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第64話 異世界人の思考

ジルベルトがオッサンを呼ぶ際に「さん」付けだとだんだん違和感が出てきたので、前回までの部分を「くん」付けにプチ修正しました。

ジルベルトは疑いの視線を向けつつも塀や門を視るとため息をついて反論する。


「この建物に認識阻害の類の魔法を使っている形跡はないよ、せいぜい薄い防御結界程度が施されている程度だ。

 サトウくん、異世界人については脅してしまったし、警戒心が強くなるのは分かるけど……」


「薄い結界っていうのはこの杖で出せるウィンドウ程度の薄さですか?」


「えッ……いや、そうだけど……」


なら、と俺は塀の崩れて穴の開いている部分を狙って石を投げた。


コンッ!


ヴェルさんの耳が動くのをが目に入る。

眉間に皺がよってるところを見るとアタリ……かな?


ジルベルトはだから……と億劫に答える。


「石が防御結界に当たってはじかれただけだろ?

 何を当たり前な……」


「いや、結界に当たった音じゃないな……」


ヴェルさんが地面に手をついて鉄の粒を精製した。


「えっ……というかなにその魔法」


「何って、変性魔法の精製だが?」


「精製って……鉄鉱石もないのに……なんで」


「地面にも鉄が含まれているとスズキに教えてもらったからな。

 指弾にするくらいならこれで事足りる」


「は?

 は……?」


混乱するジルベルトを尻目にヴェルさんは俺と同じく大きな穴の空いている部分に対して鉄の指弾を打ち込んだ。

指弾は前に実験した際に教えたものだが、ヴェルさんがやるとライフル程度の威力が出る。


弾は防御壁を突破したのだろう、見事にあるはずの無い塀の壁にめり込んでいた。


「硬いな……貫通させられたと思ったのに……」


「いや、十分だよ」


ちょっと悔しそうなヴェルさんに笑いかけた。

ジルベルトは中空にいきなり現れた割れたガラスのような空間と塀、指弾による穴を凝視したまま動かなくなった。


「結界を貫通させるとガラスが割れたように見えるんだね」


「そうだな、不思議なものだ。

 むっ、柔軟性を持たせた結界なら防御力が上がるのではないか?」


「持たせ方次第じゃないかな?

 あまりやわらかくしすぎると衝撃が結界内部にそのまま届くし」


「見極めが大事なのだな」


「君達なんで結界談義に花咲かせていられるのッ?!

 認識妨害でもない、薄い結界だけだったはずなのに、なんであんな光景……」


「きっと、結界にあらかじめ廃屋化した建物を投影していたんだと思いますよ」


賢者の杖のウィンドウを見ていて気づいたものだ。

賢者の杖のウィンドウは高性能で、不透明度がいじれるのだがマックスで表示すると後ろが透けないのだ。


理屈は分からないが便利なので使っていたが、これを再現できる異世界人が居るとは思わなかった。

だってこの杖、忘れそうになるけど一応神様の作った神器だよ?


「はぁ……?

 なんでそんな……どうやって……」


「原理はさっぱりですね。

 動機もどうですかね、金目のものは無いよとアピールしたかったのかも知れませんが、そもそも日本家屋にしちゃってますし、当時のこの世界の民家を廃墟風にして写せば目立たないだろうに……よくわかりませんね」


「当事者のみが知るって事かい?

 はぁ……本当に何考えてるんだ、異世界人は……」


ぐったりとジルベルトがしゃがみこむ。


「で、防御結界を破っちゃったけど、反撃して来ないところを見るとやっぱり人は居ないかな?」


「カラン、という音は聞こえたな。

 だが足音は聞こえない。

 スズキ、どう見る?」


「内部から音が聞こえたなら、消音の魔法は掛かってないか、結界を壊したときに消えたんじゃないかな?

 とはいえ、警戒はするべきだね」


「塀を飛び越えることも出来るが……」


「やめたほうが良いと思う。

 思いっきり泥棒みたいな行動だから、対空射撃されるかも」


まさかタレットがあるとは思わないけど、あっても不思議じゃないと感じてしまう。

俺はつばを飲み込むと、ヴェルさんに提案した。


「正面から行こう」


「……時たま、スズキは思い切った行動に出るな」


「お客さんとして行くんだ。

 お客さんは正門からくるだろう?」


「僕も賛成ですね……」


「生き返ったんですね」


「ふむ……ドラゴン、理由は?」


「正面からのほうが迎撃が楽です」


脳筋な理由だった。

俺の視線に気づいたんだろう、ジルベルトは咳払いをする。


「それだけじゃないよ?

 サトウくんの言うとおり、客まで迎撃するとは思えない。

 それにもし正門にも何かを施しているなら、どうやって外に出るだい?

 って話だよ」


なるほど、確かに出入り口があるのは自明の理か。


「では正面から行こう」


ヴェルさんも頷き、俺たちは正門をノックした。


「ごめんくださーい」


『合言葉をどうぞ』


どこからとも無く聞こえる声にびびる俺。


「ゴーレム系の魔法生物かな……しかし合言葉とは」


な、なるほど……そういうのもあるのか。

俺は深く息を吐いて落ち着くと、咳払いをしてド定番を言ってみた。


「開けゴマ」


門があいた。


『ようこそお客様。

 中へお進みください』


「ゴマ?」


「なんでゴマ?」


現地人2人が混乱しているが説明は後回しにさせてもらおう。

しかし、これを作った異世界人、まさかのド定番の合言葉を使っていたとは……。

ところどころそれで良いのかと思ってしまう部分があるのだが、これはわざとなのか偶然なのか。

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