第73話 アルケニーの帰宅と異世界人ブランド
いつのまにか10万文字を超えていたことに戦慄を覚える私。
ちりつもってスゲー
( ˙◊︎˙◞︎)◞︎
「ということがありまして」
「ふーん」
夜。
アルさんがいなかった間に起こったジルベルトとのエトセトラを聞いた彼女の反応はとても薄かった。
「竜族自体はさほど珍しくもないわ。
それよりもこれを見なさいッ!!」
そう言いながら見せてもらったのは何の変哲もない服だった。
あ、いや。
「これYシャツですか?」
しかも白Y。
ボタンはどうやら何かの石で出来ているようだが、懐かしささえ感じてしまう。
「そうよッ、やっぱりあんたも知っていたのね!?」
「ふむ、スズキの世界の服か……アルケニー、着てもいいか?」
「ええっ着心地を教えてちょうだいッ!」
OKを出されたので早速その場で着替えるヴェルさん。
ジルベルトがいるときは視線を気にしている風だったのに……。
仕方なしに俺はヴェルさんの方はあまり見ずにアルさんと話を続ける。
「町じゃミシンが流通してるんですね」
素人目でもわかるほど均一された縫い目だったので、そう思ったのだが、アルさんは目を見開きながら、身体を俺の方に乗り出してきた。
「この服の製法を知っているのねッ!?」
あ~……この反応はあれだ。
「異世界人の作った村で作られたものですか、あれ」
「そこまでわかるとは……やはりあれは異世界の技術なのね」
「そうですけど……もしかしてミシンが出回っているわけじゃないんです?」
「そのミシンというのはわからないけど、これほど均一に縫える道具なんてなかったわね。
ちょっと杖を使って、あんたの世界のそのミシンってやつを見せなさい」
「アルケニー、スズキに無理強いするな」
そう言ってヴェルさんは着替えが終わったのか座りなおした。
「ぶっ!?」
その姿を見て俺は鼻元を押さえながら首を180度回転させる。
「ん、どうしたスズキ?」
ヴェルさんが尋ねてくるが、ごめんなさいちょっとあの……ちょっとですね。
アルさんもそれに気づいたのか助け舟を出してくれた。
「あ~……それよりヴェルフール……着心地はどう?」
「我輩はあまり好かんな。
胸周りがどうも安定せん上に息苦しさを感じる」
「……そうでしょうね」
アルさんがうんうんうなずいている。
そうなのだ、Yシャツを着ているだけなのだが、今のヴェルさんはものすごく艶やかになっていた。
所謂、裸Yシャツという恰好なんだけど。
ボタンがぱっつんぱっつんでリアル乳袋状態になっている上に、何がとは言わないが、胸部装甲の部分に2つのボタンが浮き出ている。
いやあのね、ヴェルさんの裸は多少見慣れましたし、普段もヴェルさんは露出度が高めな服を着ているんですが、これはヤバイ。
別ベクトルのやばみを感じる。
何あれ、リアル裸Yシャツってここまで破壊力がある物なの?
結局ヴェルさんはYシャツを脱ぐとアルさんが買ってきた厚手のローブ型の服に身を包んだ。
それはそれで裸ローブという新ジャンルの組み合わせではあるんだけど……なんというかビジュアル的なエロさは全く感じない……。
俺は複雑な心境になりながらアルさんにミシンの動画を見せつつ、俺の世界の衣服事情について簡単に解説した。
ふと、膝に座っているヴェルさんが俺に言う。
「ふふ、これで寝るときはお揃いだな♪」
「……そうだね」
ときめきすぎて死ぬかと思った。
オッサンのはずなのに精神的に余裕のない自分が恨めしい。
ここまでの読了ありがとうございました。
ジルベルト編ということで、ここで一区切りとなります。
今回も登場人物を一度まとめたあと1週間後あたりから、といきたいところですが今月は土日にみっちり予定が入っているもので、ちょっと変則的に17日から再開して平日のみの更新をしていきとうございます。
皆様よろしくお願いいたします。
 




