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第56話 羊毛を使うための下準備

結局、回復魔法をかけてもらったあとは毛刈りを続けず、俺たちは棲家へと戻った。

まぁ俺の心がへし折れたというのもあるが、それ以上に2匹分で現状十分な量の羊毛を手に出来たことが大きい。


へし折れた心は寝れば問題なく回復するのでまた明日挑戦しにいこう。

……今度は蹴られないと良いなぁ。


羊毛はヴェルさんの風魔法で運んでもらった。

もちろん俺だって運ぼうとしたのだが彼女が、


「匂いが移るからまかせろ」


と、軽々と風魔法で持ち上げてしまったのだ。

ひっじょーに申し訳なると同時にくよくよ悩みそうになる自分がいる。


櫛は昨晩に何とか使えるようにはなったから今晩から毎日ブラッシングしてあげよう。

……これもただ俺がしたいだけのような気がするが、あまり気にしないようにしよう、うん。


持って帰ってきた羊毛を家の近くに置くと、ヴェルさんは早速地面に身体をこすり付けはじめた。

やる前に服が汚れると指摘したら脱いでくれた。

慣れって怖いね、ヴェルさんの裸見てもなんとも思わなくなってきたよ、ハハッ。


……はい、嘘です。

めっちゃがんぷ……意識してます。


なので作業に没頭するため、さっさと羊毛の下処理を始めよう。

毛には草、泥、お尻からひねり出されたもの等の汚れがたくさんついているので、まずはそれを丁寧に取る。

あまりやったことがなかったが、どうやら毛を広げるように引っ張ると汚れが取れていくようだ。


臭い落としが終わったヴェルさんも手伝いに来てくれたが終始眉間に皺を寄せていた。


「魔法で一気にやってしまいたいのだ」


どうやらその方法を考えていたらしい。

やれなくもないのだろうが、方法が思いつかないらしく黙々とゴミを手で取っていく。


「ふぅ……なんとか終わったのだ」


手の臭いをかいで眉をしかめるヴェルさん。

もう一度地面にこすり付けて消臭するのかと思いきや、水で手を洗っただけだった。

アレをやる基準とかあるのかな?


「明日からは2匹ずつ刈ろう。

 さすがにこの10倍以上の量を1日でやりきる自信はないね」


「賛成だ、魔法の上手い使い方も思いつかなかったしな」


2匹分でも結構な量があってなかなかに骨が折れそうだ。

ゴミ取りが終わると今度は専用のプールにお湯を張って水性の汚れ落としだ。


「お湯の温度は50~60℃が適温のようだね」


「その50から60℃というのはどれくらいだ?」


「温度計がないから説明がむずかしいな……?

 ……あっ、そうか」


俺はヴェルさんに頼んでプール内の水を沸騰させてもらった。


「これが60度というやつか?」


「違う違う。

 沸騰した水の温度は約100℃なんだ。

 これに同量の冷水を加えればたぶん50℃より少し高くなるはず」


ヴェルさんが首をかしげたので、水と温度の関係を少し教えた。

何故かコダマ達も集まってみんなして体育座りで聞いている。

……そ、そこまで大した説明はしていないんだけど。


「つまり水は水蒸気にも氷にもなり、そのときの温度は決まってくると?

 その2つを混ぜることでちょうど2つの温度を足して2で割った温度の水が出来るわけか……」


「環境やそのほかの要因で変わってくるけど大体そんな感じ」


「……勉強になる。

 ちなみにいつも飲んでいる水はどのくらいの温度なのだ?」


「あの家に備え付けの魔法具はちゃんと冷水がでるから5~12℃かな」


温度の基準はウォーターサーバーだけど、まぁそこまでずれてはいないだろうと思う。


「ということは、出来た水は……え~と……」


「105℃の半分から112℃の半分の間だから……」


「わ、私が答える!

 ご、52と半分℃から56℃!」


「うん、合ってる。

 半分は0.5って表現できるから52.5℃って言い換えれるよ」


「ふふん♪」


コダマ達が拍手をする中ヴェルさんが胸を張る。

俺も釣られて拍手するが、それにしてもヴェルさんいつの間に四則計算出来るようになったんだろう?

前から出来てたのかな?


とにかく50℃程度のプールを作ることに成功した我々はその中に羊毛を入れて風魔法で優しく沈めた。


「あっ、揉んだりゴシゴシしちゃダメだって。

 フェルト化しちゃうから」


「なにッ、フェルトだとッ!?」


「今回のはベッド用だから……明日の分からはフェルトにしちゃおうか」


「……そうだな。

 分かったのだ……針も無いしフェルトだけあってもどうしようもないしな……」


しょげるヴェルさんの可愛さに釣られてナデナデしたら何故か全身を使って思いっきりスリスリされた。


「マーキングなのだ」


当たり前だが俺も羊臭かったらしい。

理性に悪いので今度から一言貰うことにした。

マーキングが終わったあともなんだかんだ甘えてくるヴェルさんとお話しながら水性汚れが落ちるのを待つ。

まったりタイム……最高♪

最近になってアルさんが教えたため、ヴェルさんは単純な四則計算ならできるようになりました。

(一桁の掛け算と割り算が出来る程度)。

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