなようだ。
……うん、ちょっと撫でようとして噛まれたけれど気にしないことにしよう。
さて肝心の手紙だが、差出人はジルベルトで文字も日本語で書かれている。
無駄に丸文字なのだが、もしかしてイケメンフェイスな上に少女趣味なのだろうか?
手紙の内容は俺が頼んだ品が全て手配出来た事とそれを届けるために1月後に伺う旨が書かれていた。
手配した品の中には植物の苗等もあったので、彼が来るまでに畑を作っておかねばならないだろう。
あと最後の1枚は白紙だったけど、もしかして返信しなきゃいけないのかな?
リトルドラゴンが一向に帰る素振りを見せないのでそうっぽいんだよね。
俺たちインク持ってないんだけどなぁ……。
仕方がないのでナイフを使い、切り絵の要領で羊皮紙の真ん中にカタカナで“ハイ”とくり抜き、遊び終えたリトルドラゴンに渡す。
リトルドラゴンは一度伸びをしたあと、クエッ、と一鳴きした後に飛び立っていった。
「スズキ」
見送ったあと、ヴェルさんが何故か俺の服の裾を掴んで上目づかいをしてきた。
不意打ちを喰らってちょっとたじろぐ。
「ど、どしたの?」
「文字を、教えて欲しいのだが……」
「え、でも俺が教えられるのって日本語だけだけど」
「それでいいのだ。
いや、それが良いのだ」
「……?
別に良いけど」
それから毎日少しの時間を使ってヴェルさんに日本語を教えることになった。
ジルベルトに手紙でも出したいのかな?




