第60話 来訪者
巨大スクリーンに大音量。
昨晩の1人カラオケ大会は紛うことなく楽しい宴だったのだが、現在私、佐藤須々岐はその事について大変後悔していた。
いくら人気のないこの地域でもあれだけビカビカ光らせて現地人にとっては良くわからない音を出していれば誰かの目には留まってしまうものだ。
しいて反論したい点を挙げるならば、俺を見つけた種族がドラゴンだった事かな?
普通の人間とかこの世界いらっしゃらないんですかね?
はい、というわけで私の目の前には現在、ドラゴンがいらっしゃいます。
ヴェルさんは朝の見回り中です。
コダマ達は寝ています。
俺ピンチ。
一度深呼吸をしてもう一度ドラゴンを見てみよう。
色は赤く瞳は金色。
高さはヴェルさんよりちょっと大きいくらいだけど、尻尾を入れた全長は断然ドラゴンの方が大きそうだ。
身体つきは西洋竜だろうか。
印象がごんぶとなのは、恐らく全体的にでかくて太いからだろう。
あとはその外見か。
鱗っていうか鎧だね、全身鎧。
陽光に照らされてる様はまさにオリハルコンって感じ。
はい、オリハルコンなんて見たことないので単なる憶測です。
「お、おはようございます」
俺はとりあえず挨拶した。
挨拶、ジッサイダイジ。
「おはようございます。
いやぁ驚かしてしまったようで、すまないねぇ」
およ?
ドラゴンが手を振っている。
「見たところ君はドラゴンを初めて見るのかな?」
「は、はい」
「なるほどー。
ここはそうとう辺境だしそれも仕方ないねえ。
おっと少々後ろを向いていてくれるかな?」
「は、はぁ」
「なんか素直に向いてくれたけどもうちょっと警戒しても良いと思うんだけどなぁ。
人化の魔法を使うだけだから良いけどねぇ」
そう言うと見慣れた光が漏れて次いで衣擦れの音がする。
「もういいよ」
俺が言われて振り向くと赤髪のジャストイケメン男子がそこにいた。
二十台中頃の脂の乗った正統派なイケメンである。
彼は貴族のようなジュストコートに身を包み、柔らかな笑みを浮かべていた。
その後ろに巨大な木箱があるが、気にしないでおこう。
「改めまして、僕はジルベスト。
歴史学者をしているものさ」
「あ、俺は佐藤須々岐です。
ここでヴェルさんと一緒に住んでます」
「ヴェルさん……?」
ジルベルトはあごに手を当てて、ちょっと考えこんだものの、すぐに向き直った。
「まぁ、いいか。
その見た目、不思議な名前の響き……推察するに、君は異世界人で間違いないかな?」
涼しげな目で俺を見つめるイケメンの顔には確たる自信があるようだった。




