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第68話 真夜中の対談【ヴェルフール視点】

今回はオッサンが酔いつぶれて寝ているのでヴェルフール視点でお送りいたします。


※追記

見返したら流石に乱文が過ぎた為、少し改稿しました。

多少見やすくなっていれば幸いです。


我輩は偉大なるヴェルフール。

長年自分の事は図体のでかい狼だと勘違いしていたがフェンリルという半神……らしい。

なにやら大仰な呼び名ではあるが、我輩にとっては些細なことだ。


では我輩にとっての重大な事は何かと問われれば、至極簡単。

隣で眠るスズキという人族、彼に関わる事全てが我輩にとっては重要な事だ。


先ほどまでいびきをかいていたスズキは今は静かに眠っている。

まぁ消音をかけて静かにさせたのは我輩だ。

いくらスズキと言えども、許容できないこともあるのだ。


とはいえ、昨晩までの彼はいびきを掻いていなかったので、恐らく寝る前に飲んだ酒のせいではないかと我輩は愚考している。

いびきに関しては明日、スズキに聞いてみるか。

何か教えてくれるだろう。


さて、我輩が眠ったふりをしているのには理由がある。

それは現在、窓から忍び込んできたロープを操っている者が原因だ。

ロープはまるで蛇のようにスズキの杖に巻きつくと器用に窓の外へと誘っていた。

魔法はあのような事も出来るのか。


それにしても、存外早く行動を起こしたな。

我輩は起こさないようスズキの腕を解くと静かに外へ出た。


「真夜中だというのに眠れないのか?」


驚きもせず、杖を握る人影はこちらに振り替える。

ジルベルトなるドラゴンだ。

スズキは知らないことだが、この森にはごく稀に杖を狙った人族がやってくる。

これまでは我輩が助力を求めると襲ってくるか騙し討ちしてくる輩ばかりであり、望まぬ戦いをしたりしていたが、こ奴もその類の賊だろうということは察していた。


「これはヴェルフール様」


ドラゴンが丁寧にお辞儀をする。

“様”等とつければ我輩が喜ぶと思っているのだろうか?

いやこやつはドラゴン、我輩を小馬鹿にしているのかもしれない。


「貴様は闇討ちをしなかった。

 話ぐらいは聞くぞ?」


「……少々驚いたね。

 ヴェルフール大森林の長は凶悪な魔獣だと聞いていたんだけど」


心外な。


「火の粉を払っただけでその言われようはさすがに腹が立つな」


「僕達も一緒さ。

 ドラゴンの素材は高く売れるとかで王国以外じゃ襲われることも多いんだ。

 そしてそう言った賊を返り討ちにすると何故かその家族に恨まれるんだ」


「難儀な世界だ」


「同感だね」


「して、ドラゴンよ。

 前の我輩なら、とある望みを叶えてくれるなら、そんな杖なぞくれてやるところだったが、既にその望みはスズキによって成就した。

さらにあやつはその杖を必要としている。

 端的に言えば持ち去られては困るのだ」


「そう言われても、僕にもこの杖を欲する理由があるんだ。

 “災厄の杖”を欲する理由がね」


「……賢者の杖だぞ、その杖は」


「知らないんだね……それもそうか。

 この杖はね、人族にとっては災厄を招く杖として恐れられているんだ」


ドラゴンは、杖に起こった様々な悲劇を語って聞かせた。

知識の簒奪、富の奪い合い……そのどれもが欲に溺れた人族の哀れさを物語っていた。


「この杖を持っていると、いずれサトウ君もそんな目に遭ってしまうかもしれないよ?」


「些細なことだ」


くだらない。


「君が守るからかい?」


「そうとも言えるな」


物理的な問題はそれで片が付くだろう。


「じゃあ僕も排除対象だね」


ドラゴンが臨戦態勢を取ろうとするので、我輩は苦笑した。


「何を早まっている?」


「僕は杖が欲しい。

 君は杖を渡さない。

 ならこのまま話しても平行線だと思うけど?」


このドラゴン、少しは話が分かると思ったのだが見込み違いだったのだろうか?

まぁ、今までスズキと神以外の者は大半がこのような感じだったのだから驚くこともないか。


とはいえ、後で他の竜に難癖を付けられても面倒だな。

スズキも起こしたくないし……。


「はぁ……では形式を変えよう。

 これから我輩が質問をする、それでも平行線なら実力で持って行け」


「……実力で、ね。

 じゃあ、質問をどうぞ」


ドラゴンは警戒を解かずに了承した。

ドラゴンは知性の高い魔法の第一人者ではなかったのか?

何故こうも血生臭くなってしまうのか。

我輩は呆れてため息をもらした。


「では、1つ目だ。

 貴様はその杖を使って金儲けがしたいのか?」


「違う」


即答。

こやつがあの屋敷から何も持ち出さなかったことから考えて、答えの内容は想像通りだ。


「2つ目、貴様が欲しているのはその杖を使わなければ決してわからないものか?」


「……恐らく」


「曖昧だな」


「正確にはこの杖でもわからないかもしれない……かな」


杖の仕組みは知っている。

要するにこのドラゴンの知りたいことは稀有な知識であり、もしかしたら杖にその情報があるかもしれない。

一縷の望み……こやつはそれを杖にかけている。


「最後だ。

 知りたい知識を検索してほしいとスズキに頼めばいいのに、なぜそうしない?」


アルケニーはそうしている。

まぁあやつは文字の読み書きに不安があるからこそ、そうしている。

今目の前にいるドラゴンは読み書きが出来るのだ。


正直な話、我輩はモヤモヤするが、この地で一緒に調べれば良いではないか。


「……それ、は……」


意図は伝わったらしく、ドラゴンは目に見えて動揺していた。


「貴様も一度は考えたのだろう?」


「考えたさ……でもやめた方が良いと結論付けた」


「何故だ?

 検索して情報を出すだけなのだから誰がやっても変わらんだろう?」


「変わる……たぶん彼が調べてはいけないんだ。

 だって……僕が知りたい知識は…………」


ドラゴンが胸を抑えて我輩から視線を外し、苦しそうに続けた。


「この世界を滅亡させた人についての知識だから」


え?

この世界って滅亡していたのか?

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